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『  』と呼ばれた少年  作者: リフ


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第8話 二匹目のドジョウ

「うおぉ!」

「にゃん!」


 大岩から歩くことしばし、森を抜けると白い砂浜が広がっていた。

 エメラルドグリーンの海が目に眩しい。


「海外のリゾート地みたいな綺麗さだ」


 ゴミも落ちていない。

 他に人もいない。


「完全にプライベートビーチってわけだ」

「にゃ」


 革のサンダルを脱ぐと浅瀬に入っていく。

 もちろんジャージは手足とも捲ってからだ。

 ラジエルはその間に砂浜に降り立つと波打ち際まで移動している。


「どうだラジエル、楽しいか?」


 ラジエルの前に回り込んで様子を見る。


「にゃ、にゃ」


 ラジエルは波を被らない様に気を付けながら、寄せては返すそれに猫パンチをお見舞いしていた。


「楽しそうだな」


 砂浜も熱くないし、海水も冷たくない。

 適温と言えばいいのか、過ごしやすい温度だ。

 恐らく日差しが強すぎないからだろう。


「凄い綺麗だ」


 海の透明度が高い。

 濁りもなくて水底まではっきり見えた。


「魚は……いなさそうか」


 周囲を探してみるが見つからない。

 だがこの景色だけでも十分に素晴らしい。

 遠浅の海というやつか。

 沖の方まで水深が浅い部分が続いているようだ。


「にゃ」


 波との格闘を終えたラジエルがこちらを見ている。

 海の中までは入ってこないらしい。

 飛べばいいような気もするが……。


「出るか」


 今日の目標は達成した。

 出来れば食料も確保したかったけど、魚がいないのなら仕方ない。

 次は今朝消費したSPがどれだけ回復したかの確認だな。

 俺とラジエルは波打ち際から戻ると近くにある川へ向かった。

 海水を落とすためだ。

 乾いてべたつくのは嫌だからな。



「さ、確認するぞ」


 川でささっと手足を洗い、そのまま向こう側の砂浜へ渡った。

 ラジエルも手足を浸けていたから、海水はちゃんと落とせたはずだ。


「にゃん」


 今は一旦休憩中だ。

 ラジエルは胡坐をかいた俺の膝の中で丸まっている。

 濡れた手足はジャージの裾で拭いておいた。


「家に帰れたらな……」


 鑑定玉を鞄から取り出しながら呟く。

 タオルとかハンカチとか拭く物が欲しい。

 まだ異世界に来て二日目だが、失った物の大きさを改めて感じている。


「鑑定」



星渡(ほしわたり) (めぐる)

年齢:18歳

種族:異世界人

職業:旅人

SP:10/100

MP:0

固有スキル:【まどう図書館(貸出中)】

通常スキル:【気配遮断】

装備スキル:【鑑定】【一界一城の主】


 

「なるほど」


 あの丘を出発してから二時間くらいは経っているはずだ。


「思ったより回復してないな」


 一時間当たりのSP回復量は4から5くらいか。


「じゃあ全回復する時間は……」


 指で砂浜に計算式を書く。


「あー、そういうことか」


 二十四時間で大体100になるな。

 つまり一日で全回復するってことか、なるほど。


「使い所が難しいな」


 【気配遮断】で全てのSPを使い切ると、次にまた同じように使うには一日待たないといけない。


「発動だけなら二時間半でいけるんだけど……」


 【気配遮断】は発動に10MP、一歩歩くごとに1MP消費する。


「動かなければ消費は抑えられる」


 足音を消す効果くらいしか今の所は分かってない。

 動かずにいる事で助かる場面って何かあるかな。


「隠れる時に使えるか」


 まあ、あまり多用出来ない事が知れただけでもよかった。

 知らないで使っていたらどこかで詰んでいたかもしれない。


「後は……」


 食べ物を探す。

 昨日の果物が採れた場所に行けば食料の確保は問題ない。

 でも、出来れば別の場所も探しておきたい。


「二個目の金リンゴがあればな」


 求めすぎかもしれないけど、スキルを得られる食べ物は欲しい。


「行くか、ラジエル」

「……」


 寝てしまったラジエルを起こさないようにそっと抱える。

 俺はそのまま海岸沿いを歩き始めた。



 しばらく歩いていると、近くに乾燥気味の荒れ地を見つけた。

 視界を塞ぐように大岩が何個も転がっていて進みづらい。


「お? これは」


 岩を避けた先に細長いサボテンを見つけた。

 数本纏まって生えていて、赤い実がたくさん付いている。


「昔食べたドラゴンフルーツに似てるな」


 近づいてその実を観察する。

 あれは確か色がピンク寄りで、柔らかいトゲみたいな部分が緑だった気がする。

 目の前のやつは全てが赤い。

 色は違うが形はそっくりだ。


「鑑定」


 片手で鞄から鑑定玉を取り出し鑑定する。



《異界の赤龍果》クラス:Ⅰ 品質:優

・異界で採取出来る赤色の火龍果。甘くて美味しい。



「よし! 食える」


 鑑定玉を鞄になおすと、手の届く位置の物だけを選んで採っていく。


「そういえばリンゴとかも同じ感じだったな」


 あっちも木の背丈がそこまで高くなくて収穫自体は楽だった。


「にゃ」


 片腕で抱えていたラジエルが目を覚ましたようだ。

 俺が持っている赤龍果に手を伸ばしてくる。


「後で食べような」


 ラジエルの手に軽く実を触れさせた後、そのまま鞄の中に入れた。


「他の場所も探すか」


 ここでの採取は一旦止め、周りを見る。

 何か見つかるといいのだけど……。




《異界の白龍果》クラス:Ⅰ 品質:優

・異界で採取出来る白色の火龍果。甘くて美味しい。


《異界の黄龍果》クラス:Ⅰ 品質:優

・異界で採取出来る黄色の火龍果。甘くて美味しい。



 しばらく探していると色違いの火龍果を見つけた。

 少し離れた場所にそれぞれ生えていて、色の違う実が付いていた。


「味の違いも楽しみだな」


 鑑定でも美味しいと太鼓判を押されている。

 リンゴやブドウもよかったし期待しておこう。


「……あれ、ラジエルはどこ行った?」


 顔を上げるとラジエルがいない事に気付いた。

 さっきまでは近くのサボテンっぽい植物を嗅いだり実を触ったりしていたはず。


「ラジエルー!」


 声を張り上げて周辺を探し回る。

 もう食料は十分確保出来た。

 そろそろ帰らないといけない時間帯だ。


「にゃーん」


 声が聞こえる。

 ここから少し離れた岩の裏にいるようだ。


「そこか。一旦丘に戻る……ぞ」


 岩の裏をのぞき込むと、ラジエルは何かを足で転がして遊んでいた。

 形だけは火龍果に似ている。

 しかし色がおかしい。

 俺は無言で鑑定する。



《異界の銀龍果》クラス:Ⅱ 品質:優

・異界で偶に採取出来る銀色の火龍果。味は特にない。食べる事でクラスⅡ相当のスキルを得られる。



「……」


 すぐにラジエルの動きを抑えると、逃げ出さないよう抱え上げる。

 しばらくモゾモゾ動いていたが、諦めたのか身体を丸めて寝てしまった。


「……拾うか」


 俺は片手で銀色のそれを素早く拾うと鞄の中に入れる。

 周りを確認しても、同じような色の実は他になかった。


「単に運がいいのか、それとも狙って探し当ててるのか」


 今日もレアな実を見つけるなんてな。

 ラジエル様々ではあるが……自分でも見つけてみたい。


「ま、結果は同じか」


 そのまま来た道を戻り、無事に荒れ地を後にした。

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