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93.森林『テラフォーミングってやつは火星の風情とかどうでもよかったんだろう』

 

 「うわ~~……大森林だ~」


 牛車に揺られ、隙間から見える景色にそんな感想しか出てこない程、目の前に広がるのはどれだけの歴史を重ねたのかも想像できない大木の並ぶ見渡す限り黄色い光景だった。


 「まあ、確かに見るからに森ではあるけどさ!もう少しなんかないのかよ?」


 「なんかって言われても……カナダみたい?」


 「カナダか!いいセンスだなラビ!」


 コットさんには毎度の事ながらちょっとあきれ顔で見られ、ジョンさんには相変わらず謎の肯定で返される。


 なぜカナダかと言ってしまったかというと、本当に雰囲気の話でしかない。


 ただ、初心者の街のジャングルの様な森と比べれば、整然と並ぶ同種っぽい木の森が何となく写真で見た事のあるカナダのなんかの森の写真に似てるなと思っただけの事。


 ただ黄色く色づいているのは、今は秋なのだろうか?その割に寒くはないのだが?ちなみに時刻はお昼である。


 「何考えてるか大体わかるぞ。季節は秋じゃないんだ。年がら年中あそこの森の木は黄色くて、またの名を黄金の森!」


 「ちなみに金は採掘できない」


 「おい!オチを言うなよ!」


 「いいだろ別に?さして面白いこと言うんでもないんだし」


 「……まだ序盤に行ける場所なんだから金とか採掘できないのは当たり前なんじゃ?」


 「いや、うん。そうなんだけどよ……まぁなんだ?通称の割に大して何がある訳でもない町でさ……なんかそういう、キャッチフレーズっていうか……」


 「ほら困らせちまった。誰が考えたかわからんつまらんギャグにこだわるからそうなる」


 コットさんが何を言いたいのかはよく分からないが、ここでちょっと疑問がある。


 「ところで、なぜ何がある訳でもない町に向かってるんですか?」


 そう、わざわざ大草原の羊の村から牛車で揺られてきた理由をまだ聞いていなかった。


 ある日突然『そろそろ移動しないか?』と尋ねられ、羊毛を刈るか蝙蝠を狩るくらいしかやることのなかった自分は、特に何も考えずについてきたのだった。


 ちなみに壊れたヘルメットを手に入れて以来、羊に眠らされることはなくなったので、例の過去の話の続きは何もわかっていない。


 ちなみのちなみに服飾女子二人はどこか大きな街にとっくに出かけており、次は回復の何やらスキルだかを探すとか言ってた気がする。


 回復ならGハーブのタブレットを食べれば済むと思うのだが、きっと違う何かがあるのだろう大きな街には……。


 「理由はいくつかあるんだけど、ラビは何のためについてきたんだ?」


 「誘われたから?」


 「だろうな。でも安心しろ!もちろんラビの事も考えた上でのこの町だから」


 「そうなんですか?」


 「おう、一応俺はとにかくガンスミスの少ない土地に行って、困ってる連中の銃をみてやるのが目的だから、ある程度どこでもいいんだわ」


 「コットさんは正直どこでもいいと……」


 「おう、今回は俺の用があってな。前にちらっと話したろ?決闘の大会の事。あれの予選とでもいうのかねぇ……必要な決闘証明書があるんだわ」


 「必要な決闘証明書?」


 「大会って規模じゃないが、村や町や街ごとにやってるイベントみたいなもんだな。それに勝てば貰える証明書さ」


 確か前にジョンさんは街中の戦闘が専門って言ってたし、そういうこともあるのか。


 「予選って事は何か所か回らないといけない?」


 「そうだな。でもま!その辺はおいおいでいいだろ。問題はラビの為になるかって話なんだが、ラビは木材必要だろ?」


 「確かに手に入れば助かります。クロスボウもグレードアップしたいし」


 「だろうと思って、ここに来たわけだ。この辺は見ての通り木材も手に入りやすいし、ラビの好きな自然の中での自給自足もできる!」


 「自然の中での自給自足?」


 「ラビは自給自足やめたのか?」


 「いえ、お金は多少たまりましたけど、毒作ったり薬作ったり矢を作ったり、いろいろ入用なので、自給自足はしますけど?」


 「え?じゃあ何で疑問形で返されたんだ?」


 「別に自然にこだわってるわけじゃないので……」


 「じゃあ、何で森林迷彩みたいな緑のまだらのポンチョなんか来てるんだ?」


 「偶々手に入って気に入ったから?それにこの森だと多分迷彩にならないですよね?葉っぱが黄色いんだから」


 「あ……そうなのか?てっきりそういう屋外のフィールドワークっていうか、キャンプとかサバイバルとかに興味あるのかと勝手に思って……」


 「無くはないですけど、あるという程でもないですかね?」


 「ちょっと先走ったか?まぁでも木はある。虫や獣もいる。ラビに必要なものは手に入るだろ!多分な」


 「確かにそうですね!毒とかも手に入りますかね?」


 「毒は正直分からないな。だって集めてる奴見た事ないし」


 「ああ、じゃあ薬は?」


 「メープルシロップになんかそんな効果あったような気がしたな。料理かなんかに使うとバフがかかりやすいとか?」


 「料理か……<調合>の次は<料理>かな……」


 「どんなスキルを使うのかは自由だが、あれもこれもとると後がきつくなるから、よく考えて取得しろよ」


 「そうですよね……」


 確かに今自分が使えるスキルのうちアクティブはほとんどが生産系のものだし、これ以上生産系を増やしてどうするのかという問題はある。


 ゆくゆく消すこともできるとは聞いてはいたが、どうしたものか?


 そんなことを考えている内にいつの間にか森を通る一本道に入り、両側に大きな木を見上げる。


 ふと前方を見やれば、大きな木組みでできた町の門らしきオブジェクトが徐々に近づいてきた。

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