第35話 職員の正体とダンジョン
午後から俺達は二手に分かれる事にした。
俺はスキルの確認と訓練を。
マァにはあの横柄な職員について調べてもらっていた。
「こっちは色々分かったわよ」
部屋に帰ってきた俺はマァの話を聴いている。
「つまり、あの男はこの地方の名家出身ってこと?」
「そう、そこの三男らしいわ。何をしても途中で投げ出すし、そもそも本人の性格が終わってるから、家からも期待はされてないみたい」
ただ、仕事をしないのも名家的には外聞が悪いらしく、家のコネを使って斡旋所にねじ込んだようだ。
「だから周りの人間が何も言わないのか」
扱いにくい上に仕事も出来ない。だがそれを理由に解雇すればその名家とやらの顔に泥を塗る事になる、と。
「調子に乗ってつけ上がる訳だ」
誰も注意する人間がいないなら、破滅するまで気付く事はないだろう。
「顔は覚えたから、次からは避けましょ」
「そうだな、関わらないようにしよう」
何を言っても屁理屈をこねたり馬鹿にされるのがオチだ。
関わるだけ時間の無駄なんだから、見えてる地雷は避けるに限る。
「そっちはどうだったの?」
マァは訊いてきた。
「ああ、こっちは……」
東門を抜けた先の草原で起きた事を話していく。
マァは驚いていたけど、あの場に居なくて本当によかったと思う。
♢
俺達はそれからひたすら依頼をこなす日々を送った。
そんな中、名前も知らない名家の三男がクビになった事を知る。あの日以降俺達以外にも絡んでいたようで、相当数の報告が家の方に行ったらしい。
それとシーマさんにも手を出そうとしたようだ。たまたま本人に斡旋所で会った時に教えてくれた。クビになって清々したと笑ってたな。ランジさんが帰ってきてたら死んでたんじゃないかソイツ。
何で今そんな奴の事を思い出したかというと、だ。
「あったな、ダンジョン」
「ええ、そうね」
俺は視線をそちらに向ける。
街の西門の先にある草原の一角。大きな岩が転がる場所にそれはあった。
俺達は大岩に開いた穴に慎重に近づくと、軽く入り口付近を確認する。裏から見たらただの岩なんだけど、正面から見たらダンジョンだ。
「まだ踏破はされてないな」
「ええ、壁がまだ綺麗だもの」
ダンジョンは踏破されると力を失い、徐々に壁が朽ちてボロボロになる。
つまりここはまだ見つかっていないか、探索中かのどちらかだ。
「でも不思議だよな、岩の裏に何もないなんて」
「ダンジョンは別の空間に繋がっているとも言われているの。だからじゃないかしら」
確かにこれを見るとそう思う。物理的にあり得ない構造をしているからだ。
「そうかもしれない。ところでどうする?」
俺達はダンジョンの捜索をしていた訳じゃない。
別の依頼でこの辺りに用事があっただけなんだ。
「そうね……」
マァは顎に手を当てて考えている。
日は中天を過ぎた辺り、昼時だし一度帰って報告と食事をしてからまた来てもいい。
ちなみに斡旋所の職員にはあの三男の事についてしこたま謝られた。
気付いてたんなら止めろよとは思ったけど、向こうは向こうで事情があったし仕方ない。一番はその三男が悪い訳で。
「一度街に戻りましょ。ダンジョンの発見報告と昼食が先ね」
「分かった」
「その後に依頼を終わらせて、時間があればダンジョンへ入ってみたいわ」
「踏破する?」
「ええ、出来るならしてみたい」
俺はダンジョンに入ったことがあるが、マァはまだない。
本を読むのが好きみたいだし、物語みたいに自分でもダンジョンを踏破してみたいのかもしれない。
「分かった。じゃあ一旦戻ろう」
俺達はダンジョンの前を離れ、街へ向かって歩き始めた。
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