もう一人
違う。 そうじゃない。
何故分からない。
騒ぐ。 喚く。 もう一人の自分が。
落ち着け。 抑えろ。 今は我慢だ。
それを抑える、今日も、僕は、必死に。
檻に入れ、落ち着けとなだめる。
いつからだろうこんな声が聴こえ出したのは、
周りの人とは あ、違うなって、感じ始めたのは、
僕は今日も必死に仮面を被る。笑って 皆と同じふりをする。 それが正しいと僕は思うから。
でも もう一人の僕は違う。
否定しろ 嘘をつくな そんなものぶっ壊してしまえ
と、大声で騒ぎ立てる。
笑っている僕に対しても
気持ち悪い、と罵詈雑言。
僕は そんな僕をなだめ、まぁまぁ、と代わりに自分自身を差し出す。
もう一人の僕は受け取ったそれを その衝動に任せぐちゃぐちゃにする。
首を噛み切り 頭を潰す。
足を折って 腕を千切る。
それでいい それでいいんだ。
ふと、あるとき思った。
僕はいつまで僕を檻に入れていなきゃいけないのだろう。
あと何回 僕をぐちゃぐちゃに引き裂かなければいけないのだろう。
分からない 僕にはまだ分からない。
僕は今日も出かける 夜の公園へ。
誰もいない 一人の世界へ。
さぁ 出て来てよ 一緒に踊ろう。
僕は唯一、この世界でなら僕を檻から出すことが出来る。
イヤフォンを装着し、僕は一人の僕になる。
元々の僕がどちらだったのか そんなの今では分からない。
ただ言えるのは本当の僕は 今ここにいる僕だということ。
宵闇の中、僕は踊る。 誰もいない 歓声も罵倒もないこの場所で 今この時を 心の底から。
涙が宙を舞う。 ああ、この時間が永遠に続けばいいのに
虚しくも乾いた笑顔が 自然と 舞う涙と共に溢れた。




