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王子様のないしょ話5 王子様の結婚

 さて、ジャボットことシンデレラこと僕の妻にプロポーズを受けてもらってから、結婚式までの忙しさといったら、なかった。


 本来、物語の筋書き通りなのだから、ある程度準備は整っていたはずなのに、ちょっと主人公(ヒロイン)のキャストが替わっただけで、何としたことか!


 性格が穏やかな僕の妻は「仕方がないわ。本当ならレッドカードもののイレギュラーなんだもの」なんて言うが、僕はちょっと納得がいかない。


 結局のところ、ほとんど反対らしい反対はなかったのが救いだが、挨拶回りに忙殺されて、毎日疲れきっていた彼女を見ているのは辛かった。


 そんな時でも彼女は健気に「あなたと結婚するためなんだから、これくらいどうってことないわ」なんて微笑んでくれるのだ!


 ああ、僕の妻は世界一!

 断っておくが、これはノロケだ! 存分に羨ましがってくれたまえ!


 ところで、当初は例の公爵からの横槍を、かなり警戒していたのだが、こちらも肩透かしを食らうほど、すんなりとヒロインチェンジ案件を通してくれた。

 これは本当に意外だった。


 後日、初めて参加したお茶会のあと、妻がうんうんと何度もうなずきながら言った。


「都市伝説が、いい仕事をしたわ」


 何のことかわからなかったが、妻いわく「あの公爵様は、ネコチャンが好きみたい」だそうだ。

 それは知らなかった。

 でもやっぱり何のことか、わからない。


 父親の公爵より、妻にとっては娘の方が厄介なようだ。

 それはそうだ。

 女の敵は女、と聞く。


 しかもこんな事態になった責任の一端は僕にもある。

 そう、一割くらいは僕のせいだ。でも残り九割は公爵のせいだ。


 こんな事態になったことに、親衛隊の少女たちも、勿論妻も、何の責任もない。

 なのに、直接顔を合わせ、いがみあう(?)のは、彼女たち。


 どういうことかというと、妻と《プリンス親衛隊》の、顔合わせのような場がもうけられてしまったのだ。


 わざわざそんな場を作らなくてもよいものを、と思ったが、妻が僕の妃、つまり王子妃として立つ以上、高位貴族である公爵の娘をはじめとする親衛隊メンバーとは、今後も何かと顔を合わせたり、時には共に国のための行事などを協力して行っていく必要があるので、まずは挨拶をしなければいけないらしい。


 可哀想な妻は、顔合わせの会の前夜は、恐ろしさのあまり、ほとんど一睡も出来なかったそうだ。


 しかもその会は、何故か男子禁制だとかで、僕が隣で守ってあげることも出来ない。

 いっそ僕も女装して、こっそり付き添おうかと提案したが、妻から却下されてしまった。


 そして妻が会の場である部屋に通されてしばらくすると、案の定、例の公爵の娘の声が響いた。


(わたくし)あなたなんか認めなくってよ!」


 その直後彼女が部屋から出てくると、そのまま走り去ってしまう。

 いつも公爵家のご令嬢として、完璧なマナーを誇ってきた彼女らしくない、豪快な走りっぷりだった。


 部屋に残された妻と、他の親衛隊の面々は、いたたまれない雰囲気となり、そのままなんとなくお開きになったようだ。


 さぞや怖い思いをしただろうと妻をねぎらうと、予想に反し、彼女は目をキラキラさせて言った。


「私、いつかあの方と、お友達になれそうな気がします」と。

「女の敵は女、でも女の味方も女なんです」

 ……だそうだ。


 妻の勘では、あの公爵令嬢は裏表のない真っ直ぐな人柄で、その勢いのある雰囲気は、彼女の妹、つまり元々シンデレラであった少女に少し似ているらしい。


「私きっと、あの方とうまくやってみせます!」


 ああ我が妻は、何と寛容な心と勇気の持ち主なのだろう……!


 早速、妻を形容する言葉として『愛らしい』と『賢い』に、『寛容』と『勇気』を付け加えねばならない。


 ……で、我が愛する妻よ、何故僕の服の裾を引っ張るのだ?



 そうそう、本編を読んで頂いた皆さんはご存知だろうが、元々シンデレラ役に決まっていたのは、妻の妹だった。

 でも僕が懸念した通り、それは彼女自身の意思ではなく、周囲が勝手に決めたことで、本人はお城での退屈そうな生活には馴染めないだろうと思っていたようだ。


 彼女は確かに目の覚めるような美女で、そのうえ明るくはきはきした性格で、僕も好感はもったが、好意はもてなかった。

 妻は彼女のことを「誰もが魅了される」と言っていたが、僕は彼女に会って「なるほど、美人だねえ」と感心するくらいに冷静だった。


 どんな美人だろうが、人には好みというものがある。心の琴線に触れるか触れないかは、客観的な美しさでは図り切れないのだ。


 僕にとって心に深く刻みつけられたのは、あのパレードの日の妻、当時のジャボット、現在のシンデレラだ。


 まさにあれは運命の一日だった。

 それに聞けば、妻も僕に一目惚れしてくれていたそうなのだ。


 あのパレードを提案したのは誰だったのだろう。思い切り抱き着いてキスしたいくらいだ!

 ……と思っていたのだが、僕がシンデレラに直接会うことの代替案として、公爵が提案したと聞き、口に出さなくてよかったと考え直した。



 さて、その元シンデレラなのだが、今は女海賊Aとして、ピーター・パン町のフック船長の船に乗り込んでいる。

 時々妻に手紙が来るが、相変わらず元気そうだ。


 彼女は物語が動き出した頃、つまり妻の母親が父である男爵と結婚した頃から、物語の筋に沿って家事全般を担っていたそうだが、とても有能なハウスキーパーだったことが判明した。


 というのも………


 というのも、……ああ、また僕はポカをやらかしたのだ!

 妻に! 最も愛する、隠し事なんかしたくない妻に! とても大事なことを言わないまま結婚してしまったのだ!!

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