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あいつがラスボス

健真「ラブコメ主人公ってやつは、帰宅部だけどスポーツができるものだろう。モテるために運動部に入るヤツは三流だ」

巧矢「若旦那様は部活に入るおつもりでしょう?」

「健真様、朝ですよ」

「んあ、今朝は爽やかだな」

 窓から朝日が注ぐ。日曜はいつも心が快晴だが今日は空も晴れているな。

 俺の朝は巧矢のモーニングコールで始まる。休日でも生活リズムを整えるためだといって同じ時間に起こされる。

「あれぇ、お前なんで制服着てるんだ」

 寝ぼけた目でハッキリしないが巧矢らしくキッチリと着こなしている。

「本日はサッカー部の見学です」

 そうだった、ぼんやりとした頭が活性化すると同時に視界もハッキリとする。巧矢の表情は……いつも通りだな、感情が露わにならないわりに愛想が良い。

「9時に家を出ますよ。競技場へは10時に到着します」

 この日曜、サッカー部は市の競技場で練習試合をするので、俺はこれを見学する。

「ん、お前そのでかいバッグは?」

「まだ完全に思い出せてないようですね、我々も試合に参加するんですよ」

「おおう、思い出した。俺には不釣り合いなショボい競技場だが、まあ満員の観客を熱狂させてやるか」

 巧矢は俺の大言壮語をスルーにした。

「ですので今朝はしっかりと朝食をとってください。僕はもう頂きましたので」

「男同士で飯食ってもウマくないが、寂しいじゃないか」

「昼の弁当も作らないといけないので」

 あ、そういえばエプロンもつけてる。いつものことだから気にしてなかった。俺はとりあえず動き出す。


 家から競技場への移動時間は……なんてことないな。電車の中ではスマホで読書(漫画)だから。俺は隣に座る巧矢をちらっと見る。こいつが運転免許をとったら自家用車で移動できるんだろうか?

「どうしました?」

 俺の視線に気づいた巧矢。騒音が少ない最新鋭車両とはいえ電車の中でもよく聞こえる声だな。

「親父は車にこだわりがあったよな、デザインが特徴的なクラシックカーだった。それに毎日ピカピカに磨くよう命令していたし。あれだけ丁寧に扱っていれば今でも普通に乗れるのか?」

 巧矢も実家では車磨きを担当していたことがある。

「あれはあるメーカーに特注させたものですよ。デザインも大旦那様の懐古趣味に合わせて昔の車らしいものにデザインさせたそうです」

「そうだったのか? あれは俺が5歳くらいの時に納車された記憶がある」

 少なくとも巧矢が来る前だった。

「かつて大旦那様に同行した際、僕たちが乗っている愛車について説明されました。クラシックカー愛好家の方々が『あの車は知らないぞ?』と不思議顔するのが快感なようです」

「なんだその悪い趣味は。単なるマウントか何かでやってんのか」

 巧矢は、違いますよと言う。

「大旦那様は本当にレトロなデザインが好みなのはご存じでしょう。アンティークを語ると止まらないくらいに」

「そうだな、右から左に流しているのに覚えちまった。まあ機能優先の現代的なデザインより芸術性があるのは認めるが、昔の物は使いにくいだろう。蓄音機があってもレコードを用意するのは大変だ」

 親父の書斎には歴史的な発明家が作ったやつと同型の蓄音機がある。俺はレコードがねえだろ、と突っ込んだが……。

「わざわざ楽団と会場を貸し切ってレコード録音させるとはなあ」

 俺は人並み以上の小遣いをもらっていることは理解しているが、それでもそういう金持ちの道楽的な大金の遣い方は複雑だ。

 そこで目当ての駅に着いて会話は終わった。


 そんなこんなでたどり着いた競技場はショボい。観客は千人を収容できるくらいじゃないか? 俺は巧矢の先導で中へ。競技場の周囲には色々な施設があり、公園みたいに整備された広場もある。

「ん、食堂があるぞ」

 ディスプレイに展示されたメニューの模型を眺める。そんな俺に巧矢が説明する。

「ここはむしろグルメの舌に適う食堂が売りなんですよ。小さな所ですから使用料も少額ですし」

 おお、コロッケ定食がある!

「いいなー食べたいぞ」

 こういうと料理も管轄してる巧矢が怒りそうだ。栄養バランスが乱れるとか言って。

「では、コロッケが美味しくなるほど活躍してくださいね」

「うっしまかせとけ、フォワードからディフェンスまで無双してやる」

 テンションを高めた俺は歩く足に力を込める。入口が見えたから巧矢の先導は不要だ。

「健真様!」

 俺の後ろを歩いていた巧矢は急に動いた。

「うおっ」

 俺たちに向かってボールが飛んできた。巧矢はそのボールをキャッチした。

「ここはバスケコートではありませんよ」

 巧矢は歩いてくる女子に向かっていう。あいつがボールを投げてきたのか。

「あら、ごめんあそばせ」

 その女子は悪びれない笑顔で両手を広げる、巧矢はボールを投げて渡すと彼女はキャッチする。

 なかなかの美少女だ、瞳は俺に向けられているが秘められた感情は良いものに感じない。

「大鈴家が一族の恥と呼ぶ大鈴健真ね。見た目だけならその通りだわ」

 随分と失礼な女だ。

「井ノ川アリサ様、あなたもここにいらしていたんですね」

「あれ、巧矢こいつを知ってるのか。このタカビーを」

「一族の恥というのは的確な評らしいわね、この私を知らないのなら」

「大鈴家と関わりが親密な井ノ川家のご令嬢ですよ、健真様」

健真「巧矢って、俺の護衛も担当してたっけ?」

巧矢「……健真様の全てを担当しています」

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