48.万全『今出来る事の全てを尽くす』
当面の自分の方針を決め<急所>を取得、これは<聞耳>同様PAだった為、Pにセットする事で、常時身の回りのあらゆるものに対して、弱点と言うか弱い場所が表示されるようになった。
それこそ、普通に見える景色にうっすらと赤い膜の様なエフェクトが乗り、視界を邪魔する程ではないが、実はこれまで自分の目に映るありとあらゆる物が破壊可能だったのかと、何となく目覚める気持ちで受け入れた。
更にAの方の空枠には<精密>を入れる事で、命中率を増し、更には増えたアビリティ枠に『精密射撃』を入れる事で、<精密>を発動中、一分に一発必中効果を得る事が出来た。
はっきり言って射程の関係ないクロスボウにはチートのような能力だが、そもそも飛距離自体がそれ程でもないし、何より視認出来ない相手には効果発動しないらしいので、隠れている相手に山なりに当てるとかそういう事ができない以上、そこまで圧倒的にゲームバランスを崩す程でもないだろう。
そんなこんなアビリティとスキルを整え、お次は防具だ。
まずは鼠の歯のネックレスをアップグレードした。
具体的には〔犬猿の首飾り〕となって、STR+2 AGI+2 VIT+2 DEX+2 SNS+2と高性能ながら、犬猿両陣営から嫌われるとフレーバーテキストにある。
現状このフレーバーテキストの意味は分らないが、もしかしたらどちらかの陣営と仲良くなったり、テイム的な感じで、ペットを仲間に出来るのかもしれない。
しかし、現状自分には全く不要なので、別にいい。どちらも倒して素材を回収させてもらう。
お次は防寒具の方の毛皮服だが、犬の毛皮でアップグレードし〔狼犬の作業服〕〔狼犬の長靴〕となり、防御力は大した事なさそうなものの、VIT+5 AGI+5が非常にありがたい。
更には猿皮で作った手袋と更に帽子のアップグレードによって〔野猿の手袋〕〔野猿の飛行帽〕となり、こちらも防御力はそこまで変わらなかったが、STR+5 DEX+5となり、ステータス補強がかなり捗る。
そして、防御力の為に何となく買った〔防刃ベスト(中古)〕だが、こちらは〔金属板〕と〔狼犬の皮〕を組み合わせる事で、ポケット付きの防刃ベストに変わった。
これによって、これまで腰から提げていた薬の瓶類を胸ポケットに移動し、少し楽になったのは言うまでもない。
ちなみに空調服については残念ながら据え置きなので、このまま引き続き頑張るしかない。
さて、自分の<製造>で作れるのはこの程度だが、問題は皮毛骨肉店に出てくる新グッズだ。
まずは、SNSに補正のかかる〔犬面〕だが、これも今装備してる蟻のお面と同じく鼻から口までを隠すお面だ。
効果的にSNS補正は自分の大いに欲している所なので、当然買い!
更に〔猿の腰当〕はベルトに通してお尻から腿までを巻くように防御する物だが、特に何もしていない時、座っていると自然回復量が上がるようなので、これも買い。
肉についてはそれぞれ燻製肉を作ったものの、悪くは無い。どちらもそれぞれの特徴があるので気分によってどちらを食べるか、考えよう。
正直今の自分の見た目は、ポンチョや犬面を除けば熊猟とかしてそうな田舎の猟友会だが、無理してミリタリーにこだわるものでもないし、まあいいか。
最後に大事な武器類の購入だ。何と言ってもナイフ投げるやつ、スローナイフとかそういうアビリティ手に入れちゃったし、投げる専用のナイフの購入は避けて通れない。
銃砲店に向うと、いつも通り接客ロボが対応してくれる。
「イラッシャイマセ 当店デハ 地球ヨリ オ越シニ ナラレタバカリ ノ オ客様デモ オ買イ求メ イタダケルヨウ 格安ノ 中古品 型落品 等 取リ扱ッテオリマス」
「それじゃ、投げられるナイフみたいなのありますか?」
「オ取り扱い ゴザイマス 一本10クレジット デスガ 幾ツ 御入用 デスカ?」
「そんなに安いなら100本とか」
「スグニ ゴ用意 イタシマス」
それだけ言うと、スルスルスルと店の奥に向かい、そして奥から出てきたのは店長だった。
「なんだ、またお前か!懲りもせずに今度は投げナイフとは、全く何考えてやがるんだかな?」
「すみません、ちょっと入用でして……」
「そうかい?別にいいが、装備に不便だろ?斜め掛けのナイフホルスターもセットで用意してやるから、全部で2000クレジットだ」
「相変わらずリーズナブルですね。買います!」
そう言うと、すぐに斜め掛けの皮の広帯にナイフが10本装着された状態で渡され、更にナイフを90本剥き出しで受け取る。
「そんなもの何に使うんだ?」
「接近された時用に投げるつもりなんですけど?」
「は~ん……それなら、腰にも何本か装備できるようにしてやろう」
そう言って、更に腰に提げられるナイフ用のホルスターを用意してくれたので、左腰に装着。
一先ず、装備も整ったし今日はログアウト。
次からは例の緑の女のヒトを探しに森に潜らねば。




