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エゴで窒息  作者: 夏至
第1章
3/14

2話「盲目」潤side


廊下の先で遠ざかる夢の背に手を伸ばした。


群がる女子生徒達に阻まれる。鬱陶しい。

今まで何度もこんなことがあったが、一体なんのために。


「桐ヶ谷先輩!!!!」


背後から大声で俺の名前を呼ぶ声が。

振り返ると腰に手を置いて仁王立ちしている副会長の日高(ひだか) (かえで)の姿があった。


「ちょっと皆さんどいてください!」


日高さんは周りにいる女子生徒をかき分け俺の前までやってきた。


「会長!何やってるんですか!もうすぐ部長会始まりますよ!」

「あぁ、そうだよな。ごめん。」


おもむろにポケットからスマホを取り出して電源ボタンを押した。

ふわっとスマホにあかりがついて会議の十分前の時刻が大きく映った。

その下には日高さんからの着信が五件。


「うわぁ…」

「何引いてるんですか!電話出てくれなきゃ困ります!」


日高さんはくるりと方向を変える。ふたつに結んである髪とスカートがひらり。


「桐ヶ谷先輩、生徒会室行きますよ。」


周りにいた女子生徒達は日高さんの勢いに少し戸惑っていた。


会議まであと十分。握っていたスマホをポケットに戻す。


「日高さん、ごめん。会議には間に合わせるから!」

「え!?桐ヶ谷先輩!?」


日高さんのいる方とは別の方角へ、夢の歩いていった方へ俺は走り出した。




部室棟廊下で尊と夏を見つけた。


「あ、潤じゃん!どうしたの?」


夏がニコニコしながら近づいてくる。二人とも今から部活だろうか。


「尊、今日部長会だけど」

「あ?委任状出したけど?確認しろよ」

「そうですか、そりゃ悪かったな。」

「お前こそ、会議の時間もうすぐだろ」

「いや、まぁ…」


夏は返答に困る俺に静かに耳打ちをした。


「夢は屋上だと思うよ。」


夏の顔を見ると、ニコッと俺に笑いかけた。

夏はいつも俺の言いたいことが分かる。


「サンキュー」


夏の肩をぽんと叩いてお礼を言ったあと、階段を駆け上がった。下を見たら夏は笑顔で手を振っていた。





屋上の扉を思い切り押して開けると生暖かい風が一気に吹き付けてきた。


「うわぁっ」


俺は急いで扉を閉めた。古く重たい扉はガタンと大きな音を立てる。


「しーっ」


近くで聞こえた声の先には口元に人差し指を当てて静かにするように促す侑が居た。

壁にもたれ掛かるように体育座りをしている。本を読んでいた様だ。

そしてその横にはすやすやと気持ちよさそうに寝る夢の姿。


俺は夢に近くにしゃがんだ。


夢の髪をクシャッと軽く撫でると「うぅ…」と嫌そうな顔をした。

金色の髪が光に当たってきらきらとしている。


「何しに来たの」

「夢と話してたんだけど、逃げれたから追ってきた」

「相変わらずだね」


侑は大袈裟にため息をくつ。


俺は着ていたカーディガンを脱いだ。

それ夢の体にふわっと静かにかける。


「過保護」


嫌味の様な言い方で侑は言う。


「夢には、俺がいてやらないと。」


夢の寝顔をじっと見つめる。

侑は興味が無いのか、怒っているのか、よくわからない声のトーンで「そうですか。」と一言。


「侑はなんでここで本読んでるの」

「今日部長会で部長が居ないから文芸部休みなんだよね、だからたまには屋上で本読もうかなって…」


侑の「部長会」という言葉で会議の存在を思い出す。

ポケットの中のスマホをもう一度取り出すと時刻は会議の2分前を指していた。


「うわ、やべぇー」


日高さんからの着信も数件入っている。


「じゃあ俺行くわ。多分夢は俺に会いたくないだろうからカーディガンは侑が回収しといて」


じゃ。と軽く手で挨拶して屋上の扉をあけた。

侑は気だるそうに俺の事をみて小さく「めんどくさ」と言ったように聞こえた。





階段を駆け降り、生徒会室へ走る。

生徒会室の扉を開けると中で待っていた部長達が一斉に扉の方に振り返って俺を見る。

奥にある俺の席の横では日高さんが頬を膨らませて手を組んでこちらを睨んでいた。


自分の席に向かいながら生徒会室の奥の壁にかかった時計をみた。

カチッと会議の時間ぴったりを指す。


「セーフ…」


と小声で言うと日高さんから


「ギリギリです!これじゃアウトなんです。生徒会長という自覚を持ってください。」


ごもっともなので反論はしない。


「これから夏休み前の部長会を始めまーす。」


俺が号令をかけると面倒くさそうに部長達は姿勢を正した。

日高さんが出席をとる。最後に1枚紙を俺に渡した。


「男子バスケ部部長の桜庭先輩は試合前の為欠席です。委任状出てます。」

「はい、りょーかい。」


紙を受け取る。乱暴に書かれた「桜庭 尊」の文字を見て、持っていた紙の端を少しだけクシャッとした。



会議の内容は夏休みの各部活の活動日の確認、完全に学校が空いてない日の確認、夏休み中の空き教室の使用の注意等、夏休み2日前の会議内容にしては少し多かった。





無事に会議が終わり、生徒会室からパラパラと人が出ていく。


「楓、部活どうする?」


そう日高さんに声を掛けたのは女子陸上部部長の(たちばな)先輩。その横には文芸部部長の栗花落(つゆり)先輩が立っていた。


イケメン美女と清楚系美女としてこの学園で人気の二人だ。


「少し、顔出します!」


日高さんは勢いよく立ち上がると右手を上げて宣言した。

その様子を見て橘先輩は小さく笑う。


「私もこれから部活行くから、待ってるね。」


橘先輩はヒラヒラと手を振って、栗花落先輩と生徒会室を出た。

日高さんはそれを見送ったあと書類の片付けをせっせとし始めた。


「生徒会長って橘先輩みたいな規則正しい人がなるべきだと思います。」


日高さんが俺を睨む。


「なんで桐ヶ谷先輩が生徒会長やってるのか謎です。」

「まぁ、多数決で俺が勝ったってだけだよ」


この学校は春、委員会や部活決めと共に生徒会役員も入れ替わりなどがある。

中高一貫のこの学校でずっとお世話になってる先輩に誘われて、去年生徒会役員になったが、誰かの下につくのが苦手な俺は今年生徒会長に立候補した。

会長希望は俺の他に数名居たが、結果はご覧の通り。


日高さんが腑に落ちない。と言わんばかりの顔で俺を見る。


「…そうですよね。勉強もスポーツも出来て、更にイケメン…。」


ボソボソと何か言っているようだが、あまり良く聞こえない。


「それから」


日高さんが何か言いづらそうに下を向いて会議で使った資料をずっとトントンと机に当てて整えている。

俺は黙って日高さんの言葉を待った。


「お先に失礼しまーす。」


書記の小檜山(こひやま)くんが気まずそうに出ていく。


片付けをしていた他の役員達も次々と生徒会室を出て、気付けば日高さんと二人になった。


「あいつのこと」


日高さんがやっと口を開く。


「あいつのことを桐ヶ谷先輩が面倒見る必要無くないですか?」


日高さんがいう「あいつ」が夢だと言うことは直ぐにわかった。


「あいつとか言うなよ。一応先輩だぞ」

「だって!いつもいつも桐ヶ谷先輩に迷惑かけてるし」

「迷惑なんてかけてないだろ」

「桐ヶ谷先輩がいないと何も出来ないじゃないですか!」


日高さんがヒートアップしてきて、声が大きくなる。


「部活あるんだろ。片付けはもういいから」

「そもそもいろいろおかしいんですよ」


もう終わらせようとした俺の言葉は遮られた。


「クラスだってAクラスじゃないですか。特進ですよ?」

「それが?」


この学校は高等部から成績でクラス分けが行われる。

夢はAクラス。一番上の特進クラス。

寝る時間を削って勉強した俺がやっと入れたAクラス。

昔から習い事ばかりだった夢は小さい頃から頭がいい。


「さすが、コネ入学は違いますね。」


日高さんの言葉を聞いて思わず俺は拳を机に叩きつけた。

ドンッと大きな音が生徒会室に響いて、日高さんは肩をビクッとさせた。


「き、桐ヶ谷先輩…」


俺は我に返ると机に叩きつけた拳を緩めた。


「悪い。」

「…わ、私も」

「夢は本当は悪いやつじゃないんだ。」

「…すみませんでした。」


日高さんは鞄を持って急いで生徒会室を出た。



一人になったあと、座り込んでじっとしたあと、PCで暫く書類を無心で作っていた。

日も沈んできたのを確認して書類の片付ける。


さっき貰った委任状を見た。


「桜庭 尊」


俺たち五人のリーダー的存在。だった人。

中学二年生の秋。俺の中で最悪になった人。


***


あの日、俺は同じクラスだった夏と一緒に放課後教室で文化祭の準備をしていた。が、準備で使う書類が一式ない。

今朝、夢に部活の書類を渡した時に一緒に渡してしまったみたいだ。


急いでスマホを取り出すと夢からメッセージが入っていた。

『文化祭準備する人が多いから、部活は無しになったよ。尊と帰るね。』


この頃、夏と尊と俺、それから夢の四人は同じバスケ部で、侑が委員会で帰りの時間が同じ時は五人、それ以外はほぼ毎日のように四人で帰っていた。

夏と俺は文化祭の準備。侑が今日は図書委員があるようで、夢は尊と帰るみたいだ。

メッセージは五分ほど前に来ていた。


「潤、資料あった?」


夏が「お化け屋敷」と書かれた看板に色をつけながら聞いてきた。


「設計図とか諸々入ったファイル、夢に渡しちゃってたみたい。帰ったのついさっきみたいだし間に合うと思うから、ちょっと行ってくる。」


教室を駆け足で出た俺は、いつもの通学路に急いで向かう。

秋だと言うのにまだ暑い日が続いていて、額から汗が溢れてきた。夕日もまだゆらゆらと空を泳いでいる。西日が眩しかった。


「電話してみるか…」


スマホをポケットから出そうとした時に、話し声が聞こえた。

よく聞き取れないが、もしかしたら二人かもしれないと、声のする方へ歩みを進める。


スーッと伸びる大きな影。あの後ろ姿は尊?

声をかけようとしたその時だった。


「夢のことが、好きなんだ」


それは尊から夢への告白。

夢を力強く抱きしめる尊。


尊が本気だということは、嫌でもわかってしまった。

いままで見たことのないほど尊が必死だったから。


その後夢は尊を突き飛ばし、地面に落ちたエナメルバッグを抱えて一目散に走りだす。怯えている瞳が一瞬だけ見えた。

尊はフラフラと数歩後ろに後ずさり、ずっとうつ向いている。


その間俺は何も出来ずその場に立ち尽くす。足が地面にくっついている感じがした。

額から流れた汗が目に入ってハッとなり、急いで学校へ踵を返した。


尊に声をかけるべきだったのか。夢に連絡を入れるべきか。

俺はあの時何をするのが最善だったのか。俺には分からなかった。無我夢中で走った。


「あれ、早かったね。資料あった?」

「あ…わりぃ、なんか走ったけど、近くにいなかったから、諦めて帰ってきた…。」

「あ、そうなんだ。じゃあ今日は違う準備しようか。」


その後、何をしたかはあんまり覚えていない。空が暗くなった頃、夏と一緒にいつも通り帰った。

さっき尊と夢がいた場所で一瞬立ち止まったら、夏に変な顔をするから「なんでもないよ」と嘘をついた。


途中で夏と別れ、自分の住むマンションに到着した。エレベーターで五階まで上がり、自分の住む部屋の前で立ち止まる。右隣の部屋の扉、夢が住んでいる部屋を見た。

夢とは生まれた時には既に隣同士だった。

チャイムを鳴らしてみたが、応えてはくれなかった。「明日。聞いてみよう。」そう思って自分の部屋に帰ったが、夢は次の日学校を休んだ。


そのまま夢はバスケ部を退部して、秋の間は一度も学校には来なかった。

尊には夏が何度も一緒に様子を見に行こうと誘ったが、乗ってくることはなかった。その度に何度も「好きなんじゃないのかよ」と口走りそうになった。

そんなこと思っている俺も何もできない自分に苛立って、夏に一緒に行こうと言われたのに断ってしまった。


そして冬。久しぶりに登校した夢は長い髪を染め、耳にピアスを開け、誰の言葉も聞かない不良に成り下がっていた。自分のことを「俺」と呼ぶようになったり、俺の知っている夢じゃなかった。


数日後、夢の両親が離婚して母親が出て行ったことが学校中に噂になった。皆はそれが原因だと思ってはじめは夢に同情していた。

でも俺は別に理由があると思っている。あの日の尊の告白。それが夢を壊した原因だと俺は感じた。


尊は夢が戻ってきても声をかけることはなかった。まるで柊 夢なんて知らない。と言わんばかりに。

それが俺は心底気に食わなかった。


***


それからずっと夢と尊は話さないまま。俺も尊のことを嫌いになったまま。高校二年生になった。


「いい加減、帰るか。」


職員室に持っていく書類を抱えて、生徒会室を出た。抱えた書類が一枚、風に煽られて宙を舞う。廊下をすべるように流れ離れたところで止まった。


「やべっ…」


拾おうと駆け寄ると通りかかった男子生徒がゆっくりとプリントを拾った。


「あ、わりぃ…って侑か。」

「会議は無事に終わった?」

「まあ。俺のカーディガンは?」

「さあ?」


さあ。って。

俺が勝手にやったことだからとりあえず黙っておく。


「これ、もらっていい?」


侑がさっき拾った夏休み中の各部活の予定が書いてあるプリントをひらひらとさせた。


「別にいいけど…」


何に使うの。と聞く前に侑は「どうも」と一言言って去ってしまった。


「まあいいか。」


俺は職員室へ向かい書類を届けて急いで下駄箱に向かった。

この世で怖いものはホラー映画と姉貴だけ。暗い学校なんてすぐさま去りたい。


「うわぁぁああ!!」


思わず叫んでしまった。


暗くなった下駄箱にしゃがみこんだ人が一人。背中を丸めてうつ向いている。

一瞬幽霊かと思った。心臓が今までにないぐらいドキドキしている。

俺の叫び声を聞いても依然、丸まった背中。近づくと金色の長い髪が風に揺れた。


「夢?」


俺が屋上でかけたカーディガンを握りしめて少し震えている。

思わず駆け寄り夢の目線にかがんだ。


「どうした!?何かあったのか!?」


何を聞いても夢は答えない。何があったか見当はつかないが、いつもと違う様子だというは安易に分かった。あの時と同じ怯えた目をしていた。

そのあとも声をかけ続けたが夢は何も答えてくない。ただ、夢の肩に置いた俺の手を振り払うこともなかった。




次の日の朝、廊下で夢を見つけた。

いつもなら机に突っ伏して寝ているか、屋上にいるのにと驚いた。そもそも朝早くから来ていることも珍しい。

様子は落ち着いた感じだったが、うわの空と言った方が正しかった。昨日何があったのか尋ねたが今日も答えてはくれなかった。


「夢!潤!」


俺たち二人を元気よく呼ぶ声。

視線をやると元気よく「おはよー」と手を振る夏の姿が。


「よっ」


軽く手を挙げてあいさつした。夏が駆け寄ってくる。それでも夢は何も言わない。夏にまで反応が無いのは珍しく、思わず夢の顔を覗き込んだ。


「夢…?」


夏を見る夢は怯えた表情に変わっていた。


「夢?どうしたの?」


どうやら夏もその理由は分かっていないみたいだ。

夏が大袈裟に考えているポーズをしている。


「どうして?」


夢がやっと口を開いた。

そして夏に前のめりになる。


「昨日あんなことされて、どうして普通で居られるんだ!?」


夢が不安そうな顔で夏に詰め寄る。

俺はなんの事だか全然分からず、夏と夢の顔を交互に見た。


「な、なんのこと…」


夏がビックリして夢へ問い返したあと、ハッとした顔をした。何か思い出したようだ。

夏は夢からも俺からも追求を避けるように逃げ出した。


「おい!夏!」


夢はその場に立ち尽くし、俺は夏を追いかけた。

廊下を駆け抜ける夏の背中を見ていたら、小学生の時に鬼ごっこしたな。とか、中学生の時に部活で坂ダッシュしたな。とかどうでもいいことを思い出した。


そんなことを考えてるうちに夏の真後ろまで迫り腕をつかむ。


「痛っ」


そんなに力を入れたつもりもなかったが、激痛と言わんばかりの表情だった。


「悪いっ」


とっさに謝ったが俺の中で一つの疑問が生まれた。


こんなに暑いのに、なんでずっと長袖なんだ。

この間バスケの試合を見に行った時もユニフォームの下に長袖のインナーを着ていた。

中学の時は着ていなかったし、制服に関しては年中半袖でも大丈夫なタイプだった。


「まさか」

「潤、やめてっ!!」


止めに入る手を振りほどいて、夏の制服の袖をまくった。


「なんだよこれ」


腕にはうっすらとだが痣がいくつかあった。少なくとも一日だけでできたものではない。

夏は焦っているような、悲しそうな、なんとも言えない表情をしている。何も話そうとしない夏を引っ張り目の前の生徒会室に入った。


「それ、どうしたんだよ」

「ぶ、部活で」

「そんなわけねぇだろっ!!」


夏は壁にぴったりと背中をつけて、俺の顔を見ないようにずっと下を向いている。

昨日の夜、夢は夏が誰かに暴力を振るわれているところ、もしくはいじめられているところに遭遇したのかもしれない。

誰が犯人なのか突き止めなければ。


「誰にやられたんだ?」

「…」

「いつから?」

「…」

「昨日の夜もやられてたんだろ?」

「…!」


夏の肩がぴくっと動いた。どうやら図星みたいだ。


「教えてくれ」

「潤はさ」


黙っていた夏が食い気味に言葉を発した。下げていた顔もあげ、俺の顔をまっすぐと見る。青い瞳に吸い込まれそうな気がした。


「潤が、知りたいのは、僕のため?それとも夢のため?」

「そんなの」


「夏のために決まってる」とすんなり言葉にできなかった。

自分が夢の不安や恐怖を拭い去ることだけを考えていたことに、今気づいたからだ。


そんな何も言えない俺を見て


「潤は、本当に正直者だね。」


と、いつもみたいにニコニコしながら、でも少し寂しそうに言った。


「…」


黙っている俺を横目に、夏は生徒会室を出た。俺に止める権利はない。

予鈴が生徒会室の中に大きく響いた。



一章 第二話 「盲目」 終わり

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