表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『  』と呼ばれた少年  作者: リフ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/28

第26話 始まりの泉と水筒の変化

明けましておめでとうございます!

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

《始まりの泉》クラス:Ⅴ 品質:優

・原初の泉。聖星水を生み出す。移動・破壊不可。



「はぁ!?」


 目の前のこれは水溜まりじゃなくて泉らしい。

 あの光る岩と同じクラスで、こちらは聖星水を生み出すようだ。

 それに《異界の~》も付いていない。

 俺は水自体を鑑定しようと意識を集中する。



《聖星水》クラス:Ⅴ 品質:優

・原初の泉を構成する水。聖星水は原初の水であり、ただそこに在るもの。触れた者の意志により自在に変化し、その姿は定まる事がない。



「何だこれ」


 説明文が抽象的すぎる。触らないとどう変化するのか分からない。


「うーん」


 直接触れるのは躊躇(ためら)われる。墨汁に似た真っ黒な水は身体にも悪そうだ。


 トプン


 俺は近くに落ちていた枝を拾うと泉に浸してみた。

 しばらくして引き上げてみる。枝にも水にも特に変化はなかった。


「触ろう」


 枝に付いた聖星水に恐る恐る触れてみる。

 それでも変化は見られない。


「えっと……おお!?」


 試しに聖水を思い浮かべてみると、すぐに色が透明に変化して僅かに発光し始めた。

 触れていた指を離すと鑑定する。



《聖水》クラス:Ⅴ 品質:優

・原初の水より作られた聖水。触れたものを浄化し、服用した者を復活させる。



「おいおい」


 クラスⅤの聖水って……クラスⅣの聖なる岩清水よりクラスも効果も上じゃないか。


「これは聖星水の検証が必要だな」


 俺はグルーミングを始めたラジエルを横目に、しばらく聖星水の変化について調べる事にした。



「……」


 俺は混乱していた。

 そのあまりの節操のなさに。


「どうするよコレ」


 甘い匂いのする枝を置きながら考える。

 多分、液体であれば何にでも変化するんだと思う。

 足元に並べたいくつかの枝を見るとため息が出た。


「ふぅ」


 真水や塩水、聖水や毒水、血液や樹液に至るまで。鑑定すれば自分がこうなれと思った液体に変化していた。

 それは冗談で思い浮かべたミルクセーキやミックスジュースでも結果は同じ。異世界に存在しない液体のはずなのに。


「怖っ!」


 毒液の付いた枝を聖水の付いた枝で浄化しつつ、聖星水の今後を考える。他の枝は放置でいい。


「これヤバいわ」


 何事も行き過ぎはよくない。

 そもそもマァの水筒に入れる候補を探していただけなのに。


「マァが喜びそうなのはこの辺り」


《異界の聖なる岩清水》、《聖星水》、《聖水》の三つ。


「岩清水がクラスⅣで他二つはⅤか」


 クラスはより高い方がいいと思う。

 ただ……引かれそうな気もするんだよな。


「うーん、どうする?」

「にゃん」


 途方に暮れる俺をラジエルが気遣わし気に見上げていた――。



「ただいまー」

「にゃん」


 俺達は帰ってきた。

 水筒の中身は充填済みだ。


「おかえりなさい」


 マァが笑顔で迎えてくれる。

 ムフフな事故は当然起きていない。

 門から出る前にラジエルに確認してもらったからな。


「で、どうだったのかしら?」


 マァは期待するような目で俺を見てくる。


「はい、これ」


 腰に取り付けていた水筒を慎重に外し、そっとマァに手渡す。

 緊張で手が震えてしまったのは気のせいだ。


「ありがとう! 楽しみにしてたのよね」


 マァは声のトーンを一つ上げると、水筒を眺め始める。


「やっぱり見た目も素晴らしいわ。前よりも色合いも彫刻も美しい……し?」


 どうやら異変に気付いたらしい。

 食い入るように水筒を見つめている。


「ねぇ」

「う、うん」

「私、説明が必要だと思うの」

「そうだよね」


 こちらに戻る前に鑑定はしたが、念のためにもう一度鑑定する。



《ヌウンの水筒》クラス:Ⅴ 品質:優

・水の力が宿る石で作られた水筒。スキル名に水が入る者のみが装備可能。破壊不可。【液体生成】を発動出来る。


【液体生成】クラス:Ⅴ

・装備スキル。スキル発動を願い水筒の蓋に触れる事で、容器内に聖星水を生み出す。



 結局、中には聖星水を入れてきた。

 正直かなり悩んだが、同じクラスⅤなら聖水より応用が利きそうな聖星水の方がいいと判断した。コップで注いだ直後、見た目と共に名前が空の水筒からヌウンの水筒へ、クラスがどちらもⅣからⅤへ変わっている。

 装備のクラスが変化したのには俺も驚いた。あくまで予想でしかないが、中に入れた聖星水のクラスの方が高かった結果、本体である水筒のクラスが引き上げられた可能性がある。

 見た目の変化としては彫刻がより細かく豪華になったのと、蓋の色が乳白色から艶のない黒色になっている点が挙げられる。筒の乳白色と相まって、ツートンカラーで中々お洒落だと思う。

 口ではつらつらと経緯を説明しつつ、ラジエルを撫でる手が止まらない。

 

「ふぅーん」


 マァが俺の説明(いいわけ)を一通り聞き終えると、また水筒を眺め始める。


「ど、どうかな? 聖水にもなるし」


 あれだけ聖水に食いついていたマァだ。

 聖星水は聖水にも変化する。

 見た目や中身は違うが、マァの要望にはかなっているはずだ。


「んにゃ」


 変な汗が止まらない俺はラジエルの声にハッとする。

 焦りすぎて撫でる手が雑になっていたようだ。


「ごめん」


 サラサラした白毛を優しく撫でる。

 ラジエルはそれ以上鳴く事はせず、再びスヤスヤと眠り始めた。

 じんわりと手から伝わる体温に徐々に落ち着きが戻ってくる。


「いいわ!」


 無音の時間が過ぎ去った後、マァがいきなり声を上げた。

 驚いた俺は身体をビクつかせてしまう。


「聖星水は初耳だけれど、どんな液体にも変わるって最高じゃない!」


 水筒を捧げ持つとマァは続ける。

 どうやら喜んでいるようだ。


「だ、だよね」

「しかもクラスⅤになって戻ってくるだなんてっ」


 入れた中身でクラスが変わるなら、クラスⅣならそのまま、ただの水ならクラスは下がっていたかもしれない。

 じゃあ聖水のクラスⅤを入れればと思わないでもなかったが、聖星水の誘惑には抗えなかった。


「ありがたく使わせてもらうわ!」


 マァは腕を下ろすと、腰のベルトに水筒を付け始める。


「どうにかなった……か」


 胸を撫で下ろすと俺はそっと呟いた。

よろしければブックマークの登録と高評価をしていただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ