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『  』と呼ばれた少年  作者: リフ


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第10話 マァとの出会い

「まあそうだよな」


 俺は小部屋の前に立っていた。

 ラジエルは隣に浮いている。

 

「宝箱がない」


 二匹目のドジョウを狙って滝裏のダンジョンにも入ってみたが空振りだった。

 そもそも通路の石壁が所々崩れていて、昨日とは見た目からして違っている。

 薄らと壁面がまだ光っていたからここまで来れたが。

 恐らく宝箱を取られて充電期間に入っているか、ダンジョン自体が消えつつあるのかもしれない。


「仕方ない」

「にゃん」


 俺達はダンジョンから出て、川沿いに下っていく事にした。


「道があればな」


 森の中にたまに遺跡らしき物はあるが道はない。

 俺の足音と川のせせらぎだけが聞こえる中、黙々と進んでいく。


 ギャーッ!


「うぉっ!」


 いきなり何かの鳴き声が聞こえた。

 咄嗟に体をビクつかせてしまう。


「鳥か?」


 早くこの森から出たい。

 無理でもせめて武器が欲しい。

 どこかに武器は落ちてないものか。


「お、これなんかどうだ」


 手頃な長さの木の枝を拾い上げる。

 杖代わりにもなりそうな太さの棒だ。

 乾燥していて思ったよりも軽い。


「最悪これで殴るか」

「にゃ」


 ラジエルは一声鳴くと少し前に出た。

 どうやら俺を守ってくれるらしい。


「ありがとう」


 宙に浮いているラジエルに手を伸ばすと頭を撫でた。

 ぴるぴる動いていた耳がそっと横に寝る。


「さ、行くか」


 俺達は気持ちを切り替えると、警戒しつつ森の中を進んでいった。



「んん?」


 川に沿って下っていると、遠くから何か聞こえてきた。


「にゃ」


 ラジエルを後ろに庇いつつ、慎重に近づいていく。

 声を聴く限りどうやら人が襲われているようだ。

 音を立てないように注意しつつ、茂みの隙間からそっと覗いた。


「―――!」

「何すんのよ!」


 男が二人、少女が一人。

 男達の言葉は分からない。

 そっと鞄の中を探り、鑑定玉に触れる。



ロドニー

年齢:28歳

種族:普人

職業:罪人

SP:15/15

通常スキル:【殴打】

装備スキル:


ヘンリー

年齢:26歳

種族:普人

職業:罪人

SP:10/10

通常スキル:【緊縛】

装備スキル:



 まずは男達を鑑定した。

 種族は普人で、見た目は人間そのものだ。

 どっちも日に焼けた肌に髭面で、人相はあまりいいとは言えない。

 茶色の皮鎧を着ていて、腰に剣も差している。


「山賊か何かか?」


 職業が罪人だ。

 少なくとも味方をしたいとは思わない。

 次に少女を鑑定する。



マァ=アナーカ

年齢:15歳

種族:精霊人

職業:水使い

SP:0/20

通常スキル:【水龍】【言語理解】

装備スキル:



 精霊人か、普人とはまた違う種族だ。

 旅装のフードが外れて整った顔が晒されている。

 波打つ青い髪が印象的だ。


「いやいや、そこじゃないだろ」

 

 俺は呟くと確認を続ける。

 職業は水使い。

 こっちは犯罪者ではなさそうだ。

 SPが0になっている。

 スキルで抵抗したのかもしれないな。


「―――」

「そんなのお断りよ!」


 彼女の言葉が分かるのは【言語理解】のおかげか。


「―――!」

「止めて!!」


 男達が剣を抜いた。もう時間がない。

 鑑定玉を鞄に戻し、急いで男達の後ろに回り込む。

 木の棒を相手の股下にそっと差し入れる。

 左手は前で固定し、右手で棒の端を持つ。

 そのまま思い切り棒の端を押し下げた。


「しっ!」


 てこの原理を喰らうがいい! 

 勢いよく棒の反対側が跳ね上がる。


「―――っ!!!」


 慈悲はない。

 男は股間を抑えて崩れ落ちた。

 棒から伝わる感触を振り払い、素早くもう一人の男にも同じ制裁を下す。


「――っ!!!」


 二人目も無事その場に崩れ落ちた。


「何が起きて」

「こっちだ!」


 手を掴むと、そのまま川の方へと駆け出す。

 彼女は何も言わずに手を引かれるままついてきてくれた。

 ラジエルは彼女の後ろを飛んでいる。


「はぁっ、はぁっ」

「はっ、はっ」


 しばらく走ると川縁(かわべり)に出た。

 俺達は止まらずにそのまま川沿いに下っていく。


「身体はっ大丈夫そうっ?」


 彼女を振り返り尋ねた。


「うんっ」


 どうやら怪我はしていないみたいだ。


「にゃにゃ」


 ラジエルも飛びながら周囲を警戒しているが、追っ手の姿は見られない。

 結構強めにやったから、回復するには時間がかかるはずだ。

 それでもなるだけ距離を稼ぐため、その後もしばらく俺達は走り続けた。



「はあっはあっ、ちょっと休憩しようかっ」

「はっはっ、わかった」

「にゃ」


 彼女は胸に手を当てて息を整えようとしている。

 ラジエルは特に疲れた様子はない。


「ふぅっ、さっきは助けてくれてありがとう」


 彼女は俺を見て言った。


「どういたしまして」


 あの状況じゃ誰だってそうする。

 相手も職業が罪人だったし。


「……ちょっと確認したい事がある」


 息が落ち着いたタイミングで声を掛ける。


「ええ」


 彼女は青い髪を整えながらこちらを見る。


「何で襲われてたんだ?」


 どんな経緯でああなったのか一応確認はしないとな。


「それは――」


 話の内容をまとめると、彼女は自分の力を試したくて村から飛び出し、数日かけて隣国からこの国へ来た。

 国境を越えて近くの村にたどり着いたまではよかったが、そこから更に街に行こうとした矢先に男達に襲われた。

 森へ逃げ込み撒こうとしたが叶わず、追い詰められた所に俺が助けに入った。


「なるほど、そういう事ね」


 逃げる途中で武器や荷物もなくしてしまったようだし、俺も武器は木の棒だけだ。

 さっきは奇襲でどうにか出来たが、相手はちゃんとした武器を持っている。


「その街まで一緒に行こうか?」


 提案してみる。

 一人より二人の方がまだ安全なはずだ。


「あなたがいいならお願いしたい」


 彼女は不安そうに見上げてくる。


「ああ、ちなみに街の方向は分かる?」


 この際だ。森の中で迷っていた旅人として振る舞おう。

 一応嘘ではないし。

 本当にこの辺りは知らないからな。


「街は川の先にあると思う。街の中を川が通っているらしいから」


 森の中にも街に繋がる道はあるらしいが、追手の事を考えるとそこを通るのは避けたい。

 俺達はこのまま森を抜けるまで川縁を進むことにした。



 街に向かいつつお互いに自己紹介を終えた。

 彼女からは名前がマァである事、今はSPがなく水を操るスキルが使えない事を聞いた。

 苗字もあったはずだけど、名乗りがマァだけなのは何か理由がありそうだ。

 そこは下手につつかないでおく。

 俺に関しては下の名前と猫を召喚するスキルがある事、遺跡やダンジョンを探索していたら道に迷ってしまったことを説明した。

 途中で何故かラジエルが合いの手を入れるように鳴いていたが、それもマァは真面目に聞いていた。


「あの辺りに都市があったのは知ってる」

「へぇ」

「ただ、廃れてしまって今はほとんど原型を留めていないはずよ。ダンジョンについては初耳ね」

「中はボロボロで宝箱もなかったな」


 最初のダンジョンを思い浮かべながら話す。

 マァは話していると落ち着いてきたのか饒舌になってきた。


「それはもう踏破されたダンジョンね。宝箱を全部回収するか、モンスターを全て倒すとそうなるもの」


 マァは続ける。

 踏破後のダンジョンが消滅するまでの時間はそのダンジョンの大きさに比例するそうだ。

 つまり規模が大きければ大きいほど消えるまで時間が掛かる。

 ちなみに消えた場所はダンジョンが出来る前の状態に戻るらしい。


「よく中に入ったわね。下手したらそのまま生き埋めよ?」

「ま、まあちょっと気になったからな」


 危なかった。

 最初のダンジョンも滝裏のダンジョンも長居したら死ぬところだ。

 しかも滝裏の方は部屋が一つで小さかったし、すぐ消えただろう。


「ダンジョンは星の贈り物だし、出会えるだけでも幸運よ」

「そうだな」


 話を合わせて聴き手に回る。

 ダンジョンは基本的に自然発生するもので、出来た時点で難易度が決まるそうだ。

 そしてモンスターを倒せばSPが増える事があり、宝箱を見つけると便利な道具や装備品が手に入る。


「あなたそんなことも知らないで探索してたの?」

「ははは……」

「装備も木の棒だし、服装もただの服みたいだし」


 マァは遠慮のない視線を向けてくる。


「にゃん」


 そこにラジエルが割って入った。


「確かにラジエル様を召喚出来るのは凄いですが……」

「……ん?」


 ラジエルの名前教えたっけ。

 あと何か俺の時と態度が違うな。


「ラジエル……様?」

「先程直接ご紹介いただいたのよ」


 確かに、俺の自己紹介の時ににゃんにゃん言ってたような気はするな。


「ラジエルの言葉が分かる?」


 俺の場合は何となく意志が伝わってくる感じだ。


「ええ、私には言語理解というスキルがあって――」


 音声言語と文字言語、つまり話し言葉と書き言葉が理解出来るというスキル。

 しかもSPを消費しないスキルだそうだ。

 そのおかげで言語が違う他国でも活躍出来ると国を飛び出したらしいが。


「凄いスキルだ」

「そうでしょそうでしょ!」


 マァは花が咲いたように顔をほころばせる。

 そして何かに気付いたかと思えば急に顔を伏せた。


「お父様もお母様も心配しすぎだわ、さっきはちょっと危なかったけど……」


 こちらに聞こえないようにブツブツ呟く。


「さ、とりあえず前を見て進もうか」


 その呟きには突っ込まずにマァの手を引く。

 そして再び顔を上げたマァとふわふわ浮かぶラジエルと共に街を目指して進んでいった。

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