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旗持ち誘導五月雨くん

 大都会とはいえないからこそ広い土地を有効活用できて大きな施設が並ぶ街。俺の人生はここから始まる、大鈴健真が旗揚げした地として後世に語り継がれるだろうな。

 一族の敷くレールに反抗して独自に決めた進学と同時に家を出てこの街にやってきた。親父は俺の自活能力を信用していないので一人暮らしをさせることには反対、そこで使用人をつけることを条件とした。

「……正直不本意だ、お前という人選は」

「若旦那様ひとりの家とはいえ、家事は力仕事ですから使用人の中で一番若い男である僕を選んだ大旦那様の判断は適切では? 学園でもご一緒できますし」

 俺と同い年の男子、五月雨巧矢。制服にエプロンをつけ俺と巧矢の弁当を持ったままキョトンとした顔で答える、俺の真意がわからないのか。まあそれは仕方ないとして。

「……お前の方が入試の成績よかったじゃねーか。入試の3カ月前になって親父から『ヤツと同じ学園に入学できるよう今から受験勉強しろ』って言われてたってのに」

 もしかしたら親父が裏でなんかやるんじゃねーかと思ったが、そんなことはなかったな。

「従者に負けてるなんてさすが大鈴家のハズレ枠だと笑ってんだろうな、採点担当は」

「まあ、僕も進学はする気でしたから。執事ですから高い学歴は求めていませんでしたけどね」

「そういうもんなのか? 柴田のじいさんは外国の一流大学に留学したらしいぞ」

「執事長殿は全体を管理するお方です。一般執事の仕事は先輩から学べますので学歴は一般教養のために獲得するつもりでした」

「そうかい、学園まで執事の仕事になって災難だったな」

 巧矢は弁当を俺のカバンに詰める。

「大旦那様は口ではああ言ってますが自立心を見せてくれたことを喜んでますよ」

 お前に親父の何がわかる? 10年も勤続してないだろ。にらむ俺を気にせず巧矢は学園のブレザーを俺に着せる。

「大旦那様は学園の女生徒には気をつけろと釘を刺していますからね、僕らと同じ年代の女子でも地位と財産のある名家の肩書は魅力的なのでしょう」

「それは親のモノだけどな」

「七光りを拒みますか、上流のご令息ならではの反抗期ですね」

 巧矢はいたって普通な態度でそんなことをいう。地位の差を話題にされるのはイヤもんだが、コイツみたいに雲の上への反感が感じられないのはかえってやりにくい。それにコイツは俺と同い年の思春期男子なんだが……。

「高貴なる者の義務とはいうが、干渉には反抗したくなる。兄貴にいたっては5歳の時に許嫁つけられてんじゃねえか」

 自分の意志もなく嫁を決められたらたまらんだろう。

「確かにそうですね、三男の若旦那様に与えられたこのマンションの費用と比べれば長男たる健介様に与えられたものは大きすぎます」

 そういうと親のスネかじりのくせに反抗してることから目をそらしていることが明らかだな……。

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