第3話:テンプレのかたまりが、やってきた
◇
──魔法学の授業中。
「魔法とは精神を集中し、詠唱により現象を発生させるものです。使う属性により──」
教師の声が続く中、わたしはノートに“パン=右でもふわふわ”と書いていた。
すると、隣のナツキがぼそりとつぶやいた。
「チャクラの方が強くね?」
「……は?」
「だってさ、詠唱とかめんどくね?気で燃やせばよくね?」
「……それ、気じゃなくて気のせいでは?」
◇
「はあい! お静かに! 授業中ですわよ!」
声と共に、ドアが開く。
そこに立っていたのは、完璧な髪型に完璧な笑み、完璧なフリルをまとった少女。
「お待たせしました、私こそが――」
ドンッ!!
突如、窓ガラスが割れた。風と共に誰かが飛び込んできた。
「すまぬ、遅れた! 魔道門が閉ざされていた故!」
刀を背負い、着物を着た謎の侍女――もとい、女侍が着地と同時に正座。
教師は言った。
「……授業、崩壊したな」
◇
教室がざわつく中、ナツキがフェイント気味に立ち上がる。
「おい! なんだこのカオス!? いや、チャクラとか言ってた俺が言うのもアレだけどよ!」
アリシアがスッと前へ出る。
「私はアリシア・フェルナティス。こちらのクラスの“悪役令嬢”枠を担当させていただく者ですわ」
「……そんな役職あったんだ?」
ナツキが引き気味で呟く。
アリシアは余裕の笑みで、リヴィアの方を見る。
「できれば、このクラスの悪役令嬢の方と交流を……」
「パンは右でも左でも美味しいです」
「……交流は、またの機会にいたしますわ」
◇
そのとき、窓から乱入してきた女侍がすっと手を挙げた。
「我こそは、東の国より来たりし者。名はアヤメ。魔法は好かぬ。武士道は左から入るもの」
「は?」
「すなわち、フィージョンは左より!」
「ちょっと待って! フィージョンは別の話だよね!?」
ナツキが突っ込む横で、セラがメモを取り始めた。
「なるほど……武士道は左から入る……」
「セラ、信じすぎっ!」
◇
【質問コーナー】
Q. アリシア様はいつ断罪されるのですか?
アリシア「失礼ですわね」
リヴィア「パンを焦がしたら……?」
ナツキ「罪、軽すぎだろ!」
◇
【ED風即興作詞】
♪『魔法は詠唱 チャクラは呼吸
でも一番強いのは 転校生のメンタル』
♪『悪役だらけの教室で
パンの話だけ浮いている』
歌:アリシアとリヴィア(女侍コーラス)
作詞:ナツキ(ノリでやった)