終わりの始まりを君と
魔王様は言った。
話は解った、と。
ただそれだけを言って私を近くまで呼び、指輪の呪いを解いてくれた。指輪は私の指からするりと抜けて、魔王様の口の中へ…………
って、口!?
なんで食べちゃうんですか!?
そう聞くと、ライトの契約を解除するためだ、との事。
ライトが無理矢理呪いの指輪と契約した事で、反発した力が指輪とライトの繋がりを強くしてしまったため、ライトの力では指輪との繋がりが切れなくなっていた。
だから、魔王様の体の中で呪いの指輪を消滅させる。そうする事によりライトと指輪との繋がり、つまり契約を断ち切るのだそうだ。
「数分で終わる」
そう言った魔王様は、そのまま背を向け魔王城(ちょっと半壊)へと戻ろうとした。
その魔王様を呼び止めたのは亮乃。先程莉伽が聞いた話を魔王様にもするのだろう。
そんな亮乃を見ていた莉伽に、ライトとナイトが話しかけてくる。
「リカリカ、元の世界へ帰るんでしょ?最後のお別れだねー」
「ライト達は帰らないの?ラグーン?だったっけ」
「うん、帰りたいなぁーっとは思ってるよー。ね、ナイト」
「まだ人間を許したわけじゃないけどね。ライトの話を聞いて、少なからずも誤解があったのは解ったから。まぁ、戻るのはミトスの亡骸がちゃんと見つかれば、の話だけどね。私達がここにいたのはここに残されたミトスと離れないため、せめて傍にいられたらって思って魔王に頼んだ事だったから。
だからあんたにお願いがあるんだけど」
ナイトは真剣な顔をして、莉伽を見る。
「ディに聞いてくれない?ミトスが埋葬された場所」
ディって、ディ様の事だよね?いきなりの呼び捨てって、凄いな。と思いつつ莉伽は困った顔をする。何故ならディ様がどこにいるのか、どうやったらコンタクトが取れるのか解らないからだ。
「実はディ様に会うのっていつも突然で。自分から会った事ってないから、会えるかどうか……」
「会えないのー?」
「仮にも神様だしね。いつも向こうから、私に接触してきたし……」
あ、でもブラックがいたらディ様が気付いてコンタクト取ってくれるかも。そう思い、いなくなっていたブラックを呼んでみる。
「………………」
「出てこないねー」
のんびりとしたライトの声を聞きながら、またかと莉伽はため息をついた。
「ところでさ、何であの黒いちっこい奴を呼んだの?」
不思議そうにそう聞くナイトに、莉伽はぎくりと肩を揺らす。そういえば、ブラックとディ様の関係は誰にも言っていなかった。
どう言い訳をしたものか、と悩んでいた莉伽を尻目にライトは淡々とこう言いはなった。
「ブラックはディ様の分身みたいなものなんだよー。だから、ブラックとディ様は繋がってるって事だから、多分ブラックに頼めばディ様と接触できるんだと思う。まぁブラックは知らなかったみたいだけどねー」
「ちょっ……ライト、何で知ってるの!?」
ぎょっと目を見開き、莉伽はライトに向かって叫ぶ。ライトは、僕を舐めないで欲しいなぁとしたり顔だ。
「というか、他の皆もなんとなくかもしれないけど気付いてると思うよー。口には出さないだけで」
他の皆というのは亮乃や那子の事らしい。
もうそこにまでバレているのなら、ブラックにもバレていそうな気がする。
ブラックには短い間だったけど、色々助けてもらった。振り回されて腹の立つ事もあったけど、いつも真っ直ぐで、迷っている私に力をくれた。
だから。
ブラック、
私の中での君は、ただ単にディ様の『造った物』なんかじゃなかったんだ。




