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王子様のないしょ話3 王子様視点:『運命のパレード』2

 沿道に詰めかけた町の人達に手を振りながら、どこに僕の運命の人がいるのか、ドキドキしながら馬車に揺られていた。


 父と母が乗る馬車に向かって、手を振ったり、紙吹雪をちらしたり、花を投げたりする大勢の人。

 ああ、僕らはこの人たちに支えられて物語を紡いでいくんだな。

 そのことを実感出来ただけでも、このパレードを行った意味があったと思った。


 でもやはり、心はシンデレラを思って(はや)る。


 どこにいるんだろう、僕の運命の人。

 来てくれているよね、シンデレラ。

 ……そもそも、このパレードを見に来ていなかったりして?


 そう思いいたって、ハッとなった。


 そうだよ、シンデレラは父親の再婚相手であるママハハや、その連れ子である義理の姉にいじめられているんだ。

「パレードに行きたい」と言っても、許してもらえなかった可能性がある。


 そう、将来僕と彼女が正式に出会う舞踏会でも、行くのを止められるように。


 なんだか猛烈に頭にきた。

(シンデレラの義母と義姉め! 僕の可愛い未来のお嫁さんをいじめて、僕と彼女が会える機会をつぶすなんて、なんて奴らだ!)


 そんなことを考えながらも、僕は王族として鍛えられているので、表面はにこにこと笑いながら、沿道の人々に手を振っていた。

 でも、もしかしたら目が笑っていなくて、怖い笑顔になっていたかも知れない。

 さっきまで僕らの馬車を追いかけていた子供たちが、僕の顔を見てビクッとしてついてこなくなってしまったから。


 しかし、僕はその怒りが的外れだったことに、すぐ気が付いた。


 僕は見つけたからだ。

 僕の未来の花嫁、シンデレラを。


 パレードが進むうちに、どこからか「キャーーーーーーーーーー!!」という黄色い悲鳴が聞こえてきた。


(ああ、《プリンス親衛隊》だ)

 すぐにわかった。


 彼女たちは、僕が公の場(といってもほとんどが貴族の前限定なのだけど)に出るときや、そのために移動するときに待ち伏せしていて、こんな風に悲鳴を上げる。

 最初に彼女たちから「キャーーー!」と言われたときは、びっくりしてじいの後ろに隠れてしまった。……正直、恐ろしかった。


 そのうちだんだんと悲鳴を聞いても驚かなくなったが、ひそかに(彼女たち、苦手だな……)と思っていた。

 男にとって、女の子の集団が自分に向かってくる(それが例え好意をもっていたとしても)のは、少し怖気(おじけ)づいてしまうものである。

 しかも怖気(おじけ)づいている、ということを気取られてしまうと、『男のくせに』と言われてしまいそうで、それをおくびにも出さないように、演技しなければいけない。


 だから彼女たちに遭遇するのは、苦手だし、苦痛だった。


 それがある時、パレードがあった年から数年経ってからのことだったが、僕は彼女たちの秘密を知った。

 彼女たちの存在意義=『シンデレラの予備』だったのだ。


 公募してシンデレラに決定した少女は、最初から僕の妻になることを前提に応募してきたのだろう。

 でも決定した時の年齢を考えれば、本人がそれをわかっていて自薦したとは、つまり自分で僕の妻になることを選んだのだとは思えない。


 実際初めて会うのは舞踏会の場面だ。その時になって、お互いに結婚相手としてこの先の人生を共に暮らすことは出来ない、と判断することも考えられる。

 そして、物語がそこまで進んでしまったあとで「この相手と結婚したくないから、お話をストップします」とは言えないのだ。


 その場合を見越して、直接何度か接触をもつことのある《親衛隊》のメンバーから、僕が(結婚してもいい)と思う娘を選び、シンデレラとして結婚するという段取りだ。

 すべては物語のため。


 わかっている。

 わかっている、が。


 なんてことをするのだろう、というのが僕の正直な感想だ。

 物語の登場人物は、自分たちの気持ちや人生を、犠牲にしなければいけないのか。


 《プリンス親衛隊》の設立には、例の公爵の後押しがあったという。

 もしシンデレラと僕との間が上手くいかなかった場合、彼の娘が『シンデレラ』の役を掴む可能性がある。それに賭けたのだろうが……


 公爵家の令嬢は美人で教養もあり、親衛隊を統率するカリスマ性もある。ただ、僕の好みとは、言い難い。

 ……でも、そんなことは言えない。


 公爵家主催の舞踏会や、王室主催の園遊会などで、彼女とは必ずと言っていいほど顔を合わせるが、そのたびに彼女の僕を見つめる瞳の中に、僕への好意をはっきりと見ることが出来る。

 でも多分、僕が彼女の思いに応えることはないだろう。


 申し訳ないと思う。

 それはもう、心から。


 だから、《プリンス親衛隊》には、常にある程度距離をとりつつ、しかし邪険にならない程度に話しかけたり、笑顔を向けたりするようにした。


 距離をとれば、悲しそうな顔をするし、接触を図れば期待を込めた笑顔で応える。

 そのどちらも、僕の心を(えぐ)った。



 さて、話をパレードの時に戻すと、当時はまだ彼女たちの秘密を知る前だったので、例の「キャー!」が聞こえてきたときも、ああ親衛隊が来ているんだな、ぐらいの認識でチラとそちらに視線を動かした。


 その時、視界の中に妙な違和感があった。

「何だろう?」

 もう一度、親衛隊を見る。


 しっかりとその方向を見て、違和感の正体に気が付いた。

 あの日、町の人々は、僕たちに向かって思い思いに動き回っていた。

 大抵の人々は手に籠を持ち、そこから紙吹雪や花を投げていたし、小さい子供は父親に肩車されながらこちらに手を振ったり、走り回れるくらいの年の子供たちは、馬車についてきたりしていた。

 とにかくすべての人が、せわしなく動き回っていたのだ。


 その中に、全く動かない人物が、いた。

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