表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/187

85.廃鉱『どうやらただの羊の村じゃなかったらしい』

 「もし、その気があるなら一つ依頼を受けてみないかい?」


 決闘のあくる日、村の試射場で射撃の練習をしていたら、食堂のお婆ちゃんに話しかけられた。


 「あの……以前からちょっと不思議だったんですけど、どういった役職と言うか……」


 「私かい?まぁ普段は知っての通り食堂の店主だけどね。こんな辺鄙な村じゃ、一人何役もこなさなきゃ手がまわらないだろ?だからこの試射場の管理もやってれば、決闘の立会人もやってれば、保安官代理として治安維持やあんたみたいな流れ者に仕事を斡旋したりもする。まぁ、荒事専門の便利屋ってところかね?」


 「店主さん……だったんですね」


 「そりゃ、羊狩って捌いて出して、店の管理もしてるんだから店主だろうね」


 確かに羊と人は一歩外に出れば血で血を洗う関係だった筈だし、羊狩りも荒事になるのか。それにしてもパワフルなお婆ちゃんだな。


 「何か考え事してるようだけど、仕事はどうするんだい?」


 「内容次第ですかね?」


 「そりゃそうだ。慎重なのは良い事だよ。実はこの村の奥には古い廃鉱があってね。そこの調査を頼みたいんだ」


 「廃鉱の調査ですか?」


 「そうさ。正直な所採れる鉱石の量も質も大した事ないし、昔々に調査段階ですぐに廃棄された物らしいんだけどね。稀に獣なんかが入り込むのさ」


 「廃鉱に獣が入り込むと何かまずい事でも?」


 「一概には言えないね。だからあくまで調査なのさ。別に殲滅じゃなくていい。どんな状態か確認するだけの簡単なお仕事さ」


 「簡単な仕事ならありがたいですけど、何か裏があります?」


 「裏なんてないよ。これから全部説明するつもりだったさ。一応その廃鉱には可燃性のガスが所々溜まっててね。いきなり命に別状があるほどの高濃度じゃないんだが、一応銃火器は使用禁止にしてるんだ」


 「ああ、なる程……クロスボウとナイフで戦いつつ見て来いって事なんですね?」


 「そういう事さ。私がこうしてナイフが得意になったのも自然の流れでね」


 そう言いながら、お婆ちゃんがサラッと、一切の無駄のない動きで、ナイフを的に投げると三本のナイフが綺麗に突き刺さっていた。


 「分かりました。取り合えず見て来るだけでいいって事であれば、行ってきます」


 「悪いね。どうにも歳と共に暗いところじゃ目が見えづらくて仕方ないんだよ」


 なる程、普段はこのおばあちゃんがやってた仕事だけど、目が見えないから変わってくれと、そういう事なら手伝わない訳にもいかないだろう。


 そして廃鉱の場所を聞くと、本当にすぐ近く、それこそ試射場のすぐ裏手からちょっと歩いた場所にそれはあった。


 一帯は草原に囲まれて、近づいてみて初めて気がつく地面の割れ目。


 階段状になっているそれを恐る恐る降りていくと、両側から覆い茂った草が塞いでいる所為で狭く感じた割れ目は、実は結構広さのある物だとすぐに分かった。


 クロスボウを構えつつ、投げナイフの状態を確認し、そのまま階段を下りていく。


 確かに入ってくる光が少なく、暗く感じるが全く見えないと言う程でもない。


 赤茶の壁はこのゲームを始めてから非常に馴染みのある火星の土だ。


 所々壁に大きな穴が開いているのは、調査用の横穴の跡だろうか?


 もしかしたら獣が住み着いているかもしれないとの事だが、今の所獣が出て来ても身を隠す場所はなさそうだ。


 つまり、正面切っての戦闘しか出来ない。調査と言うからにはもう少し、隠れて進む道でもあるもんだと勝手に思っていたのだが……世の中そう上手くはいかないか。


 階段を降りきると、綺麗に整地された地面が広がり、そのまま奥へと道が続いている。


 <聞き耳>で辺りを窺いながらゆっくり進んでいると、どこかでパタパタパタ……と軽い音が聞こえる。


 何となく鳥かな?と思い、その方向へ向うと、そこには横穴があった。


 入れそうではあるが、いきなり堂々と正面切って入り込む程の度胸はない。


 ただぽっかりと土壁に開いた穴の縁からそっと中を覗き込むと、かなり暗い。


 松明の一つも使ってみたいが、火気厳禁だし、懐中電灯とか今後必要だなと思った所で、突然暗闇が膨張した。


 思わずその場に尻餅をつくと、自分の顔を掠めるように飛んでいく黒い何か?


 すぐさま、その姿を目で追うと、はっきりと形までは分らないが、その歪な飛び方から蝙蝠だと分かりクロスボウをそちらに向けると、同時に向こうもこちらへと向ってきたので、狙いをつけて引き金を引く。


 取り合えず普通の〔改造ボルト〕を撃ち込んでみたのだが、あっさり吹っ飛び地面に落ちた蝙蝠は、矢が刺さったまま再び飛び上がるも、すぐに力を失い再び落下した。


 死んだのを確認して<解体>すると、


 〔吸血牙〕〔病爪〕〔飛膜〕


 といったアイテムが手に入ったのだが、コイツ吸血蝙蝠だったのか?しかも病とかついてるけど、新しいデバフかな?と一気に警戒心が高まる。


 まだこの病と言うのが何か分らないが、確かにこんなのが大量に繁殖していたら事だし、そりゃ様子を見て来いって依頼があるのも頷ける。


 再び横穴を覗くと目が慣れてきたのか、更に二匹の黒っぽい影が見えたので、クロスボウで撃ち落す。


 てっきり、一体撃ったら次も襲い掛かってくるものと思ったら、どうやら同種でもリンクはしてないらしい。


 取り合えず見える範囲の蝙蝠を処理して、横穴に入りこんでみる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ