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96.変態2『木の変態が木に詳しいのは当然なのかもしれない』

 しかし、メープルシロップ屋さんは今までのNPCよりちょっとだけ不親切だったかもな?


 何しろどこのNPCも口は悪くともやたら情報だけは聞いてもないのにくれたモノなんだけど、メープルシロップ屋さんは最低限攻撃してくる木がシロップをドロップする木だという事を教えてくれただけだ。


 そう考えると、やっぱりそろそろ新人といえる段階を卒業しろという事じゃなかろうか?


 つまり、これまでとは違い、自分でもっと情報収集をうまくできるようにならないと先に進むのに苦労するぞ。と、そういうことじゃないかな?


 ここは勢いで森に入る前に十分な情報収集が必要かもしれない。


 全容は分からないが結構広い町だし、先ずは十分な探索の後、メープルシロップの収集とそういう流れがいいだろう。


 そして歩き出し、すぐに疑問にぶつかる。


 情報収集ってどこでやればいいんだろうか?


 新人の街の時のようにあからさまにメインの通りがいくつかある場合は<聞き耳>で人の話を聞いてもいいが、森の中にあるこの町は正直どこがメインの通りかもよく分からない。


 今のところ人が集まるような場所も、中心地のような人の集まる場所や市場の様な場所も見当たらない。


 しいて言うなら大きな広場があったが、さっき見た限りでは人が集まっているようにも見えなかったしな。


 ……とりあえず再び歩き出す。


 多分だがよくよく街を歩き回らないとどこに何の商店があるか分からないようになっているのだろう。


 もう新人ではないのだから、先ずは足で情報を集め、目的の場所まで行って話を聞くっていう。


 そういった情報収集の手順をちゃんと踏む必要があるってことだ多分。


 ここは一つ面倒くさがらずに一つづつ建物を見て歩いて、どこに何があるのかをちゃんと把握してから次の段階に進む。それしかない!


 これまでの親切仕様に慣れすぎた自分に活を入れ、まずは割と近くにあった茶色い地味な趣ながら、少し大きめな建物に入ってみる。


 入り口から入ってみて、正面から右手に広がるのはロビーかな?ソファとストーブが設置されており、更にはバルコニーにも出られるようになっているようだ。


 これは多分ホテルか何かかな?と思って左手を見てみると、あからさまに受付があり、NPCが立っていたので話を聞いて……。


 「あらー!テルじゃない!私を追いかけてきたの?か~わ~い~い~」


 完全な不意打ちだった。


 背中を向けてソファに座っていたのがさっきの変質者だとは思いもよらなかった。


 「さっきは、どうも」


 「まぁ、まぁ、同志なんだから堅い事は言いっこなし!隣に座ったら~?」


 「いえ、今はちょっと情報収集を……」


 「え!何々?情報収集って!は!まさか~!この町の領主に不正の疑いがあるから調べて打ち倒すのね!」


 「え?あ?いや……この町の領主は不正してるんですか?」


 「この町に領主はいないぞ」


 自分たちの会話にさらっと入ってきたのは受付にいた店員さんだった。近くで見てみると自分より頭二つは大きく、更には髭がやたらもじゃもじゃとして、山小屋の主って感じだ。


 「じゃあ、何なのよ~!ウイリアムテルが情報収集っていうならそういうんじゃないのぉ?」


 「いえ、メープルシロップを集めるのに、メープルの木の情報をですね……」


 「シロップなら売ってるわよ?お店に案内してあげましょうか?いいわね~!じゃあ二人でパンケーキでも食べ行く~ぅ?」


 「いえ、すでに行ってきて……」


 「どこの女とよ!私を差し置いてパンケーキ食べるなんて!同志よね?私達!」


 「いえ、メープルシロップを薬の素材にするのに買おうと思ったんですけど、採集依頼を貰ったんです」


 「そういう事?!なんだ~最初から言いなさいよ~もぅ~!それで?どこで手に入るの?メープルシロップ!」


 「なんか攻撃してくる木があるらしくて、その木の情報をですね……」


 「知ってる知ってる~!最初から私に聞きなさいよ~!私も集めに来たんだから~!」


 「メープルシロップですか?」


 「ノー!ハードメープルていう木材よ!本当だとね床材とかにいいんだけど~耐摩性がいいっていうか~家具なんかもいいけど~日本だとこけしなんかにも使うのよ~!」


 「へ~じゃあ、家具を作るのに?」


 「ノー!何のためにこのゲームで<木工>やってると思てるの?銃のカスタマイズの為にハードメープルを使うつもりなの!」


 「ああ、そうですよね。それで、メープルシロップが採れる木っていうのは……」


 「聞いたことないわね!NPCが採れるってんだから採れるんでしょうけど……私は知らないわ!」


 やたら自信満々に言い切られたんだけど、自分はずっとメープルシロップの話をしてるんだから、知らないなら知らないで、放っておいてくれればいいのに……。


 「シロップも木材も同じ木から採れるがな?」


 なんだかんだ何も言わずすぐ近くにいたNPCがちゃんと答えをくれた。いやくれてしまった。


 「え~!本当に~!やだ~じゃあ一緒に行きましょうよ~」


 「えっと、まだ情報収集の途中……」


 「いいからいいから~!しゅっぱーーーつ!」


 まさかの変質者と同行とは……大人は守ってくれない。自分の力で自分の身は守らないと。

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