第33話 モンスターとは
マァによるとこの生物はモンスターではないかとの事だ。
モンスターはダンジョン内に現れる生物で、入ってきた人間に対して襲いかかってくる。話し合いは出来ないし、逃げてもまた別の人間を襲うので見つけ次第倒す。
もし倒せずに逃げた場合は斡旋所に報告し、ダンジョンの危険度に応じて踏破隊が組まれるという。
「そもそもダンジョン以外にこんな生き物はいないわ」
マァはそう言うとモンスターらしきものに近寄りしゃがみ込んだ。
「見て」
マァの隣に行くと俺もしゃがむ。
その視線の先を見ると、化け物の身体が光の粒になって消えていく。
「これは……」
「そう、これがモンスターの特徴よ」
ダンジョン毎に姿が違うモンスターだけど、倒されると消えるのは同じらしい。
「何も残らないの?」
素材とか討伐を証明する物とか。
消えるんじゃ何も得るものがない。
「そうね。ただ運がよければ倒した人のSPが増えるらしいから、全くの無駄ではないわ」
「そうなんだ」
俺は短剣を鞘に戻し、鞄に入れている鑑定玉を触ると自分の腕を見る。
星渡 巡
年齢:18歳
種族:異世界人
職業:旅人
SP:100/100
MP:1
固有スキル:【まどう図書館(貸出中)】
通常スキル:【気配遮断】【短剣術】
装備スキル:【鑑定】【一界一城の主】【星虹の一撃】【剣状変化】
「ん?」
SPは増えてないけどMPが増えてる。
SPとMPを鑑定する。
MP
・【まどう図書館】を使用するために必要な値。モンスターを倒すことでポイントが得られる。
SP
・通常スキルを使用する際に消費されるポイント。時間経過で徐々に回復する。
「うーん」
よく見るとMPはポイントが得られるって書いてあるけど、SPにはそれがない。
俺はこっそりマァのSPも鑑定したけど説明は同じだった。つまりMPがあるせいでSPが増えなかった訳じゃない。
「となると……」
運がよければの部分か。
モンスターの中にSPを上げる種類がいるのかもしれない。
「んー」
分からん。
とりあえずSPも増える可能性があると理解していればいい。
「それにしても」
【まどう図書館】で新しい本を手に入れるには100MPが必要になる。
つまりさっきみたいなモンスターをあと99体倒さないといけない。
そう考えると次の本を手に入れるのは当分先になりそうだ。
『にゃー』
俺の中のイマジナリーラジエルが何か言った気がするが、別に俺はラジエルがいらないとか浮気したいとかそんなことは微塵も思っていない。ただ、新しい仲間というか次に手に入る本が単純に気になるだけだ。
脳内でラジエルに言い訳をしつつ、意識をステータス画面に戻す。
【星虹の一撃】クラス:Ⅴ
・装備スキル。スキル発動を願い発声する事で亜光速の突きを放つ。発動には100SPが必要。何人たりともその一撃を妨げる事は出来ない。亜光速時には発動者及び発動者の所有する物品は星の力で保護される。
「これを使えればもっと楽だったかも」
いきなり襲われてすっかり存在が頭から抜け落ちていた。
一撃で全てのSPを使い切るとはいえ、切り札は切るべき時に切らないと意味がない。
今回は大丈夫だったけど、次からは気を付けよう。
「ふぅ」
俺は鑑定を終えた。
ある程度時間が経ったからか、目の前のモンスターは既に消えていた。
「それでどうだったの?」
「ん?」
「SPよSP、増えてた?」
思考が脱線しすぎてSPの事が抜けてた。
「ごめん、増えてなかったよ」
俺は頭を掻きながら伝える。
「そう。気を落とす必要はないわ」
マァは優しい眼差しで俺を見てくる。
「ああ……ありがとう」
俺はそう言うと、バツの悪さを隠すように続ける。
「ところであれは何でここにいたんだろうな」
俺はさっきのモンスターを思い浮かべ言う。
「確かにそうね……」
マァは考え込む。
「近くにダンジョンがあるとか?」
「分からないわ。普通、ダンジョンからモンスターが出る事はないのよ」
「ダンジョンは通路みたいなやつ以外もあるの?」
フィールド系みたいに普通の場所と見分けがつかないとか。
「いいえ、石壁で覆われていて通路が淡く光っているのがダンジョンの特徴なの。踏破されたら劣化が進むことはあるけど、基本の形は変わらないわ」
「じゃあ何でここに?」
俺は首を傾げた。
「多分誰かを追って出てきたんだと思うわ」
「誰かを追って……」
「モンスターに見られた状態で逃げた場合、相手は当然追ってくるわ。撒く事が出来ればいいけど、引き離せずにダンジョンを出ると一緒に出てくる事があるの」
「つまり、先にモンスターに襲われたやつがいるって事か」
「そうよ。でもそれだとおかしいのよ」
マァによると未踏破ダンジョンは見つけたら基本的に斡旋所に報告が必要らしい。
報告された場合はダンジョンの入口に職員や高ランカーが派遣される。人の出入りの監視もそうだけど、中からモンスターが出てきた場合確実に対処するためだ。
俺の場合は滝の裏にあったダンジョンがそれに当たるけど、踏破してしまったのとダンジョン自体小規模で既に消えているはずだから報告は要らないそうだ。
「出てきたとしても入口で対処されるか、無理なら街に連絡が行くはずよ」
「でもそんな話はなかったな」
そもそもダンジョンが街の近くにあるなら斡旋所で言われるだろうし。
「だからおかしいの」
周囲には草原だけ。近くにダンジョンもなければ人もいない。
「うーん」
考えても答えは出ないので、俺達は街に戻ったらモンスターについて報告をする事にした。
「早く残りの薬草を集めてしまいましょ」
「ああ」
俺達は離れないよう一緒に探し始める。
モンスターに気を付けつつで時間は掛かったけど、依頼された量を集め終わった俺達は街へ戻った。




