表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/166

91.過去3『羊の夢』

 Oハーブ入りの餌を羊達が食べてる間に自分は麻痺して動かなくなった大蝙蝠にとどめを刺して<解体>する。


 手に入ったアイテムは、前に蝙蝠を狩った時と代り映えはしなかったが、数が多かったのでおいおい素材として利用させてもらおう。


 しかし、この辺だと羊と蝙蝠が縄張り争いしてるのかな?犬と猿みたいに……。


 でも普通なら蝙蝠って洞窟とかに住んでるんだろうし、こんな木もない広いだけの草原になんで住んでるんだろうか?


 そんなことを考えていると、さっきから自分の周りをうろうろしていた羊が、自分の背中から軽く体当たりをしてきて、そのままどこかに歩き去ろうとする。


 何だろうな?とは思いつつも見送っていると、こちらを振り返り、


 「メェェェ」


 と鳴いて、動かない?


 少し考えて、ついて来いということかと理解して、羊の後を歩いてついていく。


 さっきまで餌を食べていた羊達も、それぞれ銘々に歩いているが、目指す方向は一緒らしい。


 少し進むと小山?というには小さいし、だからと言って無視できないサイズの何かが見えてきて、どうやらそこに向かっているんだろうという事も周囲の羊の様子から分かった。


 近づいてみてみれば、びっちりと草やツタの絡まった建物らしい。


 そして、下の方の隙間から羊達がその中に入っていくのを見て、自分も追いかけるように匍匐で入り込んでみると、そこはただのだだっ広い空間になっていた。


 内側から見ると金属らしき素材で組まれた小屋?まぁ全然小さくはないんだけど、朽ちた飼育舎って感じか?


 どうやらそこが羊達の家らしい。


 ふと気が付くと、次から次へと帰ってくる羊達にどんどん押され、入り口から遠のいてしまう。


 慌てて戻ろうと、羊の間をかき分けていると、いきなり目の前が割れ、案内してくれた羊が目の前に立っていた。


 「メェェェェェェェェェェェェェェェェェェ……」


 鳴き声がだんだん引き延ばされていくような不思議な感覚と共に体から力が抜けていく。


 妙に暖かくて柔らかいものの上に倒れたと思ったら、目の前が真っ暗になった。



 気が付けば草原の真ん中に立っていた。


 視界のぼやけ方でまた過去イベかと気づくくらいにはこの展開にも慣れた。


 周囲を見渡そうととりあえず振り返ると、すぐ後ろには壁があり、少し離れてみてみれば大きな建物だ。


 ついさっきまでの展開から言って、多分さっきの飼育舎の過去の姿なんだろうと思う。


 この人物が何者で、何を目的としてこの場にいるのかはよく分かってないが、丈夫そうな服、自分達が使うのとは雰囲気の違う大きな銃、どう考えても重装備だし、危険があると予想してこの場に立っているのだろう。


 『選択してください』


 「今回は何の選択ですか?」


 [あなたは現地に適応した羊を保護しましたが、夜間にそれらを捕食し、存続を邪魔する可能性のある敵性生物を確認しています。現地の命のサイクルに任せるか、羊が繁殖できるよう手助けするか選ぶことが可能です]


 「じゃあ、羊を保護する方向でお願いします」


 わざわざ飼育舎を建てたんだし、多分この人はそうしたかったんじゃないかと勝手に思いを巡らせる。


 まぁ、本当にこの人が建てたものかは分からないけど、明らかな人工物だし、羊のシェルターを作りたかった人がいたのは間違いないだろう。


 『羊の捕食者の巣に向けて移動します』


 そう文字が流れると、そこからはオートで近くにあった車に乗り走り出す。


 今までは過去はいつも夜だったのだが、今日は昼環境らしい。おかげで周囲が良く見渡せる。


 草原の草が今よりずっと短いので、途中の沼地や所々に実のなる低木があるのが良く見えた。


 そんなこんな周囲を見渡している内に、何やら道が下りへと変化し、車が止まるとそこには壁に大きな穴があった。


 明らかに人工的なそれは、多分ここの人達が何らかの目的で開いた、それこそ坑道的なものなのだろう。


 『選択してください』


 [調査の用の坑道内に危険な生物が住み着いたことで、羊達の生活が脅かされています。すでに調査済みの坑道を閉鎖するための手段を選ぶ事が可能です]


 「可能ですって、言われてもな……」


 口ではそう呟いているのに、体は勝手に動き車の荷台を開くと明らかに危険物とわかる爆弾の束と、長い鉄パイプの束が並んでいた。


 選択って、どっちで塞ぐかってことか?だとしたらさすがに爆弾は過激すぎない?


 「鉄パイプでお願いします」


 『資材を使用、坑道の入り口を塞ぎました』


 鉄パイプを担いで、すでに入り口に設置されてる器具にはめ込んでいくと、鉄格子が出来上がり、ちょっとやそっとでは破壊できないであろう堅牢さがうかがえる。


 『羊達の繁殖の為、一時を稼いだ貴方。十分に増えた後、現地生物達の行く末は火星の自然にゆだねられた』


 |

 |

 |


 ふと、意識が戻ると元の草の絡まった飼育舎の前に立ってた。


 何かが起こりそうで、何も起こらない。自分が選択した結果が何につながるのかもよく分からないが、とりあえず今も羊達はいて、夜になると蝙蝠が襲ってくるって訳だ。


 そんなことを思いつつ、村の方に足を向けるといつの間にやら自分が両手に何かを抱えていることに気が付く。


 月の光に照らして見てみると、機械部品や配線みたいなのが飛び出した丸い何か。


 〔旧型環境鉄帽〕(破損)


 どうやら〔旧型環境服〕のセット装備らしい。これもまた破損となってるが確かに破損してるなとよく分かる見た目に納得しかない。


 とりあえずアイテムボックスにしまって、村に向かうと、遠くから羊達の鳴き声が聞こえた気がした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ