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『  』と呼ばれた少年  作者: リフ


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第6話 新スキル獲得

「ふぅ」


 中々ハードな一日だった。

 何の説明もなく転移して、色んな場所を歩き回って。

 やっと安全なここへ辿り着いた。


「食料もどうにか確保した」


 果物だからそのまま食べられるし、外の川で水も飲める。

 水浴びもトイレもどうにかなりそうだ。


「この異界でトイレはしないけどな」


 何というか、あまり汚したくない。

 これからお世話になる場所だし、出来れば綺麗なままがいい。


「まあ、芯とかは捨ててきたけど」


 果物の芯やブドウの軸部分は木の側に置いてきた。

 ちゃんと土には還るはず。


「……」


 葉っぱの上に載っている金リンゴに目を向けた。

 正直作り物みたいで食欲は湧かない。

 鑑定によると味もないらしい。

 ただ、スキルを得て生き残る確率は上がるかもしれない。


「ラジエルも食べるか?」

「にゃ」


 ラジエルは見向きもしない。

 食べる気はないようだ。


「じゃあもらうな」


 鑑定玉を鞄に入れると金リンゴを手に取った。


「いただきます」


 シャクッシャクッ


 静かな丘の上にリンゴを囓る音だけが響く。

 金色なのは外側だけで、中身は普通のリンゴだ。

 だが味も香りも何もない。


「うーん」


 見た目や食感はリンゴなのにな。

 これじゃ食事というよりただの作業だ。


「美味しくないな」


 スキルの為と割り切って飲み込んでいく。


「芯はどうするべきか」


 最後に残ったそれを眺める。


《ポーン! 通常スキルを獲得しました》


 ……どうやら芯までは食べなくてもいいらしい。


「よかった」


 何かのスキルは得られた。

 鑑定結果通りでまずは一安心だ。


「んー」


 そういえば今の声は何なんだろうな。

 異世界の神様とかか?


「装備スキルの時は何もなかったのに」


 まぁ、装備スキルの時は聞こえない方が助かる。

 毎回鑑定玉を使う度に言われるのは面倒だし。


「まずはスキルチェックからだ」


 芯を葉っぱの上に置くと鞄の中から鑑定玉を取り出す。


「鑑定」



星渡(ほしわたり) (めぐる)

年齢:18歳

種族:異世界人

職業:旅人

SP:100/100

MP:0

固有スキル:【まどう図書館(貸出中)】

通常スキル:【気配遮断】

装備スキル:【鑑定】【一界一城の主】



「気配遮断?」


 俺は続けて【気配遮断】を鑑定してみる。



【気配遮断】クラス:Ⅲ

・通常スキル。スキル発動を願う事で発動者及び発動者が触れている者の気配を消す。発動には10SPが必要。一歩動く毎に1SPを追加で消費する。SPが無くなると強制的に解除される。任意で解除も可能。



「お、結構いいんじゃないか?」


 気配を消すというのがどの程度なのか。


「完全に見えないんだったら隠形とか迷彩とかになりそうだ」


 意識してないと見失うとかそんな感じかもな。 

 クラスもⅢだしそこまで強くないかもしれない。

 ただ、応用が利きそうなスキルではあると思う。


「どんな感じか試してみたいけど……」


 辺りはすっかり暗くなっていて、遠くの空には月が見える。

 月明かりがあるから周りが全く見えない訳じゃない。

 ただ、今から試すには時間も遅い。


「寝るか」


 俺はすぐに寝転がるとラジエルをお腹の上に乗せる。

 後頭部に当たる草の感触がくすぐったくて鞄を枕にした。


「うん、どうにか寝られそう」


 家のベッドを思い出す。

 普通の生活ってかなり恵まれてたんだなぁ。


「じゃあおやすみ」

「にゃん」


 ラジエルは丸くなると目を閉じる。

 お腹に感じる体温と爽やかな落ち着く香り。

 空に浮かぶ蒼い月に見守られながら、俺は眠りに落ちていった――。



「ふあぁ……」


 瞼に光を感じて目を覚ました。

 目を擦りながら周りを見れば、丈の短い草が視界に入る。

 どうやら草原に寝ているらしい。


「あぁ、そうか」


 夢じゃなかったんだな。

 異世界転移。


「んんー」


 上半身を起こそうとしてお腹の上の違和感に気付く。


「おはよう」


 優しく撫でてみた。

 今日は背中の翼も一緒に。


「にゃあん」


 ラジエルもよく眠れたのか、背をぐいーっと伸ばしながら鳴く。


「まずは顔を洗うか」


 気持ちを切り替える為にも一度さっぱりしたい。


「行こう、ラジエル」

「にゃん」


 俺はラジエルと一緒に異界から出る事にした。



 黒い渦を通り抜けると、昨日入り口を開いた場所から出た。


「行くか」

「にゃ」


 ラジエルはふわふわ浮きながら先導する。


「こっちも朝なんだな」


 早朝特有の空気の匂い。

 多分、異界と時間帯は同じなんだろう。


「んー、清々しい空気だ」


 こんな時じゃなければもっと堪能出来たのになぁ。

 顔を洗って、ちょっと水も飲んでっと。


「うん、目が覚めた」

「にゃん」


 ラジエルも水を飲みだした。

 ってよく考えたらその水ってどこに行くんだろう。

 ラジエルは俺のスキルから生まれた存在だ。

 存在を維持するために必要なのか、それともただの俺の真似か。

 トイレも知る限りはしてないみたいだし。


「にゃ」


 ラジエルは飲むのを止めると、こちらをじっと見て一鳴き。

 ……考えるだけ無駄だな。

 これ以上は止めておこう。


「さ、異界に戻って食事にしよう。その後はスキルの確認だ」


 通常スキルの使用感とSPがどの程度の時間で回復するかも確認したい。

 回復が早ければ気配遮断のスキルを使いながら長距離を移動出来る可能性がある。


「にゃにゃ」


 ラジエルはいきなり俺の胸へ飛び込んできた。

 落ちないように片手で支え、そのまま川から少し離れる。


「この辺りでいいか」


 川の方からは死角になっている事を確認すると、俺は異界の門を開いた。


「行こう」

「にゃん」


 俺とラジエルは黒い渦の中へと入っていった。

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