37 みんな冒険者
「ねえ、シンデレラ。聞いてもいい?」
「なに?」
「あなた、今まで色々な国の冒険譚に夢中になってたでしょ? 今は海賊がいいとして、また他のものに興味が移ったら、どうするの?」
フック船長が小さくビクッとしたが、すぐ素知らぬ顔に戻る。
「う――ん。料理のレパートリーを変えるように簡単にはいかないから、ある程度は海賊業を頑張るけど、どうしても他に行きたくなったら、出ていくわ」
「おい」
これにはさずがに知らん顔を通すことが出来なかったのか、船長が突っ込んだ。
「人の船を腰掛け代わりにするな」
「腰掛けのつもりはないわ! 船に乗り込んだら、船の仕事を一生懸命頑張るわよ」
確かにこの子なら、何をするにも全力で頑張るだろう。でも……
「それにしたって、あなたに海賊なんて務まるの? 家族も誰もいない世界に出ていくなんて、怖くないの?」
「怖いわよ、少しね」
今までしょっちゅうお転婆をして、あちこちに生キズを作ってきたシンデレラだけど、海賊なんてそんなの比ではないくらい危険じゃない?
「何が起こるか、わからないのよ?」
「そこがいいんじゃない!」
ニッ……と不敵に笑うシンデレラは、もう半分海賊になってしまったかのようだ。
「それに、冒険に出てもそうじゃなくても、先のことなんて、誰にもわからないじゃない?」
言われてハッとした。
確かに、今日ここに来る前、こんな展開になるなんて思いもしなかった。
この私が、王子様と互いに思いあっていて、こうしてプロポーズを受けるなんて。
シンデレラが王子様のお妃じゃなくて、海賊になろうとしていたなんて。
先がわからないという意味では、海賊も、王子様との結婚も同じだ。
「結婚も、冒険みたいなものかもね……」
「そうそう」
シンデレラときたら、一国の王子様との結婚を、子供が裏山に探検に行くみたいな調子で言うんだから。
でも彼女は、その裏山には竜が住んでいる洞窟があることも知っている。
知っていて「お姉様なら大丈夫」と、背中を押してくれている。
そして竜と戦っていくには、相棒である王子様を信頼できるかどうかにかかっている、とも思った。




