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54.『名を継ぐ』サイレントキラー

 既に何日目になるか?夜の森でも昼の森でもやりあってきた。


 いや、殆ど自分が一方的に撃つのみだが、それでも何故か敵意や憎しみより、ひたすら潜み一発にかける者同士としての親近感や友情にも似た何かが芽生えてきた気がする。


 相変わらずラビ君?ちゃん?分からないけど、こちらの射線を外してじりじりと近づいてくるのみ、それでもはじめて会った日から比べて、潜伏の上手さは長足の進歩を遂げていると思う。


 何しろ、今もラビを見失ってるんだから……。


 私のスキルの<熱源感知>では草葉の陰に隠れた相手を見通したりは出来ない。


 さり気なく動く木や葉を捉えて、そこから居場所を割り出すが、当然フィールドには獣も居るし、時には想像していなかった方向から迫られてることもあり、そろそろ接触の時も近いと感じてはいた。


 しかし、私でも対象を見失う森の中、どうやってあれだけ正確にこちらに近づいてくるのか?


 当然ながらこちらから撃てば位置を探られるのが当たり前ではある。


 そしてその為に幾つも射撃ポイントを選定しておいて、次へと移動する事が重要になってくるのだ。


 それにも関わらず、ずっと追い続けられる理由として考えられる事、一つ目は私と同様スナイパー目線でこの森を探索し尽くしているという事だ。


 考えにくくはあるが、可能性として既にいくつかのポイントを自分なりに絞っていて、隠れながらそれらを1個づつ潰してる?そんな迂遠で地道なやり方をする程執念深い?


 二つ目として、何かしらの追跡系スキルを取得しているという事もあり得る。例えば自分の<熱源感知>だって誰かの歩いた跡が見えるし、SNS系スキルだとそう珍しくもない。


 SNS(感覚)ステータスは、動体に対する命中率や探索関連の様な補助的ステータスであまり人気ではないが、上げれば上げたで意外と使い道はある。


 スピード&パワーで真っ向勝負タイプには全く合わないけど、間接的なやり口が得意なタイプには相性がいいだろう。


 考えがそれた。少し疲れてきたかもしれない……。


 何より居るのは分かってる敵が見えないのが、集中力を削られるし、緊張感をそんなに長く保ち続けるのも楽ではない。


 その時、何だろうか?生臭い匂いが漂った?


 すると、低木の陰から犬が飛び出してきたので、即座に腿のホルスターに収めていたデザートイーグル.50AEで打ち抜く。


 スナイパーライフルを扱う為のSTRのお陰で反動も少なく、尚且つ高いDEXとSNSのお陰で滅多に外す事もない。


 一瞬の判断で撃たねばならない近距離線でヘッドショットじゃなくとも、相手を一瞬怯ませられる威力をもったコレは、大事なもう一つの相棒だ。


 銃口から漏れる硝煙の先に犬が吹っ飛ぶのを見ると同時に背中に衝撃が走った。


 すぐさま攻撃されたのだと判断し、転がって近くの低木の陰に逃げ込みつつ、大よその位置に銃口を向けるが、敵に影もない?


 確かに無音攻撃だったのだが、一体何が起こった?


 そんな事を考えている間に今度は樹上からサルが降ってきたので、やはりデザートイーグルで射殺する。


 この辺の獣なら流石に一撃で倒せるが、問題は背中を攻撃してきた何か?誰か?


 そこに正面から、また攻撃された。


 お腹に衝撃を感じて下を見ると、お腹から突き出た細い棒……弓矢だ!


 咄嗟に木影に隠れながら立ち上がり、走り出す。


 まだこの辺をうろつく初心者なら幾らなんでも、自分に追いつく事はないだろうと、思ったのも束の間、もう一発背中に攻撃を喰らい、その場に膝をついてしまう。


 ヘッドショットでもないのに、死に戻りのダメージを受けた訳がない筈?一体何が起こったの……?


 ザクッザクッと背後から足音が聞こえゆっくり相手が近づいてくるのが分かる。


 そして、手も届くだろう場所まで近寄ってくると……ふと目の前が薄暗くなった?


 サングラスをかけられたのだと気がつくと同時に、目の前にDEAL画面が現れサングラスとサプレッサーに銃弾に薬?そしてクレジットが取引に出された。


 思わず音声で『承諾』してしまうが、一体どういうつもり?


 「すみません、この前のは事故なんです。お返ししますので……〔錠剤(解痺)〕も使ってください」


 この台詞で自分が動けないのは麻痺に掛かった所為だと理解したが、プレイヤーが普通こんな状態異常を使う事は珍しいので、完全に面食らっていた。しかもドロップを返す為に追ってたって事?


 また、足音が離れていくので、どうしても聞いておきたい事が自然と口をつく。


 「どうやって、私の位置を把握してたの?」


 「音ですけど?何かカリカリって音で追いました」


 「そう……この借りは必ず返すわね」


 「え?いやそんなの……お構いなく」


 それだけ言って、立ち去る彼に一つだけ伝えておかねばいけない事がある。


 「サイレントキラーの二つ名は譲るわ」


 何しろ音で居場所を把握されていたと言うのに、いつまでも自分でサイレントキラーなんて名乗れる訳がない。


 これからは本当の無音攻撃のラビ君が、二代目サイレントキラーとして他のプレイヤーから標的にされるんだから、後輩に少しばかり陰から力を貸さない事もない。

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