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カエルの王子と黒薔薇姫~呪いをかけられた二人~  作者: 綾瀬 りょう


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第6話 黒薔薇姫のダンスパーティーは波乱万丈①

 絢爛豪華な老若男女が王宮に久しぶりに集まった気がする。王が本気になって黒バラ姫の結婚相手を探していると聞いて、選ばれに来た者、冷やかしに来た者、様々だった。


 婚約者探しと名がついているために、いつも以上にきらびやかなドレスを用意されていた。


「今日は久しぶりの王宮の舞踏会に参加いただき、感謝する」


 国王が集まった人たちに挨拶をする。聖女でもある王妃は来ていなかった。婚外子である姫のことをよく思っていないと噂が流れている。警護のため魔力を消費しているために来ていない。





「レディ、もしよろしければ私とダンスを踊ってもらえませんか」


 女遊びで有名な王子。私が呪いがかけられたと思っていないから声をかけてきた気がする。


 生粋の女好き。


「私にダンスを申し込むの?」


 この時ばかりは、素直以外の言葉しか言えないのがよかった気がする。


「ホールにいる人の中で一番の花に誘いを申し込まないほうが可笑しいでしょう」


 キラーんという効果音が聞こえてきそうな表情に笑いをこらえる。撃たれ強いというべきか、それとも何も考えていない奴なのか。


「誘われたんだ、踊ってきなさい」


 ファーストダンスは父上に踊ってもらった。変に誤解を生むことをしたくないので、いつも振屋に踊ってもらったらそれで終わりにしている。


 遠くからミハエルの視線も感じていた。


 運動神経には自信があったので、相手の足を踏むなどの行為をするのは自分のプライドが許さなかった。


 私は私としての矜持がある。性別が変わろうと譲れない面がある。


 黒バラ姫と呼ばれるようになって、私のプライドが少し崩されたところがないとは言い切れない。男だと言いたくても言えない。


 だから、厭らしい目で見られるのも納得ができない。


 愛されたい。可愛い見た目だから好かれているというのは許したくない。


「普段踊らないのは苦手だからじゃないのですね?」


「足を踏まれるのがお望みですの?」


 わざと踏んでやろうかと、考えてしまう。


 軽いステップで、最小限の接触に踏みとどめている。自分を値踏みするような瞳。

 女の私の夫になれば王になれる可能性がある。


 そんな目で見られたとしても俺が本当に好きにならなければ父上はきっと結婚を認めないだろうし、そうなったら呪いが解ける話になる。


「いえ、踊る姿も美しいなと」


「あら、わたくしを相手にしていて余裕ですわね」


 私はわざとリードしにくい動きを取り始める。父上の視線を感じる。一曲だけでもほかの人と踊れば俺が本格的に結婚相手を探していると知らしめるため。


「綺麗な花にはとげがありますね」


「あるに決まっているでしょう?」


 綺麗なだけでは生きていけない。自分を利用しようとしている連中を相手にしなければならない。女のままの人生と男に戻れる希望を考えると、政治も揺らぐ。父上が居てくれたおかげで何とかなっている。


 母上が踊り子だったため、結婚するときに色々問題があった。


「彼の国は私よりも美しい人が多いと聞きますわ」


「あなたよりも美しい人は見たことがありません」


「本当?」


 私を本当に女だと思っている。


 結婚相手を探していなければこんな奴と踊らなくてよかったのに。


 本当は自分が男性パートを踊って、気になる異性と距離を縮めいた。


 気に入らない同性と踊るだなんて、最悪だ。


「嘘は言いません。黒バラ姫ほどの方になぜ婚約者がいないのか、我が国でも持ち切りの話題なんですよ」


 悪意のない笑顔だからこそ殴りそうになるをぐっとこらえる。王族の婚姻は早めに決められることが多い。政治的なパワーバランスで決まることもある。


「両親の結婚に憧れているのに、政略結婚なんてできるはずないじゃない」


 両親の配慮がうれしいような、悲しいような。


 それなら籠の鳥にしないでくれ。自由に世界中を見に行く時間が欲しい。


 外交などもさほど行かせてもらっていない。


 呪いのこともあるからかもしれないが、結婚相手を探すとなると、なかなか厳しいものがある。


「なるほど、恋愛結婚をお望みで?」


「変な虫に好かれないようにしておりますの。そのせいで出会いが少ないだけですわ」


 曲がだんだんと佳境になっていく。涼やかな表情の後ろで話しているとは思わないだろう。彼の国は資源が豊富だ。婚約者はいなかったと思うが、私が彼の婚約者になることはない。彼の国に嫁ぐつもりもなし、女だと思って口説いてきている。


「今日はダンスにお誘いいただきましてありがとう」


 クルリとターンをしながら私はこの場を離れるためにわざと、よたついた。


「ダンスに疲れてしまったみたいなので、私はこれで失礼しますわ」


 仮病なのは父上には見透かされているだろうが、今はこの場を離れたい気持ちでいっぱいだった。


 魔女を見つけ出して呪いを解くことは難しい。彼女らが人の前に出てくることはなかなかない。


 リミットがある。性別を戻したいのは自分が国を支えていく立場にいたいから。

 性別が変わったくらいじゃ何とかなるかもしれないけど、俺は女ではなく、男なのだ。


 思いだされるのは、あの日会った少女だけだから。


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