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栽培兄妹と+α  作者: 葉月
タイトル
32/36

夜が終われば朝が来る

何故今更ライトの姿が見えるようになったのか。

その原因は解らなかった。ただディフェペースが何かしたんだろうなと思い、莉伽はそれ以上その事については考えない事にした。


「リカリカ、ホントに大丈夫?」


心配そうに莉伽を見る白色毛の虎の、銀色の瞳がキラリと光る。


綺麗だ。

夜の闇の中、白と銀色が凄く映えて見えた。




……そうなのです。

今は夜なのです。


一体どのぐらい眠っていたのか。というか、こんな所で寝てしまうだなんて……一生の不覚。


それはいいとして。



「私なんかより、ブラック?大丈夫?」


さっき起きてから、まだ一度も喋らず黙りこくっている黒猫を、莉伽は心配そうに見る。

黒猫はディフェペースの存在を知らない。自分が何のためにここにいるのか、自分が何者なのか知らないと、ディフェペースは言っていた。


そんなブラックと、これから莉伽はどう接すればいいのか。ディフェぺースの監視はまだ続いているのだろうか。

ブラックとの距離感が掴めない今、ブラックに黙ったままでいられると、とても対処に困るのだが……。


「ブラックー、まだ照れてるのー?」


ライトがそう言ってブラックに手を伸ばす。


「…………」


ブラックは無言のまま、ライトの手から逃げる。のだが、ライトは面白がるようにブラックに突っかかっていく。




ライトが見えるようになって解った事………。



黒猫と白虎。

じゃれあってる姿。

可愛いっ!!!




まぁ、それはいいとして。




「二人とも、私とりあえず亮乃の所に戻るよ。あとブラック、魔王様の所に亮乃達も連れて行って欲しいんだけど。大丈夫?」


莉伽がそう言うと、ブラックは大丈夫だ、と喋ってくれた。


莉伽はブラックが喋ってくれた事に、ちょっとだけホッとした。


「が、条件がある」

「は?」


条件?

条件って何?


莉伽がぽかーんとしていると、ブラックは久々の口癖を莉伽に向けて放った。






「嫁になれ」







ブラックは、何だかやっぱりブラックでした。










宿屋に戻り、亮乃達にブラックを紹介。ブラックは嫌そうな顔をしていたが紹介しない事には始まらないのだから仕方がない。ライトは指輪の中で休憩中。莉伽が起きるまで外で待っててくれていたので少し疲れたらしい。悪い事をした。


そしてその事を聞いて解った事。私の体はこっちに残されたままだったということ。ディ様のあの空間には、意識だけが行っていたということか。



亮乃や那子はブラックを触りたそうにしていたが、ブラックは逃げるようにして莉伽の体をはい回っていたので、諦めたようだ。当たり前だが、グローカスはブラックに興味なし。なのだが、どういう存在なのかは気になるようだ。


莉伽は亮乃達にディフェペースの事を話した。ディフェペースから聞いた話も。だが、ブラックがディフェペースが造ったものだという事は伏せておいた。ブラックに聞かせていいものかどうか解らなかったから。



「それってさ、結局そのディ様は何がしたいんだか、いまいち解らないよな」

「神様……いいなぁ莉伽さん。私も会いたかったですよー」

「………神。この世界を造った神様、か。信じられんな」

「おい、よ、むみぇ……むぐぅ……」


ブラックの口を塞ぐ莉伽。皆の前でその事は言うな、この馬鹿。





それぞれのディフェぺースに対する感想の後、魔王様の元へ行くのは明日の朝、という結論が出されその日は宿屋に泊まる事となった。

部屋割りは莉伽と那子、

そして亮乃とグローカスで別れて寝る事となった。



夜になっちゃったからね。魔王様も寝てるかもだし。


それに………。







今の話を指輪の中にいたライトは聞いていたのだろうか?ミトスの死の真実を。大昔の勇者の、あの時の本当の真相を。







「ブラック」


皆が寝静まった後、莉伽は黒猫の名前を呼ぶ。ブラックだけは、自分の空間に戻ると言っていなくなってしまったのだ。


その後、莉伽は布団の中で考えていた。魔王と勇者の話の真実。ライトとナイト、二人の精霊の事。そしてブラックの事。考えていたら眠れなくなり、外の空気を吸いに宿屋を出て、宿屋の裏にある庭に来ていた。そこに座って花を見ていたら、知らず黒猫の名前を呼んでいたのだ。

そのブラックが莉伽の呼びかけに答えてくれた。


「何だ?」


どこからともなく現れた黒猫に莉伽は少しの驚きと少しの迷いのすえ、話でもしないか、と提案した。


「何の話をするんだ?将来の事か?」


うーん……。

その話もしないといけないんだけどね。

今それはひとまず置いといてー。


「ブラックはどう思う?さっきの話」


ブラックは莉伽の隣にちょこんと座り、特に何も思わないが?と言った。


何もって……。

すぱっと言うなぁ。


「俺には関係ないしな」


うーん。

関係…ないけど、あるような気もするような。


「お前が悩むような事でもない。魔王にも言われてただろ?口出しするな、と」

「そうだけど、さ」

「なるようになる。そんな事よりもお前は考えないといけない事があるだろ」


なんかあったっけ?


ブラックはじーっと莉伽の顔を見る。


「俺との結婚」

「……………」


なんだかなぁ。

この不毛なやりとりも、ディ様は見てるのかなぁ。見てるならどうにかして欲しいんだけどな。


そんな事を考えていると、目の前に白い虎が現れる。ライトだ。


「あんまりしつこいと嫌われるよー」

「ライト」


ライトはこちらを見て、にっこりと笑う。


「リカリカ、明日ナイトと魔王様には僕から話すよ」


だから安心して?


そう言って笑ったライトは、莉伽には何故か悲しく見えた。


この夜が終わり、朝になったら、




今までの事全てに終わりが来るのだろうか。




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