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栽培兄妹と+α  作者: 葉月
タイトル
13/36

飛ばされた先

『中立の立場でいろ』

『勇者にも魔王にも加担するな』

『お前がここにいることは悟られるな』

『大精霊を解放しろ』



『亮乃を死なせたくはないだろう?』



とりあえず、簡単に今までに解っていることをまとめてみよう。



ここは異世界だ。


この世界には勇者と魔王がいる。っぽい。


勇者は亮乃。


この世界へ、私達を連れてきたのは、白いお城の当主。(王様とは何か違うのだろうか?)


莉伽は力もなく、使えないので、そのまま元の世界へと帰してもらえる、はずだった。


制服に着替え、帰る準備万端。だが、いつの間にやら暗い空間にいて、そこでチリルに乗り移った、正体不明の『誰かさん』に会ってしまう。


その『誰かさん』に亮乃の事で脅される。


『誰かさん』は何だか意味不明な事だけ言って、あとはよろしくみたいな感じで、莉伽に丸投げをする。





「そして今、どこかの部屋のベッドの上にいる」


現状の把握は大体こんなものか。

まったく、ひとっつもちゃんとした把握が出来ていないような気がするのだが、こんなんで大丈夫なんだろうか……。


すぐ隣には、ベッドの上で静かな寝息をたてている金髪の美少女、チリルが寝ている。

今はもう本物のチリル、なのだろうか。それともまだ体を乗っ取っている『誰かさん』なのだろうか。

眠っている少女を見ても、それは判別できなかった。


「それにしても、ここはどこだろ?」


『誰かさん』はどこかへ飛ばすと言っていたが、どこへ飛ばすのかぐらい言っておいて欲しかったものだ。

今さら言っても遅いのだが。


部屋の中を見渡す。

お城で莉伽がいた部屋、ではない。あの部屋よりは広く、どちらかと言うと誰かが住んでいる、といった感じがする。誰かの家の寝室とか、宿の部屋の一室とかそういった類いの部屋だろう。


部屋の隅には大きな荷物が置いてあるし、机の上には紙の束やペンらしき、書くものも置いてあった。近付いてその紙を見てみるが、何が書かれているのかは解らなかった。

言葉は日本語で通じたのに、文字はまったく読めない。親切なんだか不親切なんだか、どっちだかよくわからない世界に、莉伽は首を傾げる。


「変な世界」


確かに話の展開上、都合の悪い所は主人公が有利なように出来ているのがファンタジーだ。言葉が通じるのも納得できる。

だが、出来れば文字も読めるような設定にして欲しかったな。

もしかしたら勇者である亮乃は文字も読めるのだろうか。そうだったら不公平すぎるな。



チリルが寝返りをうつ。だが起きる気配はまだない。仕方なく、莉伽はとりあえずここがどこなのか調べるために、部屋から出てみようと思い、部屋の外へと繋がっているのだろうドアに近付き、ノブに手をかける。



だが、莉伽はそこで、もうちょっと注意を払うべきだった。


何も考えずに、ただ開けようとした莉伽に対し、ドアの外側からもドアを開こうとした者がいたらしく、ドアは莉伽が開けるよりも前に開いてしまった。



内側に。



ガンっという音とともに、内開きだったドアが開いた。


「……っ…!」


開いたドアに、おでこと鼻をぶつけた莉伽は、一瞬何が起きたのか解らず、戸惑いながらフラフラとしていたが、ドアが外側から開いたのだという事をやっと理解し、おでこと鼻を押さえながらそちらに目を向ける。

そこには、こちらをじっと見ている一人のでかい男が立っていた。


身長はきっと2メートル近くはあるだろう。袋を抱え込み、莉伽を見下ろすその顔は30代ぐらいだろうか?もしかしたらそっち系の人ですかというほどの強面の男だった。


「……すみません、でした」


とりあえず謝ってみる。そっち系の人なら謝っても、きっと許してくれないのだろうが。


「こっちこそ悪い。起きているとは思わなくてな」


良かった。

とりあえず、普通のでかい怖い顔、の人らしい。


「起きていたなら話しは早いな。聞きたいんだが、どうしてここにいた?」


男は手に持っていた袋をテーブルに置き、莉伽と向き合う。向き合うというか見下ろす、だが。


「えと、どうして、で、すか、ね……?」


正直に『誰かさん』に飛ばされましたー、なんて言ってもこの男は信じてくれるのだろうか?

というより、見下ろされるのがここまで恐いものだとは知らなかった。威圧感がはんぱない。


じりじりと後ずさる莉伽を男はじっと見る。そして、おもむろに椅子に座り、コンコンと机を叩き、もう片方の椅子を無言で指差す。


座れと言うことなのだろうか?


莉伽は指された椅子に座り、向かい合った男を見る。

見下ろされる威圧感、は無くなったのだが、男のもつ強面の顔は変わらないのでやはり、恐い。


この空気は、あれだ。

警察の取り調べ、的な。

取り調べられた事ないけど。


「俺が部屋に戻ってきたら、床に君とそこのちびが倒れていた。とりあえずベッドに寝かせておいたが、君らは不法侵入したってことか?」


不法侵入、したわけではないのだが……。

これは、『した』ということになるのだろうか。


「えっと、気がついたらここにいたんです。あんまり、えー……覚えてなくて」


嘘ではない。

誤魔化したけど。


「覚えてない?どういうことだ?」


なおも突っ込んで聞いてくる男に、どう説明したものかそこから数秒悩みに悩むが、結局いい案が思い付かず、黙り込んでしまった莉伽であった。






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