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39 答えは、イエス

「うーん……」

 うなりながら(しばら)く目を閉じて考え込んでいた王子様だったが、おもむろに目を開けると「やっぱり、ジャボットと結婚したい」と答えた。


「今、シンデレラと結婚した場合のシミュレーションをしてみたんだけど、やっぱりうまくいきそうにない。……あ、君がいやだというわけじゃないよ、シンデレラ。気を悪くしないで」

「私は平気でーす」


「うまくいきそうにないって、どういう意味ですか?」

「そのままだよ。多分どこかでひずみがくる」


 王子様はシンデレラと私、両方の目を見ながら説明した。


「僕は今日になるまでずっと、ジャボットのことをシンデレラだと思い込んできた。僕の結婚相手はジャボットだと信じてきたんだ。……それで今日その勘違いが発覚して、本物のシンデレラを気に入って結婚したとして、どうだろう。上手くいくかな?」


「さあ、男によるんじゃないかな」


「君は大丈夫なんだね?フック船長。……でも、多分僕はだめだ。最初は上手くいったとしても、いつの日か必ず、ジャボットのことを思い出す。シンデレラの向こうに、ジャボットの面影を見てしまう。どうしてジャボットと結婚しなかったのか、と後悔する日がきっと来る。……ジャボットと結婚する夢を見ていた長い時間が、きっとシンデレラとの生活に影を落とす」


 シンデレラに聞いた。

「どうだい? 君はそんな結婚生活、どう思う? 夫が内心他の女、それも自分の姉を思っているなんて」

「最悪ね!」


 気持ちがいいほどハッキリとシンデレラが答える。


「そもそもその場合って、私はお妃様なんてガラじゃないって言ってるのに、無理矢理結婚させられるんでしょう?その挙句に『やっぱりお姉様がよかった』って思われるなんて、地獄じゃない!!」


「だろう?  シンデレラも地獄、僕も地獄。そして、ジャボット。もし僕がシンデレラを選んだとしたら……泣くよね? 泣いてくれる、よね?」


「……泣きます」


「ほら、三人とも不幸だ!」

 言葉に反して朗らかに笑いながら王子様が言う。


「この先に何が起こるかなんて、わからない。でも少なくとも、今確実に後悔するだろうとわかっている未来を選ぶ必要は、ないんじゃないかい?」


 王子様の言葉は「ここはお城です」とか「今は夜です」とでもいうように、明快だった。


「では、もう一度言うよ。……まあ断られても、何度でも言うんだけど」


 王子様が、再度私の前に(ひざまず)いた。

「僕と、結婚してください」


 私は、ついにその手を取る。

「……はい……」


「やった――!」

 大騒ぎするシンデレラと、シンデレラのハイタッチにつきあわされるフック船長を背景に、私たちはキスをした。


 さっき転んでしまって出来なかった分、そのキスは少し情熱的だったかも知れない。

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