図書メンジャー
「おっはよーございますっ♪ 莉伽さん」
後ろから声をかけられる。
振り向くとそこには幼馴染の仲良し兄妹、亮乃と那子ちゃんがいた。一緒に登校とは、相変わらず仲良しだ。
「那ーちゃん、おはよ。亮乃も」
「おう」
朝から元気な那子と違い、兄亮乃の方は眠たそうだ。夜更かしでもしていたのだろうか。
「今からちょこっと昨日埋めたプイプイナンゴリッターの様子、見に行くんですけど一緒に行きません?」
莉伽の横に並び、那子が笑顔で尋ねてくる。
朝からかわいいです、那ーちゃん。
「・・・水もあげてこないとだしな」
「芽が出てるかもだしなー♪」
昨日の今日で芽は出てないと思うけど・・・
「どうせ通り道だしね。行こうか」
「あそこにして良かったですよね!大正解でしたー」
誰かに見つかって怒られなきゃいいんだけどね。
そう思った莉伽だったが口には出さなかった。
「思ったんだが、肥料とかも撒いたほうがいいんじゃないか?その方がちゃんと育ちそうだしさ」
那子の隣を歩いていた亮乃が呟く。
「大丈夫なんじゃない?あの辺木とかも生えてるし野花だってあったし」
「俺、何かを栽培したことって殆どないからわかんないんだよなぁ」
「じゃあ、私が学校の図書館で調べといてあげるよ。今日ちょうど当番だし」
那子が自分を指差しながら言った。
「お前図書委員だったっけ?」
「うん。何を隠そうこの私は・・・本の借りパク許さない、大声禁止の絶対領域、読んだら元に戻してね!ついでに悪も倒してやるぜっ!!」
「・・・・・・」
「図書メンジャーの狐担当、キメンジャーとは私のことだぁ!図書館の平和は私達が守る!!」
那子はビシっとキメポーズをきめた。
うん・・・。かっこよくキメ台詞キメポーズしてもらったとこ悪いのですが・・・。
「恥ずかしいからやめろ、こんな道端で」
亮乃が那子に注意した。
「ちなみに、図書メンジャーには他にも犬担当とか猫担当とか沢山のメンバーがいます」
そんなにいるのか図書メンジャー。
「亮乃・・・中等部ってさぁ、戦隊物が流行ってんのかな?」
「・・・俺が知るわけないだろ。中等部なんてあんまよりつかねーし」
「だよね」
「鯨担当とかもいてね、クジランジャーって言うんだけど、この隊員が凄くて凄くて。彼が配属されてからはパソコン管理が格っ段に良くなったんだから」
那子はまだ謎の戦隊、図書メンジャーについて熱く語っている。
「なんで皆生き物担当なんだろ?」
亮乃に聞いてみる。猫とか犬とか狐とか、何の基準なんだろうか・・・
「中学生が考えることはわかんねー。なんかの法則性とかにでもなってんじゃないか?深く考えても絶対しょうもない事だと思うぞ、俺は」
「だよね。気にしないでおくよ。・・・あの辺りだよね、プイプイ植えたの」
「プイプイって。ちゃんとプイプイナンゴリッターって言えよ」
「長いし」
二人が話を聞いていないことに気付いたのか那子が、私の話聞いてましたか!亮兄、莉伽さん。と怒った様な顔で叫んでいる。
「聞いてた聞いてた。やっぱりまだ芽は出てないなぁ」
「だから、昨日の今日で芽はでないって」
「もしかしたらって事もあるだろ?希望を持てよ」
・・・ないって。
「那子、その辺にジョウロ隠してあるから水汲んで来い」
「・・・むー・・・分かったよー。亮兄には家でたっぷり図書メンジャーの話、してあげるね♪」
満面の笑顔でそう言った那子はジョウロを持ち、水汲んできまーす、と駆けていった。
「・・・・・・・」
「頑張れ、亮乃」
それなりに頭いい癖になんであんななんだー、と亮乃はため息をついた。
「あの調子で頭悪かったらただの馬鹿だよ。良かったじゃない?妹さんがそれなりに成績優秀で」
とりあえず適当に慰めてみた。
異世界到達まで、後8時間・・・
プイプイを埋めた次の日の朝、ですね。
那子ちゃんは図書メンジャーの隊員なのですよ。
まだまだ異世界へは到達しません・・・。
前フリ長すぎだなぁ・・・




