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『  』と呼ばれた少年  作者: リフ


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第9話 新スキル再び

 丘の上に戻る頃には太陽が真上を過ぎていた。

 時間的には多分昼過ぎくらいだろう。


「時計があればな」


 って言ってもしょうがないか。

 今は太陽の位置でしか時間を把握する方法がない。


「朝起きて夜寝る。今はそれでいい」


 その方が身体も健康になるだろう。


「さ、お昼ご飯にするぞー」

「にゃん」


 ラジエルを降ろすと大きな葉っぱの上に今日の成果を出していった。

 赤、白、黄、そして銀色の火龍果。

 ラジエルはもう手を出してこない。


「もう飽きたのかもしれないな」


 まあ、またオモチャにされても困る。


「さて、どうやって食べようか」


 ドラゴンフルーツであれば半分に切って中身をスプーンで掬えば食べられる。

 しかし、今はサバイバル中でスプーンはおろか切る物さえもない。


「皮は食べられそうにないしな」


 触った感触が微妙に硬い。

 皮ごとは無理だろう。


「トゲの部分は柔らかい」


 試しにその部分をちぎって口に含んでみるが、苦くて食べられたもんじゃない。

 やっぱり皮は無理だ。


「んー」


 ただ切るだけなのにな。

 刃物がないとここまで不便になるとは。


「にゃにゃ」


 胡座の中にいるラジエルがじっと果物の方を見つめ始めた。

 どうかしたんだろうか。


「にゃ!」


 スパンッ!


 鳴き声と共に全部の火龍果が同時に切れた。

 中心に線を引いたかのように綺麗に縦に真っ二つだ。


「は?」


 その光景に一瞬呆けてしまう。

 どうにか現状を把握しようと、ラジエルを撫でながら目の前の結果を眺める。


「なぁ、今のラジエルがやったのか?」


 ラジエルを両手で持ち上げながら問いかけた。


「にゃん」


 ラジエルは赤い瞳をこちらに向け一声鳴くと、手の中からするりと抜け出した。

 そして葉っぱの上の火龍果を食べ始める。


「うーん」


 これはラジエルの力って事らしい。

 もしかして昨日や今日の収穫の時にも使っていた?

 リンゴに掴まって回転しながら捻りちぎっていた記憶しかないんだが……。


「食べよう」


 ラジエルと半分ずつ分け合いながら食べていく。

 今更だが、俺と同じ量食べるのも地味に凄い。

 この小さな身体のどこに入るのか。

 胃がブラックホールなのかもしれない……宇宙猫だけに。


「んにゃんにゃ」


 ラジエルはそんな俺の様子も気にせず食事を続けている。

 それにしても美味そうに食べるね。


「まあ、美味いけども」


 俺もまた一口食べる。

 俺の拳よりも大きな実の中身は外の皮の色と同じ色だった。

 だが赤、白、黄色の実に味の違いはなさそうだ。

 ドラゴンフルーツと味が似ていて、地球の物よりこっちの方が甘味もあってジューシーで美味しい。


「結構好きかもしれん」


 リンゴやナシ、ブドウもよかった。

 だが、この食べ慣れていない柔らかい食感がいい。

 果肉に散らばった黒いゴマみたいな種もプチプチしていて面白い。


「見つけられてよかったな」


 その後は無心で食べ進めていった。


「ふぅ、ごちそうさま」

「にゃん」


 ラジエルもお腹が満たされたようで俺の胡座の中に戻ってくる。

 温かい身体を優しく撫でた。


「切ってくれてありがとな」


 感謝を込めて耳裏をくすぐる。

 ラジエルは目を瞑ったまま気持ちよさそうに手足を伸ばした。


「後はこれだけだな」


 視線を葉っぱの上に向ける。

 そこには俺とラジエルが唯一手を付けなかった銀色の火龍果があった。

 中身は白色、果肉に散っている種も他の火龍果と同じく黒い。


「では、食べましょうかね」


 半身を掴むと皮を避けつつ口に運ぶ。

 柔らかさの中に種のプチプチとした食感。

 そこは他の火龍果と同じだが味は特にしない。

 食欲を削いでくるのは皮の銀色だけだし、中身だけ食べればどうという事はない。

 金リンゴなんか皮ごと食べたからな。


「ごちそうさま」


 なるだけ銀色を見ないように食べ終わるとラジエルを撫でる。

 別に苦行と言うほどでもないが、あまり好んで食べたいとは思わない。


「これもスキルのためだ」


《ポーン! 通常スキルを獲得しました》


 片手でラジエルを撫でつつ、横に置いていた鞄から鑑定玉を取り出す。


「鑑定」



星渡(ほしわたり) (めぐる)

年齢:18歳

種族:異世界人

職業:旅人

SP:22/100

MP:0

固有スキル:【まどう図書館(貸出中)】

通常スキル:【気配遮断】【短剣術】

装備スキル:【鑑定】【一界一城の主】



「よしっ!」


 期待をしつつ詳細を確認する。



【短剣術】クラス:Ⅱ

・通常スキル。短剣の扱いが上手くなりやすい。



「これは」


 短剣の扱いに対して補正がかかるスキルのようだ。

 何か特殊な技がある訳ではない。

 上手くなるための努力も必要だろう。


「当たりだ」


 俺は武器を握ったことがない。

 刃物であれば包丁なら握った事はあるが、あれは武器じゃなくて調理器具だ。

 ずっとこの異界で過ごすなら、もしかしたら武器は要らないかもしれない。

 ただ、これからは外の世界も確認しないといけない。

 ここには文明のぶの字もないから、人として生きていくためには服とかベッドとか解決しないといけない事は多い。

 あのダンジョンにあった人骨から、外には人らしき存在がいる事は確定している。

 もし敵対した時に備えて対抗手段が必要になる。


「問題は肝心の短剣が手元にないって事なんだよな」


 サバイバルをするにしても刃物があれば出来る事は増えるし、戦うにしても最低限武器は必要だ。

 それは理解しているが、まず短剣を入手する時点でハードルが高い。


「拾うのは無理だろうし」

「にゃん」


 考え事に気を取られて撫でる手が止まっていたようだ。

 今度はラジエルの翼部分を優しく撫でながら今後を考える。


「最悪この世界に逃げ込めばいいし、向こうの探索範囲を広げてみるか」


 今は滝周辺しか把握出来ていない。

 川沿いに下っていけば平地に出るとは思う。

 そこにもし人がいるようなら様子を見つつ接触も考えたい。


「動物にも注意だな」


 人もそうだが、動物も川沿いに寄って来る可能性はある。

 それを頭に入れて行動しないと、不意を突かれて怪我をするかもしれない。


「さ、そろそろ行きますか!」

「にゃん」


 俺は黒い渦を発生させるとラジエルと一緒に外に出た。

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