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4.出会『新人に優しい?』

 「どうしよう……」


 手に持ったディテクティブスペシャルを眺めながら、通りを歩く。


 徐々に落ち着くにつれ、さっきの異常の正体が分かってきた。多分音が大きすぎたのだろう。


 自分は普段割りと小さな音に慣れているのかもしれない、小さな音の雑音の中から必要な音を選んで聞いてる感じ、音を大きくすればする程、雑音が増えて他人の話が分らなくなってしまう。


 振動は多分普通に銃を撃った振動で、それこそ慣れで何とかなりそうだが、頭痛がする程煩い銃の発射音だけは、どうにも慣れそうもない。


 「どうしよう……」


 何度目かの溜息と弱音、吐いちゃいけないと思いながらも、いつの間にか漏れ出ては、ハッとする。


 「うぉい!物騒だな!新人か?いやそうりゃそうだろうなその格好!って、どうした?自殺でもしそうな顔で……この街の街中じゃ銃は勝手にロックが掛かって、撃ちたくても撃てないぞ?説明受けたろ?」


 ドキッとした……。普段聞いているよりもずっと大きな声で、話しかけられ、怒られてるのかと思ったが、多分内容から察するに心配してくれたのだろう。


 「い、いや……自殺とかじゃないです」


 「そうなのか?とりあえずホルスターをアイテムボックスから出して、しまったらどうだ?」


 「アイテム……」


 「ほれ、左手上に向けてボール持つように指を曲げて、人差し指を3クリック」


 あっそうだった!と言われるまま3クリックすると、まずが5×5で25マス区切られた画面が表示される。


 「……ホルスター……」


 最初からボックスに入っているアイテムに確かにいくつかホルスターと書かれた物が存在するが、とりあえず適当に一個取り出すと、長いベルトのついた銃をしまうケース?だった。


 銃の挿し方は分るがコレをどうやって装備するのかが分らない。


 「ショルダーホルスターとは渋いじゃないか!うんうん、コルトのディテクティブスペシャルな。そりゃショルダーの方が格好いいけど、それなら早い所上着も手に入れた方が良さそうだ」


 言いながら、サラッとつけ方を教えてくれる見知らぬ人物、治安が悪いゲームと聞いてたのに妙に親切だな?


 「おい!誰か来たのか?」


 唐突に建物の奥から声が聞こえ、身構える。そしてその時初めてそこが、店か何かで沢山の銃が並んでいる事に気がついた。


 「いや、何か新人が戸惑ってたからよ。話を聞いてやってるところだったんだわ」


 「はーん、相変わらず面倒見のいいことで……リボルバー使いか……」


 奥から出てきたのは自分よりさらにハッキリした色の逆立つ赤毛に、気の強そうな切れ長の目が特徴的な高身長男性、ちなみにさっきから話していたのは線の細い金髪でエンジニア風の男性だ。


 「んで、何があったんだ?別に獲って食いやしないから言ってみ?俺は一応これでも新人に優しいガンスミスで通ってるからな」


 「別に通ってはいないだろ。まぁ新人に声かけて何かと融通してるのは事実だけどな」


 「いや、あの……」


 いきなり2人の大人の視線を浴びて、つい目を逸らしてしまうとその先にあったのは、ボウガン?


 「なんだ、クロスボウが気になるのか?変わってんな~!コレは一応設計図があったからネタ用に作っただけだが、撃てない事はないぞ?ただ銃より威力も射程も劣るし、おススメはしないがな。特に新人なら尚更」


 「えっと、ここお店ですよね?これ幾らですか?」


 「いや、いくらも何もネタ武器だからな~どうすっか。売る事全然考えてなかったぜ。こうなんか、見た目だけのディスプレイ的な?」


 「買う事は、出来ませんか?」


 「う~ん、新人だろ?普通にサブマシンガンか、STRを盛ってアサルトライフル持っておけよ。ある程度慣れてからでいいだろこういうのは」


 「うう……」


 「そんなに欲しいなら、その銃と交換でいいぞ?」


 急に赤毛の男が提案してきたが、さっき手伝ってもらって左脇腹に納まってるそれに視線を移すと、コレを手放す事だけは絶対出来ないと、確信的な感情が湧きあがってきた。


 その思いのまま首を横に振り、拒絶を示すと、赤毛の男が話を続ける。


 「それよぉ、新人が最初に買う銃じゃないと思うんだが、絶対に手放せない理由があるのか?」


 「理由って言われても……」


 「じゃあ、手に入れたとき、どうだった?何度も言うが、最初に買う銃じゃないだろ」


 「それは、何となくとしか……籠の中で光ってたって言うか、手に取ったら手から離れなくて……」


 我ながら何変な事を言ってるんだろうと思うが、折角親切に話かけてきてくれる人に嘘も言えない。


 「おお!まじか!」


 「なる程な~、お前もリボルバーに運命感じたタイプか、それじゃ俺も黙ってらんねぇわ」


 「いや、お前と同じこと言う変人が急にこんな所に現れるとはな!ははっ!じゃあこのクロスボウはお前にやろ……」


 「よし、500クレジットで売ってやる」


 金髪の男がボウガン……じゃないクロスボウを差し出すのを赤毛の男が止めて、値段を言ってきたが、既に自分はディテクティブスペシャルを買って、金無しだった。


 「お、おい!折角の……」


 「いいから任せろって、お前さんが新人で、初期費用をその銃に使っちまったのは分ってる。だがここは最初の街だ。お前みたいな事やらかす奴もいなくはない。それでだ!救済用の街中お使いクエストがそこら中に散らばってるから、そいつで稼いできな。はっきり言って本当に小遣い程度しか手に入らないが、最初期なら一応レベルも上がるし、そのボーナスで最低限のステータス上昇も出来る。クロスボウを使うならSTRにいくつかでも振っておけよ。じゃないと装備必要ステータスが足りなくなるからな」


 立て板に水に説明されてしまったが、要はRPGでお馴染みのお使いクエストがあるらしい。


 フルダイブVRは初めてでも、普通のテレビゲームやPCゲームはやった事あるし、その辺の事は流石に分る。


 「NPCなら何かクエストないか普通に聞けば教えてくれるぞ。ちなみにNPCの足元は影みたいに黄色いマークがついてるから、見れば分るからな」


 ……そうだったんだ。もっとよく見てみよう。とりあえず店から離れ、NPCを探す。


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「なぁ、何でクロスボウ上げちまわなかったんだ?お前と似たタイプなら、仲良くなれたかも知れないし、恩を売っといても良かったんじゃないか?」


 「それも別に悪くないが、俺が必要としてるのは背中を任せられる奴さ。最初の最初で躓いたからって、この程度でやめるような奴なら、関わってもしょうがないしな」


 「冷たい奴だな~。まっ別に俺は構わないし、好きにしろよ。おっお嬢さん!新人かい?俺は新人に優しいガンスミスで通ってるんだが、何か見ていくか?怪しい?何でよ?」

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