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『  』と呼ばれた少年  作者: リフ


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第1話 まどう図書館

「んん?」


 気が付くと場所が変わっていた。

 さっきは白い部屋だったが、今度は灰色の部屋だ。

 そこに俺は腕を振り上げたまま立っている。

 微妙に埃っぽいここは、どうやら長方形の石のブロックを積み上げて作られているようだ。

 俺は腕を下ろすと周囲を見る。


「意外と明るい……壁が光ってる?」


 言葉が勝手に漏れ出る。


「出口は一箇所だけ」


 ちょうど部屋の中心に自分は立っていて、視線の先には部屋から出る通路があった。


「ぼろぼろだな」


 この部屋もそうだが所々崩れている。


「早めに出ないと危ないかも」


 俺は意を決して部屋から出ると歩き出した。

 足元がジャリジャリする。


「あ、靴がない」


 衣服は上下黒のジャージのみで、寝ていた時のままだ。

 足裏から伝わる温度感や砂の不快な感触が現実を教えてくる。

 走ってもいないのに動悸がしてきて、身体もじっとりと汗ばんできた。


「これって夢じゃ……いや、まさか」


 ブツブツ呟きながら通路を進む。


「もしかして異世界転移とか? ハハ」


 嫌な予感が脳裏を(よぎ)る。

 もし異世界転移なら、こんな遺跡みたいな所にたった一人でほっぽり出された事になる。


「せめて誰か説明を――」


 そもそも人はいるのだろうか?

 周りを見る限り文明自体はあると思う。だがそれが人によるものかは分からない。

 仮に意思疎通が出来る存在がいて、ここが家ではなく遺跡だとする。この場合、外の世界は一体どういう世界なのか。

 原始的な世界よりも高度な文明が支配する世界の方が不味いかもしれない。見つかったら実験材料か、最低でも監視対象にはなるはず。


「最悪だ」


 俺はゆっくりと歩きながら考えをまとめていく。幸い壁全体がぼんやり光っているので(つまづ)いたりはしない。

 希望があるとすればあの箱から何を引けたかだ。転移先を決めるためとかでなければ、引くことで何らかの能力やスキルが得られた可能性はある。


「んー」


 俺は中身を引いた方の手を見る。

 見た目は特に変化はないな。多分装備とか道具も違う気がする。身に着けているのはジャージだけだし。

 正直、説明なしの転移であれば地獄だ。意味が分からない。


「ふぅ……落ち着け、落ち着け」


 胸に手を当て、混乱しそうになる自分を戒める。

 心音が少し落ち着いてきた。


「……ん?」


 慎重に歩いていた俺の視界の端に白い何かがある。

 そっちを見ると俺は思わず声を上げてしまった。


「わお」


 そこにあったのは人骨だった。

 その骨は割と長い間ここにあったようで、着ていた服は荒れ果て、手に持った剣は錆だらけであまり近寄りたい状態じゃない。

 ただ、側に落ちている皮の鞄はある程度綺麗な状態で残されている。


「骨ならギリギリどうにか。死体だったら吐いてたかもな……」


 近くに寄りしばらく手を合わせると、その鞄を探る事にした。

 持ち主には申し訳ないが、この世界の手掛かりが一つでも多く必要だ。

 薄ぼんやりと浮かび上がる通路の先を警戒しながら鞄を持ってみる。

 重さはそんなにないな。


「中身は何だろう」


 元の持ち主から少し離れた所に腰掛け、鞄の中身を見ていく。


「ビー玉みたいな玉とサンダルか」


 サンダルは凄くありがたい。

 裸足で外を歩く事なんてないから不快感が凄かったんだ。


「ありがたく履かせてもらおう」


 足の裏を軽くはたき、革製のサンダルに足を入れる。


「よかった。サイズも問題ないな……次はこの玉か」


 俺はジャージで拭った指でビー玉を摘まむと色んな角度から眺める。

 全体は青色でその中に小さな光が幾つも瞬いている。


「何だろうな、これ」


 そう思った時だった。



《鑑定玉》クラス:Ⅴ 品質:優

・星の力が宿る水晶で作られた宝玉。破壊不可。【鑑定】を発動出来る。


【鑑定】クラス:Ⅴ

・装備スキル。スキル発動を願い、対象を見る事で対象の情報を読み取り視界内に表示する。表示された情報は他人には見えない。鑑定可能な対象物の種類や得られる情報の範囲はクラス:Ⅴ、品質:優に依存する。



 目の前に画面が表示される。


「――は?」


 俺はそのまま固まる。

 恐らく表示されたのはこのビー玉の情報だ。名前が《鑑定玉》だしな。

 つまりこれ自体を鑑定したという事。


「消えてくれ」


 しばらく放心していた俺はその情報を消したいと願う。

 すると瞬時にその画面は消えてしまった。

 次に自分の腕を見ながら自分の情報を知りたいと願う。


「いけるか?」



星渡(ほしわたり) (めぐる)

年齢:18歳

種族:異世界人

職業:旅人

SP:100/100

MP:100

固有スキル:【まどう図書館】

通常スキル:

装備スキル:【鑑定】



「うわぁ」


 これが俺のステータス画面ってやつか。

 ただ攻撃力とか防御力とかそういったものはない。


「ただ、鑑定以外にもスキルがあるな……」


 通常スキルは記載がない。

 恐らく何も持っていないからだと思う。


「固有スキルは自分だけのスキルとか? まどう図書館?」


 俺は試しに【まどう図書館】の部分を見ながら知りたいと願う。



【まどう図書館】

・固有スキル。スキル発動を願う事でランダムに本を一冊手に入れる。発動には100MPが必要。本の種類によって様々な恩恵が受けられ、一度手に入れた本は【まどう図書館】に収められる。収められた本はMPを消費せずに貸出・返却が可能。



 ステータス画面が消えて、違う画面が出てきた。

 説明にある様々な恩恵とは何だろう。出来ればすぐにでも確認したい。

 一回分の発動に必要なMPとやらはあったはず。


「MPの項目はっと」


 ステータス画面を出し直すと確認する。

 うん、やっぱり100MPぴったりだ。


「そもそもMPって何だ?」


 すぐに鑑定結果が表示される。



MPまどうポイント

・【まどう図書館】を使用するために必要な値。モンスターを倒すことでポイントが得られる。



「なるほど」


 MPってまどうポイントの略か。マジックポイントとかじゃないんだな。

 でもそもそも『まどう』って何だ。

 魔導とかか……じゃあ何でひらがな表記なんだ?


「――って、モンスター!?」


 俺は急いで説明文中にあるモンスターについて鑑定しようとするが、これ以上画面は開かなかった。多分、無制限にどこまでも鑑定は出来ないという事だ。

 だがこれで少しは分かってきた。この世界にはモンスターがいて、俺とは敵対関係にある。倒さないとポイントが増えないとはつまりそういう事だ。


「マジか」


 俺は画面を消すと周囲を確認する。

 少し離れて人骨がある以外は石壁の通路がずっと先まで伸びている。

 死ぬような罠や敵も周囲には見当たらない。だが死んだ原因は必ずあるはず。

 もしかしたらこの場所はただの遺跡じゃなくて、モンスターが出てくるダンジョンか迷宮だったりするのか。


「最悪だ……」


 そういえば俺、種族も異世界人だった。

 現時点で異世界確定だし、モンスターがいるのも確定。


「俺、生きていけるか?」


 食料も武器もない中、ダンジョンかもしれない場所からのスタート。


「厳しすぎる」


 俺は少しの間天井を見上げる事しか出来なかった。

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