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71.牛車『火星の生活は牧歌的か?』

 何が必要になるかも分からないので、現状自分で手に入れられる素材を木のバックパックに詰め込み、更にそれをアイテムボックスに入れる。


 相当量の荷物だし仮にPK されて落とそうものなら、がっくり落ち込む事は目に見えるのだが、それでも殆どは素材か薬だし、その時はその時と思って諦めよう。


 お金だけは銀行に行けばどの街でも引き落とし可能と言うことなので、小銭以外預けっぱなしだ。何だかんだ稼いでるし、10万くらい持ち歩くとする。


 約束の日、約束の時間、街から荒野に出るとまだ昼間なのでかなり暑い。すぐに昼用の空調服のファンを起動させ、街の片隅の衛兵の近くで待つ。


 「おっ!来てたか!それじゃあ、こっちだ。話は移動中にしよう!」


 コットさんとジョンさんが連れ立って、現れたのでそのままついていくと、簡素な屋根とベンチだけの建屋の横に、謎の巨大生物とそれが引く大きな車?が停留していた。


 「何ですか?コレ?」


 「牛車だな」


 ギッシャ?と聞こえたが、多分馬車的なあれだろう。ギッとは一体どんな動物なのか、刺激しないように距離を取って、ゆっくり前から見ると、


 大型の象くらいのサイズだが牙の代わりに大きな角が生え、体表は真っ黒な毛で覆われているものの、癖がなく真っ直ぐ体に張り付くような形なので、非常にスマートで筋肉質の生き物に見える。


 何かゲーム出てくるモンスターみたい……コレゲームだったわ。多分、火星に来て進化した生き物なんだろう。


 ジョンさんとコットさんは早々にギッシャに乗り込んでいたので、自分も乗ろうとすると運賃は500クレジット。自分のディテクティブスペシャルと同じ値段だったので、大変お安い。


 引かれてる車?は屋根と壁こそある物の座ったら丁度外が見える程度の高さで、あとは吹き抜けだ。観光用の人力車ならぬギッシャに設置された座席の一つに掛ける。


 中は小さなコミュニティバス程度、詰め詰めで10人入れるかどうかだが、乗客は自分達三人のみ。


 少し待つと、ギッが余裕の雰囲気でのんびり動き始めた。


 「さて、落ち着いたな。色々と質問もあるだろうし、何でも答えるぞ」


 「そうですね、なんでその……普通の車じゃないんですか?」


 「それな!普通の車をレンタルする方法も勿論あるんだが、下手すりゃPKの対象になるんだわ。こんな新人の街近くを狩場にする奴なんていないとは思うんだが、まぁある程度実力がついてくる中堅くらいになると、偶にどうしても跳ねっ返りってのがいるからな~ヒャッハーみたいな連中がよ」


 「この牛車はNPCが管理してる町や村の行き来をしてくれる乗り物なんだが、まぁ車に比べりゃ遅いんで、本当に金のない奴か新人向けの移動手段になるって訳だ。でもまぁ歩くよりはよっぽど効率いいし、覚えといて損はないぞ」


 「いや、あの……NPCの乗り物だとして、なんで動物が引いてるんですか?」


 「そりゃ、強いからさ。勿論大型装甲車なんてのもあるが、それはNPCだと政府関係者だのプレイヤーなら大手クランじゃないと早々手に入らない代物だからな。火星の現地民NPCは運搬用の獣を飼ってることが多いんだわ」


 まぁ、確かに象並みのサイズが合って尚且つぎちぎちに詰まった筋肉がスマートに収まってる姿は、強そうにしか見えないけども。


 「……もしかしてNPCの乗り物も襲われたりするんですか?」


 「勿論!街は政府関係の軍やらが守ってるし、好き放題無法する奴なんていないが、一歩外に出ればアウトローまっしぐらの撃ち合いFPSだぞ?勿論NPCを襲う連中もいる」


 「おい!一応言っておくが、NPCを襲った所で実入りは少ないし、他のNPCからの好感度も下がるしで、良い事なんてなにもないから、ほとんどそんな事をするやつはいないぞ。やるならプレイヤー同士だ。その場合なら、金やアイテム類も落とすが何より、経験値が美味いしな」


 「やっぱり、ここは無法の荒野なんですね」


 「世紀末とか言わない辺が、やっぱりセンス感じるな。まぁ、なんだ?奪われたくなきゃ油断しない事さ。最悪ラビなら武器が武器だし、素材屋だって言えば……」


 ダン!

 タタタタタタ!


 遠くで急に銃声が聞こえたかと思いきや、急に体が宙に浮く感覚と同時に、壁に激突する。


 いきなり景色の流れるスピードが代わり、車が加速しているのが分かった。


 「ンモーーーーーーーーーーー!!!!」


 前部から、車が振動するほどの声が聞こえたかと思うと、そのまま今度は逆方向に体が振られるのを壁を掴んで堪える。


 「クソ!こんな場所で腕試しかなんかか?」


 ジョンさんはこんな状況でも意外と余裕があるのか、車内の屋根を固定してるポールを片手で掴みながら、外の様子を確認している。


 「どんな感じだ?ジョン!」


 「ああ、ありゃバギーを手に入れたての連中が、腕試しにやってるんだろうな。すぐに追いついてスクラップだろ」


 二人ともこんなシチュエーションには慣れっこなのか、既に余裕を取り戻している。


 ちなみに自分は今座席から手が離れて、乗り込み口に落っこちた所だ。


 「おい!ラビ!早く中に戻れ!じゃないと……」


 何とか四つん這いになって、片手で何かを掴もうと話した瞬間に、また体が浮き上がり、扉に体をぶつける。


 すると、体を焼くような日差しが目に入り、そのまま目の前が真っ赤になった。

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