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03 シンデレラの条件

 父は男爵という爵位を持つ貴族で、それほど領地は広くなく、従って財産もそれほどないが、永く続いている由緒ある血筋なのだということや、奥様は妹を産んですぐ亡くなられたので、不憫(ふびん)に思った父は母親似の娘のことをそれはそれは可愛がっていることなどを聞いた。


 ちなみに私の父が“死んだことになった”というのは、やはり本当に亡くなったのではなく、他の女と浮気して行方を(くら)ませてしまったらしい。


 そのままの設定でも物語の進行としては問題はないものの、『あまり子供向けでないオプションが増えても…』ということで、死んだことになったそうだ。


 そして父は奥様が生前「私達の娘の世代は丁度ヒロイン選別の年頃ね。もし私達の娘がヒロインに選ばれたら素敵でしょうね」と言っていた言葉を思い出し、応募してみたら見事に当選してしまったらしい。


 当時シンデレラ募集の条件として挙げられていたのは



1.金髪であること


2.瞳の色が宝石(種類は問わない)のようであること


3.誰もが認める美少女であること



 これに当てはまる少女は結構な数がいたらしいが、その中でも抜群に器量良しだったのが妹だったと、父が嬉しそうに自慢気に言っていた。


 なるほど、母が私を応募させなかったわけだ。


 私の髪の色は結構明るめの色ではあるが、金髪というより亜麻色だし、瞳は緑色だけどエメラルドというよりそこらの草みたいな色だ。


 誰もが認める美少女という三つ目の条件にはかすりもしていない。


 ちなみにこれら物語の設定と私達の現実? の世界の設定をすり合わせるために各々の町に《物語進行委員会》という陰の組織が存在し、あまり物語から逸脱(いつだつ)しそうになると注意が来る。


 軽めの注意でイエローカード一枚、イエローカードが五枚集まるとレッドカードが来て違反キップを切られるそうだ(何それ)。


 余りに大きくストーリーを変えるような行いをすると、イエローカードを飛び越えてレッドカードを切られることもある、らしい。


 そしてイエローカードは注意を受けるだけで済むが、レッドカードをを切られると大変なことになる、らしい。


 でも、実は何が起こるのか、誰もわからない……らしい。


 これまでそれほど大きな逸脱を行った者はいなくて、せいぜいがイエローカードを何枚か切られる程度で、レッドカードには至らない程度の枚数で済んでいるのだとか。


 レッドカードを切られるくらいの逸脱(いつだつ)を行った時にどんな罰が与えられるのか、それはもう都市伝説となり恐ろしい刑罰(けいばつ)がまことしやかに(ささや)かれている。


 ある者は「ギロチンにかけられる」と言い、ある者は「車裂(くるまざ)きの刑だ」と言う。


 またある者は「裸に()かれて体中をミミズに()わせる」と言い、更にある者は「逸脱者の近くにネコチャンを置く。ただし絶対に手に触れられない距離をキープさせられ、どんなに触りたくても触れない、どんなに吸いたくても吸えない、拷問のような一生を送る」と言う。


 どれも背筋が凍るような話だ。


 はっきりと刑罰がわからない分、皆の想像力が掻き立てられ、どんどん恐ろしい妄想に取りつかれているようだ。


 でも妄想を膨らませられるのは、所詮あまりストーリーと絡むことがなく大きな逸脱をしそうにない立場の人だから、楽しんでいるだけなのだと思う。


 物語に直接的に深く関わっていて、且つその役割によるダメージが大きい人間にとっては、とても楽しむ気にはなれない。


 カードを切られないよう、冷や冷やしながら日々を送るだけだ。

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