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90.沈黙『鳴かない羊たち』

 こちらを圧するようにゆっくりと近づいてくる大蝙蝠を見やりながら、先ずは当たらないクロスボウを背中に戻す。


 どういうタネか、はたまた自分のステータスが低いだけなのか、それを調べる時間も方法も思いつかないのだから、別の手を考えるしかない。


 幸い足の力はすぐに戻ったので、立ち上がりつつ首にかけたイヤーマフを耳に装着。


 多分だがさっき力が抜けたのは大蝙蝠の何らかの攻撃か、能力だろうと思う。ただ大きな音を出しただけの可能性も捨てる事は出来ないが、いずれにしても力が抜けてちゃ戦えない。


 さて、クロスボウが当たらないとなると手持ちですぐに使える武器は、投げナイフ、作業ナイフ、各種毒瓶、ディテクティブスペシャルといったところ。


 多分投げものに関してはクロスボウよりさらに飛ぶ速度に劣ると思うし、当てる自信はない。


 ディテクティブスペシャルに関しては、有効射程が短いので相当近づかないと当たっても大したダメージにならない筈だ。


 こちらを警戒しているのか、ゆらゆらと上下左右に緩急つけて揺れ飛ぶ大蝙蝠から目は離さずに、背負ったバッグから罠を一つ取り出す。


 ただ熱を発するだけの装置、毒類とくっつけることで気化させた毒を吸わせることができるそれを手に取り、麻痺薬とくっつけていつでも使えるようにして足元に置く。


 さて、かなり近づいてきてそろそろ投擲範囲内に入ってきたが、どうするか……。


 当たれば継続ダメージを与えられる毒か、敵の動きを止める麻痺か……今回は酸で行くかな?


 酸は多少のダメージと相手の耐性や防御力を下げる効果があるし、結構なサイズの大蝙蝠相手に一発で毒やマヒが効かない場合の事も考えれば、耐性を下げておくのは間違いない気がする。


 左手に酸の瓶、そして右手に投げナイフを持って、大蝙蝠が近づくのを待つ。


 近づけば近づくほど距離感が狂うようなデカさに思わず夜の闇が広がって飲みこもうとしてきているのではないかと幻視した。


 空中で不意に止まり、その不自然な動きに釣られるように手が動く。


 まずは左手の酸を下手投げで敵頭部めがけて投げ上げると、こちらの行動を手に取ったかのように動き、左にぬるっと避ける大蝙蝠。


 それを追わず、寧ろ右に一歩踏み出し、体を傾けてナイフを投げつけた。


 パリン!……。


 夜闇に不吉を知らせるような妙に軽い瓶の破裂音と共に、酸の飛沫が大蝙蝠へと降りかかる。


 大蝙蝠の膜の様な薄い羽根からうっすら煙のエフェクトが上がり、酸の着弾を知らされ、同時に足元の麻痺煙罠を蹴って、発動させるとうっすらと黄色い靄がかかった。


 そのままディテクティブスペシャルを構えると同時に大蝙蝠が襲い掛かってきたので、発砲!


 頭部を狙ったつもりが、羽に小さな穴を空けただけだったが、それでも大蝙蝠は嫌がるように空中へと舞い上がる。


 「ゲホッ!うぇ……」


 唐突に聞こえるエヅきが、自分から発せられたものだと理解した時、体が動かないことに気が付いた。


 そのまま膝をつき、次に手を地面につく。


 動きは緩慢なのに、心の中は焦りでパニックを起こしている。


 更には夜だというのに目の前にかかる影、どう考えても大蝙蝠が月を遮っているんだと理解し、ゆっくり顔を上げれば、羊が蝙蝠に襲い掛かっていた。


 それもさっきの一匹だけじゃない、どこから湧いてきたのか3匹の羊が飛び跳ねて大蝙蝠に襲い掛かるも、相手は空を飛んで楽々とかわしていく。


 その様子を見ていると、左脇が妙に暖かいのに気が付き、振り返るとさっきの羊が頭で自分の脇を押していた。


 どういうことだ?と羊の意図を考えている内に少し気持ちが落ち着き、ゆっくりなら動けるというそれまで無意識にやっていた行動に気が付き、自分がマヒにかかっている事を自覚した。


 解痺のタブレットを一つ口に入れてかじれば、体が動きを取り戻す。


 すぐさま羊たちに加勢するべく大蝙蝠に発砲すれば、また羽に小さな穴が開いた。


 羊たちが、大きく舞い上がる大蝙蝠の方を向くと一斉に口を開き、


 「メェェェェ……」


 その鳴き声を中断するように、また大蝙蝠のあの大きな音が鳴り響く。


 その音にひっくり返ったり、伏せてしまう羊達だが、イヤーマフをしているおかげか自分は何ともない。


 怯む羊に急降下してきた大蝙蝠が爪で引っ掻き、更にもう一頭に取りついたかと思ったら、嚙みついた。


 特に何を考えるでもなく、反射的に血を吸ってると思い、もう一本酸の瓶を投げつけると、今度はクリーンヒットして、盛大に大蝙蝠から酸の反応する煙のエフェクトが立ち上がる。


 吸血を中断して舞い上がった大蝙蝠を目で追い、次の仕掛けを用意。


 現状自分が攻撃を当てるには、動きが止まったところを狙うか、酸の飛沫や煙上の毒罠のように範囲効果を狙うしかない。


 そうなるとやはり動きを止める麻痺状態になんとか敵を追いやりたい。


 ならばやることは一つ。さっき自分で食らったばかりだが、麻痺煙罠を複数作り地面に設置しておく。


 頭上でふわふわと揺れる大蝙蝠とのにらみ合い、先にしびれを切らしたのは大蝙蝠の方だった。


 空中から落下するように急襲してきたところをディテクティブスペシャルで迎え撃つ。


 先に当てたおかげか、爪攻撃がそれたところで地面の麻痺煙罠を発動。


 これを繰り返して何とか!


 気合を入れなおした矢先、大蝙蝠が地面に落ちて動かなくなった。


 どうやらマヒが効いたらしい。


 周囲からいつの間にやら何匹も羊が集まってくるが、なぜか一匹も鳴き声を上げない。


 いつもはどこでも平気で、好きに鳴いているのに、なんで今日に限って鳴かないんだ?夜だから?


 不思議に思っていると、どいつもこいつも引っ掻き傷があった。


 蝙蝠の爪……あっ病毒か!摘んだばかりのOハーブと羊の餌を混ぜて投げやると、一斉に集まって食べ始めた。

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