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『  』と呼ばれた少年  作者: リフ


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第31話 嵐を起こして去る男

「お! また会ったな」


 俺達は斡旋所を訪れていた。新しい依頼が何かないか見るためだ。

 もしよさそうな物があれば受けるし、なければオフの日にしようと来る前に部屋で話している。


「あ、ランジさん」


 そんな俺達は斡旋所の中でランジさんを見つけた。


「今日も中々の熱さだな」


 俺達の手を見ると言う。


「あはは……」

「でしょ!」


 俺は苦笑い、マァは逆に胸を張る。

 最近はこんな関係も悪くないなーとは思っている。

 ただ、今までこんな経験をしてこなかったから、素直に受け止めるのは難しい。


「で? 依頼を見繕いに来たか」

「はい、何かあればと思って」


 俺はランジさんの質問に返す。


「そうか、頑張れよ!」


 ランジさんは俺の横に来ると背中を平手でバンバン叩く。

 衝撃が凄いけどそこまで痛くない。多分手加減をしてるんだな。

 その熊みたいな体格から繰り出される平手にしてはだけど。


「ランジさん! ちょっと依頼の事でご相談が……」


 受付の方から誰かが近づいてくる。

 そちらに視線を向けるとシーマさんだった。


「おう、シーマか。どうした?」


 ランジさんは俺達から離れるとシーマさんに近づく。


「ちょっとここでは」


 そう言って俺達を見る。


「ああ、それじゃ移動するか」


 ランジさんはその視線の意味を汲んで、場所を移すみたいだ。


「お話し中にすみません。君達もごめんなさいね」


 そう言ってシーマさんは頭を下げる。


「俺達は大丈夫です。な、マァ」

「ええ、別に問題ないわ」


「ありがとう。そう言ってもらえると助かります」


 シーマさんは頭を上げるとランジさんを見上げる。


「俺も構わねぇよ。場所変えるぞ。二階でいいな?」

「はい、では行きましょう」


 二人は一階の左側にある階段へ向かうようだ。


「じゃあな、坊主ども!」

「では、失礼します」


 対照的な挨拶をして、二人は二階へ上がっていった。


「忙しそうだね」

「そうね」


 俺達は顔を見合わせ言った。



「結局よさそうな依頼はなかったな」

「ええ、今日は依頼は受けずに休みの日にしましょ」


 一通り掲示板を確認してみたが、よさそうな依頼は見つからなかった。


「お、何かよさそうな依頼は見つかったか?」


 後ろから声を掛けられた。


「ランジさん」


 俺は振り返ると言う。

 そこにいたのは二階から降りてきたランジさんだった。


「シーマさんは一緒じゃないんですか?」


 俺は不思議に思って訊く。


「お、何だ。シーマの事が気になるのか?」


 ランジさんはそう言って俺の脇を肘で突いてくる。


「おふっ、違いますよ。ただ気になっただけで」


 良い所に入ってちょっと()せた。


「むー」


 ほら、マァも膨れてるし。


「ガハハ! 冗談だ!」


 ランジさんは何が面白いのか腹を抱えて笑う。


「笑い事じゃないですよ、もう」


 俺はそう言うと、マァの様子を探る。


「いや、すまんすまん。お嬢ちゃんも機嫌を直してくれ」


 そう言ってランジさんは笑うのを止めた。


「で、だ。俺はしばらくこの街を離れる事になった」


 唐突にランジさんは告げる。


「え? そうなんですか?」


 俺はそう答えるしか出来ない。


「ああ、ちょっと問題が発生してな。俺が行かなきゃならなくなった」


 ランジさんは真剣な表情になると話を続ける。


「だからしばらくいなくなるが、ま、気にするな」


 最後は軽い調子でそう締め括る。


「気を付けて下さいね」


 俺はランジさんの身を案じる。

 それとこれだけは言っておかないと。


「あと以前はありがとうございました。周りの視線を払ってもらって」


 俺はマァと繋いだ手を見る。

 微妙に力が籠っているような気がしないでもない。

 これは機嫌が直るのに時間が掛かるか?


「ま、余計なお節介にならなくてよかったぜ。労働環境は大事だからよ」


 ランジさんは笑って言う。


「じゃ、そろそろ準備して行くかね」


 ランジさんは早速これから準備をするようだ。依頼の期限が近いのかもしれない。


「分かりました。ではまた」


 俺はそう言ってランジさんを見送る事にする。


「ありがとよ。それとお節介ついでに一つ」


 ランジさんは俺の耳元に顔を寄せると言った。


「お嬢ちゃんの機嫌取り頑張れよ」


 そして一つ俺の肩を叩くと、そのまま逃げるように斡旋所を出ていった。

 ……もしかして急いでたのはこの場から早く離れたかったからでは。


「ねぇ、メグル」


 地の底から響くような声がする。


「へ?」


 俺は恐る恐るマァの方を見る。


「今日はどうするのかしら?」


 顔は笑っているが笑っていない。

 そんな矛盾が目の前にあった。


「あ、ああ……」


 俺は一体何をさせられるのだろうか。

 その恐ろしい姿に俺はただただ震えるしかなかった――。

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