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80.過去『せめてゲームルールくらい教えて欲しい』

 羊に連れられ、今見上げているのはさっき自分が倒れた場所にあったであろうアンテナの在りし日の姿。


 どっしりとした重量を感じさせる金属の上部には犬とかが偶につけてるカーラーのような丸いアレ。


 シルエットでさっき見たものと同じだとは思うのだが、その隣には見慣れぬキャンピングカー?


 キャンピングカーにしては重装甲と言うか、物々しい雰囲気だが、戦車にしては戦闘一辺倒という風にも見えない。


 何しろ窓から中の様子がちらりと見えるが、キッチンだよな?多分。


 羊はそのキャンピングカーの前で立ち止まり、のんびり周囲の草を食み始めた。


 『選択してください』


 急に声が聞こえたと思ったら、目の前に文字が表示された。


 どうやらヘルメットの内側にディスプレイされて、それにちゃんと視点が合うようになっている様だが、何とも今までと急に変わった雰囲気に戸惑いを隠せない。


 [周囲の様子を窺う為、探索に関するスキルを所持している場合使用可能です]


 <聞き耳> <察知>


 2個だけ選択可能なのだが、問題はヘルメットに表示された文字をどうやって選択するかだ。


 「<聞き耳>を選択したいんだけど、どうすれば……」


 『<聞き耳>を使用しました。SNS30 確率90%……使用できました』


 [あなたは周囲の様子を<聞き耳>で窺う事で違和感に気がつきます]


 ヘルメットの内側に矢印が映し出され、その方向を向くと遠くに黒い点の様な何かが見える。


 [それは敵性ドローンの様です。あなたは熱線銃(ブラスター)を所持しています。使用しますか?]


 「え?敵なら……じゃあ使用します」


 『熱線銃を使用しました。DEX30 SNS30 確率90%……命中、敵性ドローンを撃破しました』


 勝手に体が動き、銃を構えると、大型銃とは思えないほど軽い反動の後、赤い何かが飛び遠く点の様な敵性ドローンが爆発した。


 どうやらステータスは装備を加味していない自分の素の状態を参照しているようだが、そうなるとこの謎のモードが続いた場合、接近戦とかになったら危険なんじゃないか?


 STR5 VIT5 AGI30 DEX30 SNS30


 コレが現在lev20の自分のステータスだ。1レベルごとに5づつ振れるステータスポイントを必要に応じて振ったらこうなった結果だけの物だが、こうやって一々行動の度に参照されると結構不安になる。


 とにかく接近戦だけは絶対駄目だ。<聞き耳>で敵に近づかれる前に何とかしないと!


 しかし、現状選択肢も現れないし、次は何をしたらいいんだ?


 さっきのドローンの素材を回収に行くか、それともこのいかついキャンピングカーの中を見てみるか?


 一先ず手近から確認してみようか?


 キャンピングカーの扉の前に立つと、扉の横には映画とかでしかみた事のないようなやたらと立派なセキュリティが付いている。


 この車が凄いと言うより、プレイヤーに対して見逃すなよ!って言うメッセージが強すぎるそれに軽く触れると、カシュッっと軽い音がして、扉が少し内側に動き、そのまま横に開く。


 自分は中に歩を進めるが、羊は外で待機のようだ。


 [貴方は拠点に戻った。熱線銃を充填ポッドに置き、環境服をメンテナンス室に投入した]


 車に入ってすぐ横にこれまた外観に似合ういかつい機械があると思ったら、充填ポッドと言うらしい。


 実弾式の銃じゃないようだし、ここでエネルギーを充填しているのか?


 そして右手には何やら投入口があるが、これがメンテナンス室に繋がってるのか?


 何をどうやってメンテナンスするかは全く分からないものの、自分が着ていた服とヘルメットを投げ込む。


 代わりに額から頬骨まで隠れそうな大きなゴーグルを手にとって掛けて、もう一枚扉を開ける。


 取り合えず扉の先を見渡すと、こじんまりとした住環境が効率的といえば聞こえがいい物の、整然と詰め込まれた部屋だった。


 取り合えず、パソコンのようなディスプレイの前に立つと、そこには見慣れぬ文字の羅列。


 同時に一緒に映っているのは自分が手に入れたばかりの環境服みたいだ。何故みたいかと言うと、完全系っぽいから?昔はこういう形だったんだろうって言う感じ。


 うん、適当にいじって何かあっても嫌だし、一旦スルーしよう。


 取り合えず座れそうなベッドに腰掛けると、ゴーグルに文字が表示された。


 [地球よりずっと厳しい環境、いつ襲ってくるとも知れない敵性ドローン、貴方は疲労している。休息に必要な物は何か?]


 食事 睡眠 


 「両方じゃないの?」


 [貴方は食事をしてから睡眠を取る事にした]


 謎のペーストが並べられたプレートを引き出し、それを黙々と食べる。一応味はケチャップ味の何かと塩味の葉野菜っぽいのと肉っぽい何か。


 そして、食べ終わるとベッドに横になり目を閉じ真っ暗になったのだが、例の文字だけはちゃんと見える。


 [火星のテラフォーミングは成功していると言えるが、現地の生物の異常な適応やドローンが何故急に敵対したのか不明な事は多く、こうして現地に調査員を派遣してはいるものの、研究は遅々として進まない。国や企業は利益の為と入植計画を進めている様だが、調査員としては不安を隠せない。しかしそれ以上に確かな疲労に貴方は無意識の世界に引き摺り込まれた]


 目が覚めると夜の草原に立っていた。


 横には例のシルエットしか原形を留めていないアンテナがある。


 やっと戻ってきた安心感にホッと息をつき、村へと戻る事にした。

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