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97.慈愛『森の動物さん達は撃たないが、虫さんは即殺』

 「ほら~こっちよ~つかまえてごらんなさ~い!」


 森の中に出る町の木造りのゲートを抜けるとすぐに走り出す変質者。


 もしこのまま追いかけずにこっそり町に戻ったら今度こそまけるだろうか?


 多分、まけた上で、探され詰められるのがオチだろう。どうにかうまく関わらない方法を考えねば。


 初めて入るフィールドという事で<聞き耳>に集中し周囲を探りながら慎重に森の中へと進んでいく。


 「ね~え~!何のんびりしてるの?とっとと木の所まで行きましょうよ~」


 「一応敵の出るフィールドみたいなので、慎重に進みたいんですけど……」


 「そうなの?敵出たら撃っちゃえばいいじゃん!私のM70が火を噴くわよ!」


 「そしたらちょうど、向こうに何かいるみたいですけど?」


 森に入って早々だが、自分の耳はガザガザと草の揺れる音をとらえていた。


 二人でよく目を凝らしてそちらを見ていると、出てきたのは汚いヌートリア?


 「やだー可愛い!マーモットよあれ!絶対そう!モフモフした~い!」


 「火星の獣は結構凶暴だしやめておいた方が……」


 「分かってるわよ~当り前じゃない!じゃあ先行きましょ!」


 「え?撃つんじゃなかったんですか?」


 「無理~!いやよ~!森の動物さん撃つなんて~可哀そう~」


 うん、敵だと認識してるはずなのに、撃たないんだ。


 まぁ、でも確かに自分も狼と共闘したり、羊も毛を刈るばかりで倒したりしなかったしな。仕方ないか。


 その時頭上から、不穏な風切り音が聞こえた。


 大蝙蝠の事を思い出しすぐさまそちらに向けてクロスボウを構えると、ピンクの巨大な虫?


 「いやーーーーーーーー!虫ーーーーーーーー!死ねーーーーーーー!!!」


 よく確認もせずに発砲する変質者。


 銃の威力が高かったのか、当たり所が良かったのか、一発で落っこちてきたのはやたらとデカい蛾の様だ。


 「虫はいいんですか?」


 「虫はいいのよ!キモいんだから!しかも大きすぎじゃない!マンホールより大きいじゃない!運営何考えてるの!」


 確かに言われてみると一番広いところで1m位はありそうな巨大サイズの蛾は少々怖い。


 しかし近寄ってみれば愛嬌があるというか、こちらも結構フワモコな感じなんだが?


 「結構可愛いですけど、どうします?」


 「どうって言われても、私近寄れないもん!何とかして!」


 との事なので<解体>してみると〔桃蚕蛾の粉〕〔桃蚕蛾の触覚〕〔桃蚕蛾の羽〕などが手に入った。


 「これ結構いいものですよ?この粉とか毒性がないけど、目に入ると一定時間目をみえないようにするとか……」


 「そうなの?そういうの好きならあげるわ~私~銃撃つか銃作るしかしないし~」


 との事なので遠慮なく頂いておくことにする。


 アイテムボックスからまだ空きのあるバックパックを取り出し……。


 「何よそれ!」


 相変わらずいきなりの大声にドキッとして変質者の方を見るとどうやら自分のバックパックを指さしている。


 「え?バックパックですけど?バックパックにアイテム入れてアイテムボックスに放り込むといっぱい物を持てるんで……」


 「ちがーーう!そうじゃなくて~!木のバックパック持ってるのに、何で今装備してるのは普通のナップザックなのよ!おかしいじゃない!私たち同志じゃない!……あっまさか!他の人にばれるのが恥ずかしいのね?確かに~私も自分の性癖に気が付いたときは、誰にも相談できなくて困ったわ~でもね……」


 「いや嵩張るから、こっちにしてるだけですけど?」


 「そういう事!なんだ最初に言いなさいよ~そうだったのね!本当は木のバックパックが欲しい!でも、それだと戦うにはちょっと邪魔になる。誰か小型で利便性も高くて可愛くてセンスと愛を感じるバックパックを作ってくれないかな……そんな苦しみを抱えていて言わないなんて水臭いじゃない!そのうち本当に臭くなっちゃうわよ!」


 「どんな匂いになっちゃうんでしょう?」


 「そっち?!それはただの冗談でしょ!そうじゃなくて!なんで私に相談しないの?って事よ!いいわ!ハードメープルが手に入ったら最初にあなたのバックパック作ってあげる!誰が見ても『キャー何それー!どこで手に入るのー?!』って言われちゃうような可愛いやつをね!」


 「別に可愛くなくても……」


 「それは無理!可愛いはジャスティスだから!さぁ!行くわよーハードメープルを手に入れるため、この大海原に漕ぎ出すの!」


 「大森林です」


 「知ってるわよー!言葉の綾じゃない!」


 そう言って歩き出すと、どうやらこの森にはそこかしこに動物がいるらしく、スカンクらしき生き物や毛が長く首の太い牛やら、多分ネコ科と思われる大型の獣とか……。


 しかしどの動物もこちらから仕掛けなければ、とりあえずは安全そうで、一緒にいる変質者も遠くから眺めるばかりで撃たないから安心だ。


 ちなみに時折出てくる蛾だけは一瞬で撃ち落とす。


 木製の銃床に細長い鉄の筒が付いてるだけのシンプルな銃と見せかけて、相当な距離でも簡単に当てるし、威力の高い弾も撃てるみたいだ。


 一発ごとに排莢している事から単発銃ゆえのゲーム的威力補正はあると思われるが、どうやらこの人、ただの変質者ではなく、いろいろ詳しい上に強い変質者らしい。


 いよいよ逃げるのが困難になってきたかもしれない。

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