表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/187

51.『さくらとひまり』女子二人組み

 ダダダダダダダ!!!!……。


 いつ鳴り止むとも知れない銃弾のばら撒かれる音を頭上に聞きながら、土嚢の裏から出られずに頭を引っ込める二人組みの女子達、一人は一見大型拳銃にも見えかねないサイズのサブマシンガンかと思いきや、よく見ればゴツゴツと特徴的な形状を持つPDW、PP-2000を抱え込んで伏せている少女。


 片やその小柄な体つきに似合わぬ太い銃身を持つグレネードランチャーM79を抱えて、今も無理な体勢から空中に発射し、曲射にて敵牽制をしている少女。


 二人は新人を脱し、駆け出しとなり晴れて新人の街から高速リニアを使って別の街にやってきた仲良し二人組みだ。


 揃いのミリタリーベストに軍の略帽風のキャップを被っているが、どちらもオシャレ寄りで到底実用には見えない。


 しかし、ここはゲームなので数値上問題なければ、見た目は好きな物を装備すればいいのだ。


 二人は今、野良TEAMに参加し、とあるクエストを遂行中。


 依頼主は財閥と呼ばれる地球の巨大企業(※実在しない)であり、この火星(ほし)において権益を持ち体制側と呼ばれる地球の政府に近い立場の相手である。


 このゲーム、ある程度進んでいく内に火星でせめぎ合ういくつかの勢力と出会う事になり、その関係値によって得られるリターンも変わっていく事が、分かっている。


 その中で財閥は金銭の獲得及び武装に関して有利とされていて、二人の選択はプレイヤーの中でも比較的無難と言うか、割と王道であると言ってもいいだろう。


 勿論、一回のクエストですぐに関係値が深まり、そことしか取引できないとか、そんな鬼仕様ではない。


 そして本作戦の目的は、ドローン工場の襲撃であり、クエストを受けた場合のみドロップされるドローンパーツの納品数で、報酬が変わってくる。


 当然ながらドローン工場の奥に進むほど戦闘は激化していくので、自分のレベルにあった場所で引き返すのが基本中の基本だ。


 そして今、まだたった第二層ながら、既に敵の攻撃の激しさにげんなりしている二人の肩を叩く男がいる。


 「よう、嬢ちゃん!そろそろ出番だぞ!」


 ツンツン頭に黄色いシャツの上からサバイバルベストと隠れる気皆無の格好ながら、今回の野良TEAMのリーダーをしている男に、後押しされ、伏せていた方の少女がむくっと顔を上げる。


 「はぁぁぁ……じゃあ行って来ます」

 

 「頑張ってSAKURAちゃん」


 そして、ちょっと嫌な顔をしながらも遮蔽物から飛び出して、PP-2000から9mm弾をばら撒き、走りはじめた。


 その少女を追うようにドローン達が、一斉に射線を集めるが、AGI任せに場内を走りまくり、なんとか被ダメージを減らす。


 そして、その間に遮蔽物から他のTEAMメンバー達が一体づつドローンを倒して、敵の数を減らしていく。


 何分そうしていたろうか?場内の真ん中から一気に遮蔽物まで駆け込んできた少女が、土嚢を飛び越えそのまま仰向けに転がった。


 そこへすかさず、タイトでぴったり背中に這うような小型の鞄を背負った女性が近寄り、容赦なく注射をブッ刺す。


 「ナイス!ナイス!もう後二回もやれば敵は全滅だ」


 そう言いながら、ドローンの攻撃に対して、アサルトライフルで応戦する臨時リーダー。


 「うへー……後二回か~」


 「大丈夫?」


 「うん、大丈夫だよ。私の武器じゃドローン倒すのにあまり向いてないし、せめて囮ぐらい頑張らないと」


 「いやいや、囮って重要だからな。AGI型のプレイヤーがいてくれてマジで助かったわ」


 「そうそう、それにPDWとかサブマシンガンは室内戦闘とか入り組んだ地形で有利だし、そんなに悲観しなくても大丈夫よ?」


 今回の野良パーティは質がよかったのか、何かと褒められフォローしてもらえる事で、自尊心をくすぐられる。


 そんな中、敵の攻撃が少し弱まった所を突いて、M79の攻撃がドローンに直撃し、一発粉砕した。


 「お!ナイスキル!火力支援が決ると気持ちいいな!」


 「凄いわね!私も負けないようにしないと!」


 そう言う女性が持つのはやはりPDWのP-90。どうやらこの女性ヒーラーらしく、回復関連スキルに振っているので、直接戦闘能力はそこまででもないとの事だ。


 ちなみに臨時リーダーはVITがやや高めながらSTR、AGIのバランスのいい割りと人気ビルドである通称突撃兵タイプと呼ばれる構成だそうな。


 そして肝心の少女二人組みだが、まだそんな構成まで行き届いていない状態の駆け出し序盤である。


 PP-2000使いの少女はAGI型でとにかく足の速いタイプ。


 M79使いの少女はグレネードランチャーと言う武器を使う為STRに多く振っているタイプ。


 まだ今後のビルドは見えていないが、何とかこのゲームでやっていく為、金策中の身だ。


 「よしそろそろ行こうか!」


 「うん!今度は一体だけでも倒して帰ってくる!」


 「SAKURAちゃん頑張って!」


 「大丈夫!ひまちゃん!背中は任せたよ!」


 そう言ってまたPP-2000使いの少女は弾雨の中を飛び出していく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ