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50.『青森殺人事件-誤認-』コットの事件簿

 一瞬の油断で全てを奪われるのがこの火星(ほし)のルールであり、それはここで長く活動する凄腕のスナイパーであっても例外ではない。


 いや寧ろ長く活動するからこそ、多くの因縁が生まれ、情報を集められ、そしてはめ殺される……それが今回の事件だったのだろう。


 「人と人が殺し合うこの因縁の連鎖を断ち切る事は出来ないのだろうか?」


 「いや、だ~か~ら~!違うんっすよ!俺とサイレントキラーに因縁なんて無いじゃないっすか!寧ろいらない因縁産まれちゃってるから!マジで心入れ替えたんっすよ!先ずは真面目にプレーして力つけてから対人もやってきたいなって……」


 「その殺人願望が抑えきれずについやっちまったんだろ?」


 「やってないっす!それにその論法だと因縁でやった事にならないですよね?俺が通り魔的に殺人願望でやった事にすり替わってるじゃ無いっすか」


 「確かにタツの言う通りだな。コットはどっちの線で追ってるんだ?」


 どうやら被疑者とその保護者は推理に不満があるらしい。でも確かにそうだ。この二人とエウリュアレの因縁といえば、先日行われた大会でのブルの敗退だろう。


 「やっぱりブル……お前がけしかけたのか!大手クランに属して、早々負けを許されないお前が下手を打ったあの大会!」


 「だとしたらおかしいじゃ無いっすか!自分はあの人がサイレントキラーだって認識してなかったんすよ?もし先輩がけしかけたんなら、知ってる方が自然じゃないっすか!」


 「むむむ……」


 確かに言われてみればその通りだ。動機がブルの復讐だとするなら、タツは相手がサイレントキラーだって知った上で攻撃してる筈だし、知らずにやってるならやっぱり通り魔的犯行じゃないと説明がつかない。


 そして仮に通り魔的犯行であるとするならば、ある意味誰が犯人でも可能性はあるわけか……しかしだ!


 「まぁ、そう言う訳だからサイレントキラーにはなんとか言ってくれんか?」


 「いや!ブル!そうはいかないぜ!いいか?エウリュアレの証言で銃声は聞こえなかったって事が分かってるんだ。これがどういう事か分かるよな?」


 「何か先輩がつけてる消音装置でも付けた相手だったんじゃ無いっすか?」


 「残念ながらそれは無い。サプレッサーが着いてたって、音は聞こえる。更に言うとこんな序盤も序盤の街じゃ手に入れるほうが難しい」


 「まぁ、それはそうだな。至近距離で撃たれればサプレッサーがあったって気がつかれる。つまりは遠距離からの攻撃となる訳か」


 「ああ、そしてこの街で現在遠距離武器を使ってるのはタツとエウリュアレの二人って事になる。サプレッサー使いなら、ブルとエウリュアレだな」


 「何でそんな事が分かるんすか!」


 「まぁ、こいつらはこの街に限らずだが、やたら顔が広いからな。だからこうして俺も訪ねてくるわけだし、よっぽど周到な上級プレイヤーじゃなきゃこの街じゃ目を盗んで、何かしようなんてのは難しいかもな」


 「まぁ、エウリュアレは有名プレイヤーだし、あえて狙ってくる奴らがこの街に潜伏してないとも限らないけどな。でも今現状容疑者として最有力候補がタツである事は間違いないだろう!」


 「そんな……マジで勘弁してくれよ。一方的に狙われたって、どうしようもないっすよ」


 「あれ?お前らまだやってたのか?」


 その時所用で出ていたジョンが帰ってきた。


 「いや、まだって言ってもな。どうしてもタツが容疑を否認してるんだよ」


 「そりゃそうだろ?」


 「「「え?」」」


 「え?ってまだお前ら気がついてないのか?エウリュの奴がやられたのは森だろ?タツは森に行けるのか?」


 「行った事はないっすけど?」


 「ああ、そうか……森に行くには環境実験区の木を倒さないといけないのか。最序盤の事で忘れてたな」


 「どういう事だ?俺は戦闘可能フィールドの事詳しくないんだけど」


 「アレだよ。赤襟卒業クエストって二つあるだろ?一つは工場のドローンを倒す方。普通はこっちなんだよ。手に入る銃も銃砲店で買うよりいい物が手に入るし、奥に行けば更にドローン達の出てくる鉱山区画だ」


 「金属系の素材とかも手に入るし、この街で取り合えず力つけようって連中には人気のスポットだな」


 「そう、そしてもう一つが環境実験区画のボスだが、コイツは自然回復が高く設定されてる所為で序盤で倒すのが厳しいとされてるな」


 「ああ、別の街で最低でも火炎瓶かそれ以上の燃焼デバフ武器を持ちこまないときついか。あとは火力ごり押しだが、これもこの街にいるような初心者や駆け出しではちょっと苦しいかもな」


 「スナイパーライフル使いのタツなら尚更だろ。遠距離からのヘッドショットが強みなのに、特に弱点もなくHPが高くて、ひたすら回復してくる敵なんて相性最悪だ。わざわざタツがそんな場所に行くとは思えない」


 「じゃ、じゃあ同じスナイパーライフル使いのエウリュアレは何でそんな場所に?」


 「そりゃ、あの格好見れば分かるだろうが、ああいう見通しの悪いフィールドが得意なんだろ?本来ならスナイパーが苦手そうなああいう場所でやれるから、エウリュは二つ名持ちな訳だ」


 「え?じゃ、じゃあ、誰が犯人なんだ?」


 「いや……コット……」


 「そうっすよ。それを考えるのが探偵なんじゃないっすか?」


 「だな。是非お前の灰色の頭脳の導き出した答えを聞きたいもんだな」


 「ぐぬぬ……」


 どうやら、コイツは相当な難事件らしい。だからこそ、この俺が諦めてはいけない!絶対に犯人を見つけてみせる!

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