表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/48

05 運命のパレード

 私一人を除いて。

 正確には私の気持ちを除いて。


 相変わらず家族の中では、お母さんと私はシンデレラをいじめる役だけど、本心は違うということになっている。

 お母さんとシンデレラと私は、仲良し母子。それが家族内での認識だ。


 誰も知らない。

 私がシンデレラに二心(ふたごころ)を抱いていることを。


 最初は私もシンデレラのことが好きだった。初めて会った時に、その愛らしさに有頂天になったくらいだ。

 自分は意地悪な義姉だと聞かされてからも、『シンデレラ』の本を読むよい子達のために、悪役を一生懸命頑張ろう。そう思っていた。


 あのパレードの日までは。



 * * *



 私が十二か十三歳の時だったか、町のメインストリートで王室の方々がパレードを行うという知らせが入った。


 噂は町中を駆け巡り、国王陛下や王妃様、王子様が通る時に投げる為の、色とりどりの紙吹雪や花びらを山ほど用意し、皆ワクワクしてその日を待っていた。


 そして空が晴れ渡ったある日、パレードが行われた。


 白い馬に乗り立派な鎧を着た騎士が先導し、美しい馬車が何台も何台も連なって行進してくる。


 その夢のような美しさに、私はうっとりしながら、籠に入れた紙吹雪をせっせと投げかけた。


 お母さんに「今からそんなに投げてしまったら、王様達が通る肝心な時に紙吹雪が無くなってしまうわよ」と笑われたが、どちらにしろ王様一家が通りかかる時、私は紙吹雪を投げることが出来なかった。


 屋根が取り払われた、パレード用の馬車に乗り込んだ、立派な髭の国王陛下。


 今までみたこともないような、宝石がちりばめられたドレスを着た王妃様。そして……


 私と同じくらいの年頃の少女達で構成された《プリンス親衛隊》が「キャ――――!」と黄色い声を上げる。


 その前を堂々と手を振りながら通り過ぎる、笑顔のプリンス・チャーミング。

 この物語のもう一人の主役。


 その王子様の姿に私は釘付けになり、微動だにすることが出来なかったのだ。


 柔らかくウェーブがかったブルネットの髪、その髪と同じ黒い睫毛に縁取られた瞳は、この日の空のような明るいブルー。


 すっと通った鼻筋の下の、清潔感がある少し薄めの口唇は、口角がキュッと上がっている。


 まだ少年の年頃だが、既にすらりと伸びた腕は、大人になった時のスタイルの良さを予感させる。


 沿道の国民(町民)のリクエストに応えて、皆に見えやすいよう、馬車の一段高い所に座って足を組んでいるが、この足も腕に負けず劣らずしなやかで長く、形が良かった。


 瞳の色と同色のブルーのビロードのマントから覗く、真っ白なシルクのブラウスと真珠のボタンは、彼の汚れのない純粋さを象徴しているように見える。


 結局籠に残った僅かな紙吹雪さえ投げることを忘れ、私は王子様に見惚(みと)れていた。

 こんな美しい人、初めて見た。


 …………いや、いる。彼と同じくらい美しい人。


 私の妹、シンデレラ。


 ああ、そうか。

 これが《物語の主人公達》なんだ。


 《こうして二人は末永く幸せに暮らしました》

 それが似合う二人。それが相応(ふさわ)しい二人。


 …………平凡な私とは違うんだ…………


 いや、むしろ本当に平凡な、名もなき存在の方がましだ。


 何といっても私は、シンデレラを()()()()義姉なのだから。


 (きた)る舞踏会の夜、王子様がシンデレラを見染めるその場面には、私も同席する。


 彼は一国の王子としての立場から、会場にいる全ての人に笑顔を向けるだろう。


 でもその笑顔の下で、私を見る時「これが愛しいシンデレラをいじめてきた意地悪な義姉か」と思うのだ。


 絶望しか、なかった。


 この日から、私の心は闇を抱えている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ