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『  』と呼ばれた少年  作者: リフ


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第22話 集まるレア物達

「えっと……コホンッ」


 マァは話し過ぎたと思ったのか、バツが悪そうに咳払いをした。

 そして一転、真剣な顔になる。


「とにかく現状は把握したわ」

「ならよかった」

「他の予定は一旦中止ね。今日はもう装備を見て回る日にしましょう」

「これと同じような装備を探すって事?」


 机の上に置いたままの短剣を見る。


「そうよ。同じようなダンジョン装備がまだあるかもしれないわ」

「服はどうしたらいい?」


 俺ジャージなんだけど。


「途中で買えるわよ」

「それならまぁ」


 必要な物は揃いそうだ。

 短剣の鞘とか腰に差すためのベルトも欲しいし。


「じゃあすぐに行きましょう!」


 マァはウキウキしながら部屋を出ていった。


「ちょっと待って!」


 膝上のラジエルを優しく鞄に入れると、すぐにマァの後を追った。



 昼食もそこそこに店を回っていた俺達は、日が落ちる前に宿へ戻った。

 途中から荷物が持ちきれなくなってこっそり異界に入れていた程だ。

 人目に付かない場所を探すのに苦労したな。


「こんなにあるとは」

「そうねぇ」

「にゃ」


 杖やローブ、剣帯に鞘、そして水筒。

 これらが街にあるお店を回って買い集めた品だ。


「でも思ったより普通のダンジョン装備も多かったな」

「そうね。分けるだけでも一苦労だったわ」

「にゃ」


 お店を回る中で聞いた情報として、最近ダンジョンで出たアイテムが大量に売りに出されているそうだ。何でもちょっと前に国が踏破したダンジョンがあったそうで、稀にしか見つからないはずの宝箱が異常に多かったとか。

 ただ、中身はクラスが低かったり品質がよくない物が大半だったらしく、国が持て余して各街の商店に仕入れないか打診してきた。そもそもダンジョン装備自体があまり出回らない事とまとめ売りで格安だった事から受けたお店も多かったらしい。


「早めに気付けてよかった」


 大量にダンジョンのアイテムが流通したという事は単純にそれだけ調べられる母数が増えた訳だ。

 鑑定するのは大変だけど、その分当たりの数も増えているはず。


「もう一度確認するか」


 机の上に並べた五つの装備を鑑定する。



《雑木の杖》クラス:Ⅰ 品質:劣

・雑木で作られた杖だったもの。状態が悪く杖としては使用出来ない。ただし、適性のある者の手に渡ればその限りではない。


《赤糸のローブ》クラス:Ⅰ 品質:劣

・赤糸で作られたローブだったもの。状態が悪くローブとしては使用出来ない。ただし、適性のある者の手に渡ればその限りではない。


《獣皮の剣帯》クラス:Ⅰ 品質:劣

・獣皮で作られた剣帯だったもの。状態が悪く剣帯としては使用出来ない。ただし、適性のある者の手に渡ればその限りではない。


《卵殻の鞘》クラス:Ⅰ 品質:劣

・卵殻で作られた鞘だったもの。状態が悪く鞘としては使用出来ない。ただし、適性のある者の手に渡ればその限りではない。


《石の水筒》クラス:Ⅰ 品質:劣

・石で作られた水筒だったもの。状態が悪く水筒としては使用出来ない。ただし、適性のある者の手に渡ればその限りではない。



「うん、店の時と変わりはなしと」


 短剣の時と同じで変化する条件は分からない。


「じゃあマァからどうぞ」

「ええ、やってみるわ」


 マァは元々杖を装備していたのと、ローブも着ている。

 装備を更新出来ればいいんだけど……変化しないな。


「反応しないわ」


 残念そうな表情で呟く。

 ローブはそのままでいいと思うけど、杖の方は新しく買うしかなさそうだ。

 次々に装備を試していき、最後に水筒を持った時だった。


「おおっ!」

「きゃっ!」

「にゃ」


 マァの手の中で淡い光を放つ水筒。

 俺達の視線を集める中、徐々にその姿を変えていった。


「綺麗だな」

「綺麗ね」

「にゃん」


 光が収まるとそこには、美しい彫刻が施された乳白色の水筒があった。

 変化の過程で元々あった汚れや欠けはなくなったらしい。

 その水筒を鑑定する。



《空の水筒》クラス:Ⅳ 品質:優

・水の力が宿る石で作られた水筒。スキル名に水が入る者のみが装備可能。破壊不可。【液体生成】を発動出来る。


【液体生成】クラス:Ⅳ

・装備スキル。スキル発動を願い水筒の蓋に触れる事で、最初に入れた液体を容器内に再び生み出す。



「おぉ」

「ねぇ、どう変わったの?」

「にゃ」


 俺は視線に促されるままに鑑定内容を説明する。


「……」

「にゃん」


 話し終わるとラジエルは俺の膝の上で丸くなった。

 内容を確認出来て満足したらしい。

 その頭をゆっくり撫でつつ思う。


「これはマァ専用だな」


 【水龍】に反応したんだろうし、マァが使うのが一番いい。

 そもそも俺は水に関するスキルがない。


「そうみたい。こんな簡単にクラスⅣが手に入るなんてね」


 マァは腰に差した短剣とは反対側のベルト部分に下げた。

 そして歩いたり小さくジャンプしたり、違和感がないか確かめている。

 見ている限り邪魔になってはいなさそうだ。


「うん、大丈夫そう」

「似合ってるよ」

「あら、ありがとう」


 くるりと回って見せてくる。

 うん、本当によく似合ってる。


「まずは最初に入れる液体ね。何がいいかしら……」


 マァはうんうん悩み出す。

 スキルの説明によればやり直しもきかないらしい。


「ただの水じゃもったいないわね」

「俺も何か特別な液体の方がいいと思う」


 普通の水はなぁ。


「毒液とかかしら? 水龍に混ぜて相手に……」


 発想が怖すぎる。

 生き物相手なら有効ではあるんだろうけど。


「でもそうなると……」


 マァはブツブツと呟きながらああでもないこうでもないと悩み続ける。


「んー」


 俺も考えてみる。

 まず液体なら何でもいいんだよな。

 持ち運べて色んな事に活用しやすい液体。


「変なのしか浮かばないぞ」


 ミルクセーキとかミックスジュースとか。

 そんな飲み物系しか出てこない。


「他に何か……」


 そういえば俺の異界にも液体はあったような……。


「海水じゃなくて……あ、岩から出てたやつ!」


 あれは傷も治るしクラスも高かった。

 最初に入れる液体候補としては中々いいのでは?


「あのー」

「うーん、うー……ん?」


 俺は唸り始めてしまったマァに声を掛ける。

 これ以上は悩み過ぎて頭から煙が出るんじゃないか?

 そう思いつつ、試しに異界で飲んだ水について伝えてみた。


「!」


 マァは目を見開くと固まってしまった。

 そんなに驚く事かな。


「大丈夫?」

「っ」


 声掛けには反応したけど表情はそのままだ。

 そしてこちらへにじり寄ってくる。


「ちょ、ちょっと」


 絶対逃がさない決意を感じる。

 何か怖くなってきたぞ。


「あの――」

「聖水! 聖水じゃないの!!」

「にゃ!?」


 血走った目で叫ぶマァ。

 俺はすぐにマァの両肩を手で押さえる。

 これ以上近づかれても困る。

 膝の上で寝ていたラジエルも起きちゃったし。


「落ち着いて!」


 グイグイこちらに顔を寄せてくるマァを何とか離す。


「……ごめんなさい、少し興奮してしまったわ」


 頭を下げるマァ。

 まだ息は荒いが正気には戻ったみたいだ。


「そんなに?」


 ラジエルを撫でながら訊く。

 行くまでに時間は掛かるけど、飲もうと思えばいつでも飲めるし。

 それに結構水量も多かった。

 効果は凄いと思うけどここまで興奮するかと言われれば……。


「興奮するに決まってるじゃない! 聖水なのよ!」


 またマァのテンションがおかしくなったので、落ち着かせつつ事情を聴く。

 まず、聖水とは伝説で語られるような代物である。

 今の世界に本物は存在せず、聖水と呼ばれている物は残っているが名前だけらしい。実際はスキルで作られたただの回復薬だそうだ。


「そうなんだ」

「そうなの。だから聖水が実際にあるなんて考えもしなかったのよ」


 マァは話している内に大分落ち着いてきた。

 俺はこの世界の常識を知らないからな。

 見つけた時は驚いたけどここまでじゃなかった。


「感覚が麻痺してるのかも」


 聖水が実際にあると知ったら、普通ならマァみたいに興奮するんだろう。

 でも俺は心のどこかで思ってしまったんだ。

 ここは地球じゃない、異世界なんだからって。

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