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43.『新人と仲良くしたい』サイレントキラー

 このゲームを始めたきっかけは、友達に誘われたからとしか答えようがない。


 正直な所、銃にもミリタリーにも興味は無かったが、当時和製ファンタジーで知り合ったVR上の友人にPKが合法のゲームが出るから、ちょっとやってみない?と誘われ、乗ってしまった。


 和製ファンタジーもかなりやりこみ、イベント以外は日課をこなすか対戦メインで遊んでいた所為か、自由にPKが出来るゲームと言うのに、ちょっと興味があっただけなのだが、結局今に至る。


 当時の友人は既にゲームを卒業し、何をしているかも分からないけどゲーム上の友人など割りとそういうものなので、それは気にしていない。


 今は今のつながりがあり、ゴルゴン三姉妹と呼ばれるようになってからは、ステンノー、メドゥーサの二人とよく一緒に居る事が多くなった。


 ちなみにこのあだ名は自分達から言い始めた訳じゃない。


 ただ、三人で一緒にいたらそう言われる様になったので、後付けでネームを変えて正式に大会なんかもTEAMゴルゴンで出場したらウケた。そして今ではそう呼ばれる事に少し優越感すらなくもない。


 まぁ、悪名風に言われる事もあるけど、その原因は大抵長女のステンノーの所為だが、それは仕方ない。


 ステンノーの突拍子もないやらかしや、底意地悪い戦術を悪と切り捨てないのがこのゲームの面白さだし、レビューサイトの評価が真っ二つの理由だと思う。


 さて、そんな結構古参な自分だが、今回は初心者の街すぐ近くの森にやってきた。通称『青の森』って言われてる。


 語源は新人が赤襟、駆け出しが尻の青い餓鬼って呼ばれるから。最近はパッチが入ってベイビーって呼ばれるようになったんだっけ?


 ちなみにこの森、日本語版スタート以来、ずっと過疎地だ。


 何しろ報酬が全くと言っていい程おいしくない。ゲームの特性上どうしたって弾代がかかるこのゲームで、お金にならない獲物と言うのは忌避されるのはどうしようもないだろう。


 ちなみに弾を自作するなら金属や火薬が採れるドローンを狩るので、工場区の先に向かうのが一般的だ。


 一応この森にもちょっとだけ需要があって、服飾系の生産者は皮類を採りに来る事も無くもない。


 それでもある程度情報を持ってれば、高速リニアで糸が取れる場所を拠点にするのが普通だと思う。


 じゃあ、わざわざ何でこんな場所に来たのかと言うと、姉さんステンノーから活きのいいスナイパーが現れたと聞いたから。


 それこそゲーム開始当初はスナイパー人権環境で、結構な数がいたし、とにかく広い有効射程はそれだけで圧倒的有利だった。


 しかし、プレイヤー達がこのゲームになれるにつれて、自然とスナイパー対策も進み、徐々に玄人向けと言われるようになっていったのだ。


 まずは当てられるようになるまでステータスを鍛えるのに時間がかかる。狩りをしようにも有効射程の広さの所為で、トラブルがよく起きるなんて言うのが主な理由かもしれない。


 それでもいざ大会となれば広い範囲をカバーして、相手を牽制できる事から一人TEAMに居るだけでかなり成績が安定するとも言われてるし、キルレート以上の仕事が出来るって言う評価もある。


 それ故玄人向き、上位を目指す連中の一部だけがあえて目指すのがスナイパー、そう言われて結構経った。


 そんな中、クラン『大円』のタウルスが新人をスナイパーに育てる為に全面的にフォローしていると言う話を聞いた。


 そしてそのスナイパーはうっかりで、新人を狩ってしまう程アグレッシブらしい。最近では稀に見るタイプだし、嫌いじゃない!


 本当なら大円のジェミニちゃん達とも仲良くなりたい所だけど、大円と言えば国内最大手の古参クランだし、何より可愛すぎてこちらから話しかけるのには勇気が必要。


 だけど、新人相手ならさり気なくスナイパーのコツを教えたりとか、何か自然な感じで友達になれるかもしれない!


 うん!昨今のスナイパー事情を鑑みればそれしか友達を増やす方法は無い!と言う事で、過疎地の青の森に来たと言うわけだ。


 何しろ先述したとおりスナイパーは広すぎる有効射程の所為で、狩りトラブルが多い。


 稼ぎは少なくとも過疎地でコツコツとやっていた方が、結局効率がいい事もあるし、ある程度強くなればイベントやクエストも出てくる。


 今が頑張り時だよと声を掛けてあげるのが先輩スナイパーの勤めだし、それきっかけで友達になったっていいと思う!


 姉さんも妹も自由過ぎる程自由なのに、いつの間にか知り合いとか友達とか増えるの本当にズルイ!


 そんな事を考えていると、遠目に何やら人の動く影が見えた気がした。


 遂にこの時が来た!とテンションが上がるのを無理やり抑えて、双眼鏡を覗く。


 スキルの<望遠>の方が視界は広いが、セット枠には限りがあるし、違和感を捉えてすぐに覗く癖をつければ、それ程差がないというのが持論だ。


 一瞬、自分が双眼鏡で姿を捉えた瞬間にその場に伏せる判断力!これは只者じゃない。


 考えられるのは<察知>をセットしているからだろう。このスキルも使えそうで使えない微妙なラインだが、取得したてでも彼我の差が大きい場合、危険を感じ取る事が出来る。


 逆にスキルレベルを上げすぎると何でもかんでも引っ掛かって使い所が難しくなる。つまり序盤向けのスキルとしてはまあ有りと言うのが今の所の評価。


 それでも敢えて取得する理由、それはスナイパーが徹底的に打たれ弱いからに他ならない。


 広すぎる有効射程ゆえか、スナイパーライフルはとにかくSTR要求が高い、その上当てるのにDEXも必要なら、動体に当てるにはSNSも必要だし、一発撃つたび移動するならAGIも欲しい所、VITに振る余裕が全く無い。


 狩場で<察知>をセットしておくのは、ある意味正解、あらゆる危険から逃げる気持ちが生き残る最善手!


 確かにコレは活きのいい相手だと確信し、こちらから近づいてみる事にする。


 おおよそ相手の隠れたポイントに近づくと、掛けていたゴーグルを頭に上げ、そしてスキル<熱源感知>を発動して、痕跡を探る。


 現実のサーモグラフィとは違うのだろうが、これがあれば他人の設置した罠や足跡が見える自分が愛用しているスキルだ。


 狩人型スナイパー。


 見通しのいい荒野での狩りが難しくなった現環境で、敢えて複雑な地形で戦えるスタイルを目指した自分の形。

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