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『  』と呼ばれた少年  作者: リフ


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第7話 スキル確認と聖なる岩

「昨日の果物はっと」


 大きな葉っぱの上に朝食用の果物が並んでいる。

 数自体は多くないのでここで一旦食べきっておこう。

 椰子の実は割れないので鞄の中になおしておく。


「ん?」


 果物の数は合っているが、昨日食べた金リンゴの芯がない。

 一応、まだ食べてない分とは離して置いてたはず……。


「ここにあった芯知らない?」


 葉っぱの上を指さしながらラジエルに尋ねる。


「にゃ」


 ラジエルは首を横に振ると白ブドウを一粒ずつ食べ始めた。


「んー、どういうことだ?」


 そもそもこの異界の果物は元の世界の物とは似ているようで違う。

 食べなかった部分は時間が経つと消えてしまうのかもしれない。


「まだ食べてない方が消えてなくてよかった」


 あと、果物の下に敷いている葉っぱも消えていない。

 使用中の物は消えないとかか?


「分からないな……経験しながら覚えていくしかないか」


 とりあえずゴミが出ないことはエコだなと自分を納得させる。


「にゃん」


 白ブドウを半分ほど食べたラジエルがこちらを見る。


「ああ、俺も食べるよ」


 考え事を止めると、朝食を食べる事にした。


 ラジエルと果物を分け合って食べた後、残った芯や軸は葉っぱの上に置いておく。


「さ、まずはスキルの確認からだ」 


 通常スキルの気配遮断を試す。

 これがどこまで有用かによって今後の動きも変わってくる。


「あとは異界の探索もか」


 新しい食べ物もそうだが、二匹目のドジョウならぬ二個目の金リンゴも出来れば狙っていきたい。

 選べる択も増えるしスキルは多い方がいい。


「鑑定」



【気配遮断】クラス:Ⅲ

・通常スキル。スキル発動を願う事で自身と触れた物の気配を消す。発動には10SPが必要。一歩歩くごとに1SPを追加で消費する。SPが無くなると強制的に解除される。任意で解除も可能。



 とりあえずやってみるか。


「気配遮断発動」


 んー、どうだろう。

 何となく発動してる感じはするが、見た目で分かるような違いはない。

 SPを確認してみると10減っている。

 発動はちゃんとしているようだ。


「にゃん」


 近くに居たラジエルを抱えてみる。

 触れた物の気配も消せるはずだけど、特にその姿が消えたりとかもない。

 次に歩いてみると、自分の足音がしないことに気が付いた。


「なるほど」


 物理的に姿が消えたりはしないが、足音はしなくなる。

 後は他人にどう見えるかだけど。


「人、いないしな」


 動物なら異界の外にいるかもしれないが、その前で試そうとは思わない。

 草食動物でも人を襲う事はあるからだ。それで死んだら試す意味がない。


「ふぅ」


 その後、俺は気配遮断が強制解除されるまで色々試した。

 今は休憩のために鞄を枕に寝転がっている。


「空はこんなに青いのにな」


 視線を横に向ければ、遠くにラジエルの姿が見えた。

 草原の中に咲く小さな花にちょっかいを掛けているようだ。

 時の流れは穏やかで、春のような陽気にこのまま眠りそうになる。


「いやいや、まったりするのも悪くはないけど」


 まずは周りのことを固めてからだ。

 具体的には異世界にあるダンジョンや遺跡周辺の調査と俺の異界の調査を平行して進める。


「異世界の文明がどの程度かも知りたい」


 今のところ人工物としては石積みの遺跡と人骨辺りしかない。

 ダンジョンが人の手で作れるのかは分からないから除外する。


「そういえば、最初に立っていた場所もダンジョンだったな」


 通路もボロボロで宝箱もなかったけど、壁の作りは滝裏のダンジョンと同じだ。


「途中で装備が手に入ったのは幸運だった」


 革で出来た肩掛け鞄とサンダル。

 どちらもクラスⅠで品質は良だ。


「鉄の剣は状態が悪すぎたし仕方ない」


 そしてあの鑑定玉だ。

 クラスⅤで品質も優。

 

「……もしかしてあのダンジョンで見つけた?」


 鑑定玉だけ他の装備と釣り合いが取れない。

 探索する為に人が来たとは考えられないか。


「まあ、敵と遭遇しなかったのは幸運だったと思っておこう」


 どうして死んでいたのかは分からない。

 道に迷ったのか、モンスターや動物にやられたのか、それとも罠か……考え出したらキリがない。


「さ、今日も一日頑張るとするか」


 勢いを付けて身体を起こすと、花と戯れているラジエルを呼びに向かおうとした。


「ん?」


 さっきまでそこにあった芯や軸が消えていた。

 下に敷いていた大きな葉っぱごとなくなっている。

 スキルの確認に集中していて見逃した。


「まあ消える事が分かっただけよしとするか」


 正直かなり助かる。

 わざわざ埋めたり捨てに行ったりしなくていいからだ。

 俺は視線を戻すとラジエルの方へ向かって歩き出した。



 丘を降りた俺達は異界の森の中を歩いていた。

 今日は一度海岸まで行ってみるつもりだ。

 宙に浮かぶラジエルを先頭に転ばないように慎重に進む。


「やっぱり動物はいないな」


 これだけ広い森なら鳥やイタチの一匹くらい出てきてもよさそうだけどな。

 鳴き声どころかその痕跡すら見当たらない。


「下手したら海もか」


 この調子だと植物以外は食べ物がないかもしれない。


「栄養も偏るしな……どうしようか」

「にゃーん」


 少し先でラジエルが何かを見つけたらしい。

 そちらに小走りで近寄る。


「おっ、湧き水か?」


 ラジエルの近くには苔生(こけむ)した大岩があった。

 大きなひび割れがあちこちにあって、そこから水が幾筋も大量に流れ出している。


「いただきます」

「にゃん」


 水を手で掬って飲んでみた。


「美味い!」

「にゃん!」


 隣でラジエルが一心不乱に水を舐めている。

 頭部がどんどん水に入っていく。


「こらこら、溺れるだろ」


 俺は濡れた手をジャージの裾で拭うと、ラジエルを救出する。


「にゃ」


 ラジエルは俺を見てバツが悪そうに鳴いた。


「それにしても大きな岩だな」


 見上げる程の大きな岩だ。

 横幅も俺が両手を広げて何人分もある。

 周囲にはそれよりも小さな岩がゴロゴロあるが、その中でも飛び抜けて大きい。


「……ん?」


 よく見るとこの岩薄ら光ってないか?


「んにゃ」


 ラジエルは腕の中で耳をカシカシしている。

 興味がないようだ。


「調べてみるか」


 ラジエルを片手で抱き直すと、肩掛け鞄から鑑定玉を取り出して岩を鑑定してみた。

 結果がこれだ。



《異界の聖なる岩》クラス:Ⅴ 品質:優

・異界に存在する神聖な岩。聖水を創り出し周囲の環境を浄化する。移動・破壊不可。



「は?」


 実に面白い。

 神聖な岩、聖水、浄化。


「……」


 次に水を鑑定。



《異界の聖なる岩清水》クラス:Ⅳ 品質:優

・異界に存在する聖なる岩から流れ出した聖水。触れたものを浄化し、服用した者の傷病を癒やす。



 まさに聖水。

 持ち運び出来れば最高だが、残念ながら手持ちに水を汲める容器がない。

 椰子の実に穴を開ければ水筒代わりには使えるかもしれないが、硬くて今はどうにもならない。


「とにかく先に進もう」


 今日の目標は海岸に辿り着くことだ。

 この場所は覚えておいて後からまた来よう。

 川の水は卒業だ。飲み水は今後この聖水でいい。

 怪我も病気も治るし、何より飲みやすくて美味しい。


「にゃん」

「そうだな、行こう」


 俺達は再び森の中を歩き始めた。

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