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5.迷子『最初の街が広い』

 勢いよく先程の店を飛び出したものの、どこから行くか……。それに何よりさっきの店の場所をちゃんと覚えておかねばならない。


 左手を上に向けて、手の中にボールを持つ感覚で、親指がステータスと所持金、人差し指がアイテム、中指はと言うと、簡易MAPの表示だ。


 遠くの様子が分るわけではないが、今自分がいる場所周辺の情報を見る事ができる。


 さてどうにか、記録できる方法はないか簡易MAPを弄ってみるものの、あくまで向きを変えたりとかその程度の事しか出来ないらしい。


 こうなるとあとは、周辺で目立つ建物を覚えておくしかないかと、周囲を見渡す……ものの、無機質な4、5階建てのビルが立ち並ぶばかりで、何の目印もない。


 已む無く、元々通ってきたであろう最初の通りを戻ってみる事にする。


 何しろ最も目立つ建物が最初に居たあの場所の背にあった太陽を反射するやたら大きな施設だ。


 あそこなら街中どこにいても見えるんじゃないかと言う程目だっていたし、多少面倒でも移動する時の起点にしておけば、道を覚えやすいのではなかろうか?


 とりあえずで、一番大きな通りを真っ直ぐ歩いただけだが、試射場まではちゃんと辿り着けた。


 無意識で歩いていた割りに結構な距離を移動していたようで、中々試射場が見つからない間は、どんどん心拍数が上がっていったが、ゆっくり深呼吸して再び試射場に入る。


 施設内を見回すと相変わらず、NPCが一人ぽつんと立っているのだが、そんなに人気の無い施設なのだろうか?


 「あの、クエストって受けられますか?」


 聞きながら、NPCの足元を確認すると確かに黄色くこのゲームのロゴの一つが描かれていた。


 「少しは銃の扱いに慣れたか?それならば、厄介な獣の駆除を頼みたいと言ってる奴が……」


 「あっ!いえ!もう少し装備を整えたいので、街中で出来るクエストってありますか?」


 「向かいの銃砲店の店主が荷物を届けてくれる者を探していたぞ?」


 「ありがとうございます。行ってみます」


 ぽつんと無表情のまま、その場に立ち尽くすNPCを横目に向かいの銃砲店に向かい、入っていくとやはり接客ロボが向こうから近づいてきた。


 「イラッシャイマセ 当店デハ 地球ヨリ オ越シニ ナラレタバカリ ノ オ客様デモ オ買イ求メ イタダケルヨウ 格安ノ 中古品 型落品 等 取リ扱ッテオリマス」


 「あの、クエストを受けたいんですけど、店主はいますか?」


 すると、唐突に店全体に響く音が降って来て、思わず耳を塞いで身構える。


 『ピーンポーンパーンポーン!店長!一階にお客様がお見えです。至急お越しください』


 何をこんな誰もいない店で、そんな大きな音で呼ぶのか?もっと賑わっている店なら分るが……。


 「何だ?地球から着たばかりの毛も生え揃ってないような半端物が、お客様気分で俺に何か用か?」


 明らかに機嫌を損ねてしまった様子だが、あの放送を設定したのって、店長本人じゃないのか?


 「店長 仕事ヲ 請ケ負ウ ソウデス」


 「なんでぇ……半端者で貧乏人か。まぁ気にすんなここに来る奴は大体そんなもんだ。じゃあ、コイツを三番街区のクソ不味い食堂店主に届けろ。報酬はそこで受け取りな」


 それだけ言うと、その場で腕組みをして立って動かなくなってしまったので、今度は薬指を3クリックして、クエストを確認する。


 三番街区のレストランに届け物をすれば良い様だが、さて三番街区とは一体どこを指すのか?


 「あの、三番街区って言うのは?」


 「コチラ ヲ 御覧 クダサイ」


 接客ロボが胸のパネルに街の地図と思わしき、絵図面を表示してくれた。


 どうやらやたら太陽を反射していた大きな施設が、ロケットの発着所やマスドライバー?などが集約されている地球との物理的な連絡路で、宇宙に飛び出したり、宇宙から他人がやってくる重要な拠点らしい……その割りには随分と閑散としている気もするが……。


 そしてそこを中心に円を描くように街が広がっている。


 自分が居た場所が一番街区で北方向、そこから時計回りに三番街区は真反対の南方向だ。


 北方向に太陽が反射している事にちょっと不思議な感じもしたが、ここが火星の南半球で、北側を太陽が通ってたとしても、別にいいのかと、ここは日本じゃないのだと、とりあえず納得した。


 あの巨大な施設をぐるっと回っていくのか~と、ちょっと気が遠くなりかけた所で、接客ロボに表示された地図の一部が光っている事に気がつく。


 「この光ってる点は?」


 「駅デス 街中ハ 無料デス 時間短縮ニ利用 シテクダサイ」


 自分の不安など接客ロボにすらお見通しという事だ。


 とりあえず、一番近いのはマスドライバー北駅となっているので、素直に駅に向う。


 階段を登り、空中を行くモノレールの乗り場に辿り着くと、流石にパラパラと人がいる様子に、やっと少し落ち着いてきた。


 さっきの変な2人組みと、NPC2人と接客ロボしかいないゲームなんて、ちょっと寂しいを越えて、やっぱりやらかしたのかなって、ちょっと不安だったが、スタート地点過ぎて逆に人が寄り付かないというだけなのだろう。


 モノレールに乗り込み、マスドライバー南駅で降りる。


 そこから大通りを簡易MAPを見ながら真っ直ぐ進み、MAP内で点滅している建物に入ってみると、やはりレストランだった。


 銃砲店とはまた型の違う接客ロボに尋ねられ、店長に荷物があるというと、ここの店長は接客業らしい普通の柔和なおじさんだったので、無事クエストを終えられた。


 50クレジットと経験値を少々、更にアイテムで<パン>まで貰った。


 さて、次のクエストはどうするか……。

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