第2話 ラジエル登場
その後、どうにか再起動した俺は他の物も鑑定してみる事にした。
まず装備スキルの【鑑定】を見てみると鑑定玉の時に見た装備スキルの説明が出てきた。固有スキルにはクラス表記がなかったがこっちにはあるようだ。クラスⅤがどの程度かは分からない。高い方であることを祈る。
ステータス画面にあったSPはスキルポイントのことで、通常スキルを使用するときに消費される数値だ。ちなみに時間経過によって回復するらしい。俺には通常スキルはないので今は気にしなくてもいい。
種族や職業の詳細は分からない。鑑定しようとしても何も出てこなかった。
次に人骨の所にあった錆びた剣も調べてみた。
《鉄の剣》クラス:Ⅰ 品質:劣
・鉄で作られた剣だったもの。状態が悪く武器としては使用出来ない。
結果はよくない。
剣ではなく鈍器としてはどうかとも思ったが、そもそも武器として使用出来ないと書かれている時点で止めた。あと全体的に錆だらけだし手も汚れそうで持ちたくない。
人骨から拝借した肩掛け鞄やサンダルもクラスⅠだったがこちらの品質は良だった。多分、劣よりは上で優よりは下といった感じだと思う。
見たいものは見終わったので、鑑定玉を一旦鞄の中に入れておく。
「そろそろ固有スキルを使ってみるか」
ランダムで本が手に入り何かしらの恩恵を受けられる。
何もかも足りないこの状況を少しでも改善したい。
俺は立ち上がると目の前の床に手をかざした。
「まどう図書館!!」
気合いを入れてそれっぽく宣言してみる。
すると眩い光が手の平から溢れ出し床へと降り注いだ。
「おお!」
その派手な演出に自然と期待が高まる。
光は床の上で丸く集まると徐々にその姿を変えていく。
《ポーン! まどう図書館一冊目の本が解放されました》
「は? 何が……」
頭の中に響く声が気になって視線が上を向いてしまう。
「っていかんいかん、俺の……本?」
「にゃーん」
視線を戻した先にもう光はない。
代わりに本とは似ても似つかない―—翼の生えた猫がそこにいた。
♢
「おーよしよし!」
俺は胡坐の上に乗った猫を撫でていた。
猫は嫌がる素振りもなく、今は大人しく丸くなってお休み中だ。
「……はっ! 俺は一体何を」
しばらく撫で続けていたがようやく正気に戻る。
確か最初は猫の方から俺に近寄って来て匂いを嗅いでいた。
そして身体を俺の足にスリスリし出したんだったな。
猫に負担を掛けないよう優しく抱き上げて、温かさと仄かに香ってくる清涼感のある匂いに癒やされていたらいつの間にか――床に座り撫でていた、と。
「いや待てよ、この猫が本?」
ただの可愛い猫だろ。ちょっと羽が生えてるけど。
鑑定によれば本の種類によって様々な恩恵があるらしい。
つまりはこの癒し効果が恩恵ということ?
「流石に違うよな。でも落ち着くわー」
猫の部分は白い短毛種で尻尾は長い。
翼は肩甲骨辺りから生えていて黒色で艶がある。
「にゃーん」
考え事をしていて撫でる手が止まったからか猫が俺を見た。
あ、瞳は赤いんだね。
「ごめんごめん」
頭を撫でながら宥める。手触りがいい。
猫はそれに満足したのかまた寝る体勢に入った。
さっきの一冊目という謎の声も気になるが、今はこの猫について考えよう。
「とりあえず名前だな」
この子が本の精か何かだとしても、俺が呼び出したんだし名前はあった方がいい。
「性別は、と」
丸まっている猫をそっと抱き上げる。
みょーんと縦に伸びる身体。
「んにゃっ!」
「うわっ!」
その一鳴きと共に俺は見事に蹴りを食らってしまう。
そして猫は素早く両手の拘束から逃れた。
どうやら性別を確認されるのが嫌みたいだ。
「ごめんね、もうしないからおいで」
俺は少し警戒気味の猫にそう声を掛け、もう一度抱き上げる事に成功。
「うにゃ」
「ごめんね」
なでなで、なでなで。
「どういう名前がいいかなー」
大人しく腕の中で丸まった猫を眺めながら考える。
雄雌どっちでもよさそうな名前がいいよな。
「おっ」
色々な候補が浮かぶ中で、ピンと来る名前があった。
「君の名前はラジエルだ、どうかな?」
「!」
翼の生えた猫改めラジエルは、勢いよく身体を起こしこちらを見上げると固まった。
背後には徐々に宇宙が広がっていく。
その姿は昔ネットミームで見た宇宙猫にそっくりだ。
こっちは白猫で黒い翼も付いてるけど……。
「にゃ」
ラジエルはしばらくするとまた動き出した。
同時に背後に広がっていた宇宙も消えた。
まあ、動き出したと言っても元のように丸まっただけだ。
「今のは何だったんだ」
俺はその間動けずにいた。
目の前で起こった事が理解出来なくて。
「宇宙を呼び出すのが恩恵?」
分からない。
色んな事が起こりすぎて見えてはいけない物が見えてしまったのかも。
「後でラジエルにも鑑定玉は使ってみるとして、今は先に進むか」
水も飲みたいし、腹も少し空いてきた。
「早くここを出ないと」
俺は両腕でラジエルを抱えると、周りを警戒しつつ通路を歩き続けた――。




