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81.欠片『見知らぬアイテムとクラス的な何か』

 「ピース、オブ?ピースス……ピーシーズ?……あれだ多分思い出の欠片」


 村に戻って一先ず集めてきた〔羊毛〕を整理しようとアイテムボックスを開いたら見慣れぬアイテムが入っていた。


 流れから言って、あの夢みたいな感じのイベントというか、過去の火星調査の記憶みたいな事なんだろう。


 アイテムボックスの枠を一個無駄に使っちゃうのかな?と最初はあまりいい気もしなかったのだが、どうやらコレ、任意の熟練度を上げてくれるらしい。


 熟練度の説明は前に聞いたものの、その後ずっと放置な自分としては凄く使えるとは言いがたいが、でも悪いものでもない事は理解した。


 という訳で久しぶりに熟練度を覗いてみると結構あれやこれやとゲージが伸びている。


 はっきり言って1個づつ確認するのは面倒だし、どうしようか?


 素直にクロスボウか、何なら投げるもいいし、罠も捨てがたい。


 少しの間迷ったものの、一旦諦める事にする。


 どういう条件で手に入るかも分からないアイテムを今適当に使ってしまう事に抵抗を覚えた。


 アイテムボックスの枠は確かに貴重だが、アイテムバッグにしまって、それをボックスに投入すればかなりの量を持ち歩けるんだし、まだ焦る時間じゃない!


 一旦ステータスを閉じようとして、ふと違和感に気が付いた。


 いつの間にか、スキルのセット枠が4つになってるし、よくよく見てみたら、アビリティセットの枠も増えてるじゃん。


 いつも保安官とか誰かが説明してくれるのに、今回は知らぬ間に増えていた。これがもう新人じゃないって事なの?


 それにしたって、増える条件が分からないんだけど、どういう事なのよコレ……と思って他に異常がないかとよくよくステータスを見てみると、変な所があった。


 名前のすぐ下に英語の表記があるな~とは思っていたのだが、どうせ読めないからと放置していたそれが、いつの間にか変わっていた。


 放置こそしていたものの、全く読めない訳ではなかったそれは、当初ニュービーみたいな新人って感じのニュアンスだったのだが、いつの間にかHoundになっている。


 多分保安官が言っていたハウンドってやつだろう。保安官から聞いていなかったら、多分ホウンドと読んでいた所だ。


 コレ位しか大きな変化はないし、多分そういう事なんだろう。他の人はあだ名が変わるたびにここの英語が変わるのに気がついて、役職のランクアップ的なそれに気がついていたんだろうけど、自分のような英語の苦手な人間にはちょっと不親切じゃないか?


 しかしそんな文句を言った所でどうしようもない。何しろ開発したのが英語圏のチームなのだから、自分がとやかく言った所で、何が変わるわけでもない。


 寧ろ今自分が考えるべきは、新たなスキルをどうすべきかという事だろう。


 アクティブスキルは既に結構あるし、必要に応じてという事で保留しておく。問題はPパッシブスキルの方だ。


 こっちは常時使用のスキルだが現状、


 <聞き耳><察知><急所>


 の三つだがもう一個欲しい所。


 そして今取得出来るスキルを見漁っていると、一個気になるはなるのものの、また英語表記の<quick>とある。多分早いとかそういう感じだったと思う。


 スキル説明は運の良い事に日本語訳が当てられていたので、ざっと見てみると、生産や剥ぎ取り速度に加えて、再装填やドロー?のスピードが上がるらしい。


 一応前提としてAGIとDEXに<精密>スキルを持っている事が必須とか。


 前提条件が多いほど上位のスキルって感じもするし、何より再装填速度は魅力だ。


 スキルを取得し、村の一番奥へと向う。


 実はまだ利用した事はないのだが、この村の一番奥には明らかに誰かが盛った土手の様な物があり、そこには棚に並んだガラス瓶が置かれていた。


 もう、十中八九射撃場だろうと目星はつけていたので、行ってみることにする。


 草原の中の村にぽつんと瓶が並べられただけの一角をどうやって利用したものか?勝手に瓶を撃っても怒られそうだし……。


 頭を掻きながら、ちょっとあてが外れたかな?と思っていたら、


 「なんだい?撃たないのかい?ここで見ててやるから遠慮なくやりな!」


 食堂のおばちゃんがいつの間にか、背後に立っていて、声を掛けてきた。


 今日は白エプロンじゃなく、黒いレザーで全身を揃えていてかなり格好いい姿だったが、喋り方はこっちの雰囲気がよく似合っている。


 まぁ、許可が出たので早速クロスボウを放ち、更に再装填から一発放つと結構いい感じだ。


 「やるじゃないさ!」


 そう言いながらおばちゃんは自分の前の机にナイフを5本ほど刺して立てた。


 「あの~これは?」


 「あんた、ナイフも使うんだろ?見りゃあ分かるさ!なかなかいい趣味してるようだし、見せてみな」


 そう言うので、一本右手で引き抜き、そのまま下手投げで瓶に投げつけると、瓶に触れる前に二本目を左で引き抜いて、他の瓶を狙う。



 パン!パリン!……パリン!パン!


 5本全部投げつけると、一発は綺麗に刺さって、瓶が割れすらしなかった。


 「悪かないね!『rapid throw』を使いな!」


 「何ででしょう?」


 「銃みたいに下品じゃないし、抜く、構える、狙う、撃つみたいなまどろっこしさがない分、誰よりも早く敵に攻撃を与えられるからね」


 「その分ダメージが……」


 「何言ってんだい!クロスボウ使いがダメージなんか気にしないんだよ!アビリティを取得したら店にきな!記念に高級ラムを振舞うからね!」


 そう言って、店の方へと向ってしまうおばちゃん。


 何だかんだ勢いに押されて、新しいアビリティも手に入れたが、コレでいいのだろうか?


 まぁ、肉は美味しかったので、良しとしよう。

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