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『  』と呼ばれた少年  作者: リフ


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閑話 交差する運命

「へっこれで俺も稼いでやるぜ!」


 オルター遺跡からほど近くの村に少年の声が響いていた。

 ボサボサの髪、薄汚れた衣服、そして手には錆びた剣。


「止めとけ坊主、あそこには何もないぞ」


 壮年の男が声を掛ける。


「うるせぇ!」


 少年はその助言に耳を貸さず走って行った。


「はぁ、何で言うことを聞かないかねぇ」


 男はため息を吐く。


「あれは孤児だよ」


 男の近くを通りかかった老女が答えた。


「孤児か」

「両親がちょっと前に亡くなってね」

「引き取り手はいなかったのか?」

「……隣村の村長の息子さ」

「あぁ、隣村の」


 隣村の村長はこの辺りでは悪い意味で有名だった。

 村人を自分の所有物だと考え、自分の都合のいいように使っていた。


「それが死んでからは向こうで爪弾きにされたんだよ」

「子供に罪はないだろうに」

「親が親なら子も子でね」

「……救いようがねぇな、あの坊主も同じか」


 男は顔をしかめる。


「親の悪い所を受け継いでるからね、あれは」

「よく村で受け入れたな」

「本当は皆嫌がったんだけどね。行き場所がないからって渋々さ」

「だからってあの態度はなぁ……治らなかったのか?」

「無理だったよ、人の話を聞きやしない」


 確かに少年は男の話も聞かなかった。


「そうか」


 男は一度言葉を切ると、森の中の遺跡の方角を見て言う。


「あそこは遺跡以外特に何もないはずだけどな」

「遙か昔に滅びた都市だからね。今更残っている物なんてないよ」


 老女は憐れみの視線を男と同じ方向に向けると言った。


「だよな」


 男は背をグッと伸ばすと腰の長剣を確かめる。


「じゃ、調査に行ってくるわ」

「受けてくれてありがとうね。野盗なんかにやられるんじゃないよ」


 老女はそう言って男の背中を叩くと去って行った。


「ああ、無理はしねぇ主義だ」


 男はそう呟くと、調査依頼のあった野盗の痕跡を探すため動き出した。



「ははっ、これで俺も大金持ちだ!!」


 少年は両親の遺した鞄を肩に掛け、ダンジョンの中を歩く。

 遺跡近くにあるこの入り口に気付いたとき、少年は運命だと思った。

 これで人生が変わると。


「どいつもこいつも俺のこと馬鹿にしやがって!」

「見てろよカスどもが!」

「黙って俺の言うこと聞いてりゃいいんだよ!!」


 罵詈雑言(ばりぞうごん)の嵐が止まらない。

 叫びながら進むその姿は、とてもダンジョン探索をしているようには見えなかった。


「俺の言葉は絶対っ……ん?」


 いくつもの分岐を進んできた少年はとある小部屋に行き着く。


「何だあれ」


 小部屋の中心には豪華な宝箱が置いてあった。


「おおー!! めっちゃ豪華じゃん!!」


 少年は警戒する事もせずに部屋に入る。

 視線は煌びやかな宝箱に釘付けだ。


「開けるぞ!」


 少年は宝箱の上蓋を持ち、勢いよく開けた。


「どんなお宝が……なんだこれ?」


 光が収まると宝箱が消え、小さなビー玉のようなものが床に転がっていた。


「凄いのは箱だけかよ!」


 少年はそう吐き捨てると顔をしかめる。

 そしてビー玉を摘まみ上げると、確認もせずにすぐ鞄へ放り込む。


「宝箱はもっとあるはずだ。誰も気付いてない内に根こそぎいただく!」


 少年は小部屋から出ると別の通路を探そうと道を戻り始めた。


「何か身体が重いな……」


 小部屋を出てすぐに少年は身体の異変に気付いた。


「あ? 何が……」


 しばらく歩いたが症状は良くなるどころか悪くなる一方。

 壁に寄りかかりそのままズルズルと座り込んでしまう。


「何で……何でだ……」


 少年は床を見ながら呟く。

 頭を上げる力はもう残されていなかった。


「俺はまだ……」


 彼はそのままダンジョンの中で息絶えた。

 それは巡がこの世界へ飛ばされる数ヶ月前の出来事であった。




【宝箱】クラス:Ⅴ 品質:優

・天然ダンジョンで稀に見つかる宝箱。ダンジョン内の大半のリソースを注ぎ込んで作られた品。簡単に開ける事が出来るが、開けた者は衰弱死の呪いを受ける。

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