エピローグ
「はぁ……」
俺は宿屋レリジョンの居室のベッドに横になった。
隣にはラジエルが上ってきて丸くなる。
そっと手を伸ばし、温かくて柔らかい白毛を撫でてみる。
「時間が過ぎるのは早いな」
俺はこの三日間を思う。
与えられた期日は瞬く間に過ぎていった。
そして昨日の朝、マァ達はファーレスさんの所へ行くと言って部屋を出ていった。
実にあっさりとした別れだった。
「どうしよう」
二人部屋だからマァ達がいなくなると急に広く感じる。
一人部屋に移った方がいいのは分かってる。
それでも俺は部屋を変える気にはなれなかった。
コンコンコンッ
「ん? はーい」
今日って掃除の日だったか?
俺はラジエルをスキルに戻し、ドアを開けて外を見る。
「どなたで……は?」
そこには別れたはずのマァが立っていた。
♢
俺達は椅子に座ると向かい合う。
「何でまだこの街に?」
昨日ファーレスさんと一緒に街を出たと思ってたんだけど……。
呼び出したラジエルとハッズはベッドの方で遊んでいる。
「それはメグルと一緒にいるためよ」
ん?
「私、気付いちゃったのよ」
マァは得意げな顔で言う。
「意思を伝えるだけなら手紙でも十分だって!」
だからファーレスには手紙を持ち帰らせたわ、と続ける。
「いやいや! そこは直接親に言うべきだろ!?」
俺は想像と違う展開に戸惑う。
「それにファーレスさんはそれで納得したのか?」
確か連れ戻しに来たって言ってたし。
「だから頑張って説得したのよ……まさかあんなに頭が固いとは思わなかったわ」
いや、それが普通の反応だから。
逆に説得出来たのが凄いよ。
「それにメグルは私がいないと依頼もこなせないじゃない?」
それは流石に大袈裟だと思う。
でも言葉が分からないしな……。
「学校へ行くのだって、今じゃなくていいわ」
試験に合格すればいつでも入学は出来るらしい。
「だからこれからも一緒にいてあげる!」
マァのその笑顔に、俺は一体何を返せるだろう。
「ありがとう」
そうだな。
彼女には幸せになってもらおう。
いつか振り返った時に一緒に過ごせてよかったと思えるくらいに。
「これからも一緒だ」
俺も笑顔で伝える。
きっと俺の幸せもそこにあるから――。




