愛って…
(愛ってなんなのだろう)
そんなことをぼんやりと考えながら、帰りの電車に揺られる。
窓を見ると、もう時間的にも真っ暗であまり外の景色は見えない。
最寄り駅に着くまであと20分はある。偶然座れた1番端の席でゆっくり目を閉じる。
別に寝る訳ではない。ただ、目を閉じる。
目を閉じて、自分の世界に入る。
私はこの16年間で人を嫌いになったことが無い。
それが称賛されるようなことなのかは置いておいて、逆に心の底から人を好きになったこともなかった。
いつも一緒にいる友人も、嫌いではないけど好きでもなかった。クラスメイトや担任に愛を感じたことなんてまず無い。
家族にも愛なんて感じたことなかった。家族はそんな空っぽな私の心に薄々気づいているらしく、家族からも無理に愛を伝えられることは無くなった。
私が返答に困っていると知っているからだ。
嫌いではないので幸せになったら(良かった)ときっと思えるけど、不幸になったって(そうなんだ)くらいにしかきっと思えない。
人に興味が無い訳では無いと願っているけれど、結局自分含め、誰かがどうなろうと何も感じられないんだろう。
人に優しくすることでしか、人を愛せてるように周りに思わせる手段がなかったけど、それすらも周りに拒絶されてしまった今日。いよいよ人を愛せている自信が無くなった。
もしかして自分は今悲しいのだろうか。感情すらもどんどん薄くなっていく。
もしこの先私が誰かを愛せる日が来るとするならば、それは一体いつなのだろう。誰なのだろう。
最寄り駅に着いた。
改札口を出て駅から出ていく。
歩きながら頬が濡れている気がした。