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地球人 -宇宙が見た私たち-  作者: ひかりあんこ


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【第1章】満天の星々

私たちは、自分たちの文明を当たり前のものとして生きています。


宗教があり、国家があり、通貨があり、資源を巡る争いもある。

それらは長い歴史のなかで形づくられ、

いつしか疑うことの少ない前提になりました。


けれども、もし宇宙のどこかに、

まったく異なるかたちで成熟した知性が存在するとしたら。


戦争も貨幣も国家も持たず、

それでも豊かな社会を築いてきた種がいたとしたら。


そしてその視線が、静かに地球へ向けられていたとしたら。


本作『地球人』は、

そうした想像から始まる物語です。


描きたいのは侵略でも、英雄の活躍でもありません。

私たち自身の文明を、少し離れた場所から見つめてみることです。


文明とは何か。

進歩とは何か。

豊かさとは何か。


その問いを、物語というかたちで考えてみたいと思いました。


読み終えたとき、

「地球人」という言葉が、ほんの少し違って響くなら。

作者としてこれ以上の喜びはありません。


ひかりあんこ

地球誕生から46億年、今日の人類による文明が地球史上、唯一の文明なのだろうか。

 人類が哺乳類から派生して100万年、そのうちの90万年を身体的進化に費やし、10万年をかけたグレートジャーニーにより地球全域を覆う文明を築いた。直近の3千年では、都市を築き、農業革命と産業革命により、人口は70億人に達し、月や火星に居住することも現実味を帯びてきた。1万年後、我々人類はまだ地球を支配できているかもしれない。しかし、10万年後となるとどうだろう。

 100万年あれば一つの文明が宇宙進出を果たし、その活動範囲が、大航海時代以降『国』から『惑星規模』へと解き放たれたように、『惑星規模』から『恒星系』へと拡大するのに十分であることは、今の人類が証明している。恒星間航行を開発し、その活動範囲を『銀河規模』へと発展するのも時間の問題だろう。その時点での人類は、無尽蔵に使えるだけのエネルギーや動力を手に入れているだろう。惑星や恒星からの恩恵を必要としなくなった人類は、母なる地球に住み続けるのだろうか。

 人類程度の文明が発展できた機会は、恐竜が栄えた2億5千万年前から6600万年前までの、1億8千400万年の間に184回、哺乳類が栄えた5000万年前から現在までに50回、単純に230回分あった。

 その中には、実際に文明と呼べるものが存在していたのではないだろうか。地球環境や宇宙環境による影響で滅びた文明。発展途上で他種族との争いに敗れ滅びた文明。太陽系規模にまで発展しつつ、争いにより文明の再建が不可能となった文明。地球や太陽からの恵みを必要としなくなり、太陽系を離れた文明。

 他の銀河や恒星系も同じく、宇宙誕生から138億年の中で、無数の文明が興り、また、滅びていったのではないだろうか。空にひしめく星々の中に、いくつの文明が、そこにはあるのだろう。

 ・

 ・

 ・

 そんなことを考えながら、岡野康太はいつもの公園のベンチで夜空を見上げていた。

 20時に会社を出て、コンビニのイートインで夕食を済ませ、港区のアパート近くの公園で妄想にふけってから家に帰るのが日課の自称サイエンスオタク、独身、32歳。

 だが今日は違った。いつものルーティンを乱す男、同僚の田中央介の登場である。

「今日も空見てるの? こんな街なかで毎日飽きないね〜」

 この歳になって親友というのもおかしいかもしれないが、歳が近く、サイエンスオタクぶりも康太に引けを取らない田中とは気が合う。ここ3ヶ月は特に、帰りのルーティンを教えてしまったばかりに、火曜と木曜には田中が合流してくる。住まいが近いらしいが、お互いにどこに住んでいるかまでは、まだ知らない。

「田中君。知ってる? ジェームズ・ウェッブ望遠鏡。太陽と地球のラグランジュポイントに到着したって。ワクワクしない? ラグランジュポイントって、わかる?」

「2つの天体の引力のバランスが取れる場所のことでしょ? ジェームズ・ウェッブ望遠鏡の軌道は、太陽と地球のL2ポイントだよね。小惑星とかも捕まっちゃうらしいけど、望遠鏡、大丈夫かね(笑)」

「なんだよ、やっぱり知ってんのか。田中君はサイエンスオタクって感じじゃないけど、なんでそんなにいろんなこと知ってるの? 説明の甲斐がないんだよね」

 話が通じて嬉しい反面、準備していたウンチクよりも的確に説明できる央介の知識に嫉妬を隠さず、康太はニヤけて返す。

「一応理系だからね。建築士の免許を取れる位の知能はあるよ」

「ん? 何年前の話だよ。建築士の試験に宇宙開発なんて関係ないし。それよりさ、ウチの部長は理解があってありがたいよな。星を見に行きたいからって理由で、ふたり同時に有給取らせてくれるんだもんな」

「そうだね。八ヶ岳高原ロッジでペルセウス座流星群。山に星を見に行くのなんて初めてだよ」

 昨年4月、康太が勤める建設会社の設計部に中途で入社した田中央介は、2つ年上の康太と趣味が合うことで意気投合し、半年もせずに親友のような関係になった。

 今度の8月11日から13日までの2泊、長野県の八ヶ岳高原ロッジに流星群の観測に行く約束をしている。快晴の天気予報にワクワクを隠せない央介を見て、康太も久しぶりの天体観測に期待感を募らせている。

 都心では数えるほどの星しか見ることはできないが、光害の少ない高原からは、怖いほどに無数の星と天の川が見える。宇宙人がいないはずがないと確信を持てるほどの星空。康太は年に1・2回、星が綺麗な里山や田舎を訪れ、星空を眺めることを生きがいにしている。

「無限に広がる大宇宙……」とか、「宇宙、それは最後のフロンティア……」といった具合に、聞いたことのあるフレーズが説得力を持って頭の中で繰り返される。

 8月11日、レンタカー屋で待ち合わせた二人は、約3時間のドライブを楽しみながら、天体観測の予定を確認した。

 談合坂サービスエリアでは、名物のマイタケ天ぷらのほうとうを食べた。央介は「おいしい!」を繰り返し、タブレットに写真を撮ってなにやら事細かにメモをとっている。

「煮込みうどん、食べたことないの? ネットで探せば作り方も出てるでしょ」

「ほうとうって言って、塩が入っていないからうどんとは違うんだよ。寒い時期だとこのとろみと温かさがもっとありがたいんだろうなぁ」

 康太のソフトクリームとは真逆の季節感で、ほうとうを美味しそうに食べる央介に、「もう少し夏っぽいもの食べようよ。見てるだけで汗がすごいんだよ」と不満を漏らす。

 気温31度、真夏の炎天下でほうとうを食べる季節感は確かに違和感がある。央介の常識外れな行動は今までも何度も見たが、今回の季節感のズレは久しぶりに「かなり変わっている」印象を持った。今夜の星空観察のワクワクに紛れて、深く追求することもなかったが、康太の心の中で「ヤバイ奴」の称号を授かったことに、央介は気づいていない。

 八ヶ岳高原ロッジは、八ヶ岳連峰東山麓に広がる、標高1500m、200万坪の広大な敷地を有する格式あるホテルである。

 季節のイベントが毎週のように催され、特に星空観察会は、澄んだ空気と全天を覆う星の大パノラマに圧巻されるイベントとして人気がある。特に年に何度かの流星群観測会では、天景写真家の先生が星空撮影教室を開いてくれるなど好評を得ている。

 康太と央介は集合時間の19時30分を待ちきれず、30分も前からロビーで待機した。

 観測会は、子供から大人まで楽しめるイベントで、和やかな雰囲気で開催された。22時までの2時間半、星空の写真撮影に挑戦する人、星空を眺めて流れ星の数を数えている親子、満天の星空を楽しみながらその辺を散歩しているカップル。

 ふたりは、グループから20mほど離れて、ロッジで借りた折りたたみベンチに寝転がり、星空と流れ星を静かに眺めていた。

「田中君さぁ、宇宙人っていると思う?」

「いないわけないじゃん。なんで?」

「いるとは思うけど、会える気はしないよね。距離の問題とか、そもそも、肉体のサイズとか形、考え方とか、人間に近いこと自体奇跡だと思うし、肉体なんてない可能性もあるし」

「いたら会ってみたいと思う?」

 真剣な表情で聞いてくる央介の言葉に、一瞬ドキッとした康太は、その後に言葉が出てこなかった。意味ありげな真剣さは、いつもの明るい央介とは違う感じがした。

 央介が続ける。

「でも、もし宇宙人がいたとしたら、どんな姿をしていると思う?」

 康太はしばらく考えてから答えた。

「人間に近い姿をしてて欲しいかな。コミュニケーションを取りやすいし、やっぱりかっていう安心感もほしいじゃん」

 いつもひとりで考えていることなのに、結局自分なりの答えは持っていない。ただの願望でしかないが、未知とはそういう事だと納得している。

「手と足が2本ずつの2足歩行ね。もし違う見た目をしてたとしても、アバターロボットを作って潜入するだろうね。そんで、どんな思考や感情の特性を持つのか調べて、ファーストコンタクトをする価値があるのか調べるだろうね」

 央介は起き上がって手を頭の後ろにまわした。

「流石、岡野さんだね。賢いというか、現実的だね」

 ――そのとき、風が一度だけ向きを変え、音が消えた。

 澄んだ空のはずなのに、周囲のざわめきが遠ざかり、世界が薄い膜で隔てられたように感じた。

 静寂を切り裂くことなく、緑がかった一条の光が天頂で減速した。

 流星のはずが、落ちない。

「……止まった?」

 康太が息を呑むと、央介は笑って空を指でなぞった。

「大気上層をかすめてる。きれいだね」

 光は点に縮み、指先ほどの粒となって視界から消え

「今の、見えた?」――次の瞬間、康太の右手の甲が温かくなった。驚きすぎると人は動けなくなるらしい。淡く光る透明な膜のようなものが触れて、ふっと溶けた。

「うん。痛くない?」

驚いて叫びそうになる衝動を、他の参加者に気づかれないよう、左手で口を押さえて何とか耐えた。すぐに落ち着いた感情に体が覆われた。

「ない。……鼓動と同じリズムで、なにかが“同期”する感じ?」

「え、なんで驚かないの?」

央介は驚いている様子だが、明らかに芝居がかっている。康太の身体や五感について、心配というより、観察しているかのような質問を繰り返す。

「驚いてるよ?体は平気?足とか腕、動かしてみて」「視界に変化はない?」「ちょっと立ってみて」「耳は聞こえる?」

「平気だと思うよ。何なの?今の。田中君が何かしたの?」

「よくわかんない。何だろうね今の。岡野さんの体に何か入っちゃったね」と笑う

 夜空の星は輪郭を増して見えた。音の解像度が高まり、遠くの虫の羽音まで識別できる、、、気がする。

その出来事から観測会が終わるまでの1時間半の間、ふたりは何もなかったように流星群と満天の星々を眺めていた。

央介は星や星雲に詳しいらしく、人類が系外惑星の存在を認識している星はどこにあるとか、どの星雲にどんな元素が多いとか、生命がいるとしたらどの星系だとかを解説してくれていた。

 部屋に戻ると、央介は水を飲み、妙に静かな声で言った。

「岡野さん。もし地球外生命体がいて、人類を観察していたとして、どんな条件なら会ってみたい?」

「なに?急に」

央介は真面目な表情のまま康太を見つめている。

康太もなぜか落ち着いた感情に包まれている。

「怖いけど、襲ってこないとか?」

 央介はうなずき、ダイニングテーブルに紙を置いた。三重螺旋のスケッチ。

「明日、これについて話そう。今日は寝よう」

 彼はいつもの軽さで灯りを消した。暗闇の中で、康太はさきほどの“温度”が手の甲からゆっくり胸へ移るのを感じていた。


 未明、夢の底で声がした。言葉ではなく、意味の塊が波のように押し寄せる。

 ――翻訳子を起動。宿主の意思決定を最優先。外部アクセスは同意がある場合に限る。

 目を開けると、窓は群青、東の稜線が白んでいた。手の甲には何もない。ただ、三重螺旋の紙だけが机に残っている。


ここまで物語にお付き合いいただき、ありがとうございました。

誤字脱字をはじめ、文章表現など稚拙な部分が多いと思います。

いろいろとアドバイスを頂けるとありがたいです。


まだ書き始めたばかりですが、読み応えのある内容にしたいと思います。

人類がこれからどのような未来を歩むのか。

もしこの物語が、今という時代を少しだけ違った角度から眺めるきっかけになるとしたら嬉しく思います。


未来は遠い宇宙のどこかにあるのではなく、

きっと、私たちの選択の中にあります。


ひかりあんこ

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