第20話 大当たり装備と真剣な話
「欲しいのを見つけた」
俺は悩んだ末、マァにお願いしてその短剣を買ってもらうことにした。
「本当にこれでいいの?」
マァは不思議そうな顔をしていたが、俺が頷くと手に持った。
「じゃあ私はこれを」
マァは最初に見た壁に掛かっていた短剣も一緒に購入した。
早速腰のベルト部分に鞘ごと取り付けている。
「一旦出ましょうか」
買い物を終えた俺達は店を出る。
古の短剣は鞘がないからそのまま手に持っている。
後で布でも巻けば保管も問題ないだろう。
「とりあえず木の棒とはお別れね」
森からの付き合いだった木の棒はお店の方で処分してもらうことになった。
買ってくれたサービスらしい。
「これからどうする? 一旦持って帰る?」
「いや、ちょっと先に試したい事がある」
店から離れつつ人目に付きにくい場所を探す。
次の目的地は服や防具を扱う店だから、そこに着くまでにやっておきたい。
「お、あそこよさそう」
次の店に向かいつつ探していると、細い脇道の先に小さな広場が見えた。
人もいないしちょうどいい。
「お願いがあるんだけど」
広場に入るとマァに人が来ないよう見張ってもらった。
手に持ったままの錆びた短剣を装備しようと意識する。
すると短剣が淡い光を放ちながら姿を変え始めた。
「やった!」
「えっ何!?」
事情を知らないマァが声を上げる。
確かにいきなり光り出したら驚くか。
正直俺だって驚いてる。
鑑定にはどうなるかは書かれてなかったし。
「これは……」
光が収まると、美しい青白い地金を持つ短剣が現れた。
剣身は両刃で鋭く、中心部分に真っ直ぐ伸びる溝がある。
柄は金色で流れるような彫刻の紋様が走っていた。
俺は生まれ変わった短剣を鑑定してみる。
《星辰の短剣》クラス:Ⅴ 品質:優
・星々の力が宿る星鉄で作られた短剣。短剣術を持つ者のみが装備可能。破壊不可。【星虹の一撃】を発動出来る。
【星虹の一撃】クラス:Ⅴ
・装備スキル。スキル発動を願い発声する事で亜光速の突きを放つ。発動には100SPが必要。何人たりともその一撃を妨げる事は出来ない。亜光速時には発動者及び発動者の所有する物品は星の力で保護される。
「わぉ」
何これ。
クラスもそうだけど効果もヤバい。
【星虹の一撃】って何だ?
亜光速って確か光速に近い速度って意味だったはず。
「大丈夫?」
先に驚きから帰ってきたマァが心配そうに俺の顔を覗き込んでくる。
「大丈夫大丈夫」
本当は大丈夫じゃないけど、自分に言い聞かせながら心を落ち着けていく。
【一界一城の主】の時も驚いたけど、今回は別の意味でも驚いてる。
「あの中にこんな装備があるなんて」
投げ売り品の中から良品を見つける。
こんなにいい装備が出てくるなら嵌まってしまいそうだ。
ただ、ダンジョンの出現自体が稀だって話だし、装備が売られる事もあまりないかもしれない。
これは今後も見つけたら確認するべきだな。
「綺麗になったわね。変化したんだし何かスキルも付いたかもしれないわ」
マァによればこの現象は極稀にではあるが起こるものらしい。
珍しすぎて一般にはほとんど知られておらず、マァが知っているのはたまたま昔読んだ本に書かれていたからだそうだ。
「どんな武器なのかしらね」
マァが短剣をじっと見つめる。
俺は鑑定があるから分かっている。
伝えるべきか……。
「うーん」
「鑑定しに行く?」
斡旋所の鑑定玉はお金を払えば身分証発行以外の時も使えるらしい。
「そうだなぁ」
「お金のことは気にしなくていいのよ?」
マァは俺の反応を見て、遠慮していると思ったのか声が優しくなった。
「あー」
これに関しては話すべきか。
ポケットに入れた鑑定玉の感触を確かめる。
もっと期間を置いてからと思っていただけで、マァには話そうとは思っていた。
いくら命を救われた対価とはいえ、俺が黙っているせいで不必要な出費を強いるのはよくない。
十五歳の女の子に宿代も武器代も出させておいてこれ以上は流石に、な。
それに俺の気持ち的にも秘密を共有する仲間がいてくれた方が助かる。
大丈夫だとは思うけど、念のため他の人には言わないようにお願いしよう。
「それなんだけど」
俺は鑑定玉についてマァに話した。
最初は驚いていたマァもクラスと品質、そして効果を聞くにつれて目が据わっていく。
そして全てを聞き終わった時点でジト目から表情が動かなくなった。
「拾うのはいいのよ。ダンジョンで亡くなった人の物は基本的に拾った人に権利があるから」
俺が話し終わるとマァは言った。
国の紋章や名家の家紋が入っていない限りはね、とマァは続ける。
「ただその鑑定玉は希少すぎて表に出せないわ」
マァは俺がポケットから取り出した鑑定玉を見て言う。
「小さいから隠し持てるし、見れる情報も多い。私が知っているのはクラスⅣが最高だけどそれだってもう少し大きいし、それに私が元いた国にも一つしかないのよ」
見つかったら確実に国売るよう言われるという。
それはこの国でも変わらないだろうと。
「だからメグルが持っているのを黙っていたのは正解だわ。知られたら無理やり回収されるかもしれない」
マァはジト目をようやく止めると、今度は真剣な表情で俺を見る。
「私は誰にも言うつもりはないけど、どこから話が漏れるか分からないわ。だから今まで通り他の人には隠しておいて」
「……分かった」
マァの言葉に俺はそう返すしかなかった。
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