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3.詰み『浮かれすぎた』

 何でだろうか、思わずニヤニヤとしてしまうのは?


 手の中にしっかりと納まり、大きさとは裏腹の独特の重量感が、まるで我が子の様でいながら、全幅の信頼を預けられる親の様でもある。


 自分のいる初心者スタート地点に人がいなくて良かった。もしいたら完全に不審者だったろう。


 そして、試射場の扉の前に立つと、スーッと扉の開く音だけ響く静かな屋内。


 てっきり、試射場と言うくらいだし、人が何人も横に並んで、黒い人の描かれた的を撃っている様子を想像していたのだが、なんとも閑散としていた。


 左右を見回すと受付らしき場所に腕組みをした体格のいいおじさんがいるので、近づいてみる。


 すると、目だけこちらを見ているが体は微動だにしないおじさんが、カウンター前に立った瞬間腕組みを解き、話しかけてきた。声が大きい。


 「ココは試射場だ。銃を撃つ以外に用はないだろう。どの銃を撃つのだ?」


 うん、なんて言うか、声とか喋り方とかは別に変じゃないんだけど、人じゃないってのははっきり分るこの感じ、AIを搭載したNPCだろう。


 とは言え、確かにやる事は一つしかないので、手に持ってる銃を見せる。


 「なる程、ルーキーだな。.38弾を貸し出すから、好きなだけ撃つといいまずは射座に入れ」


 射座?と思ったが、多分壁で区切られてる、あの撃つ所の事だろうと、とりあえず全部空いているので端っこに立つ。


 「自分の弾はしまって、その箱から弾を出して装填するんだ」


 言われるがまま、リボルバーの弾装を横に押し出し、さらに先端の棒を押し込む事で、弾を取り出す。


 この行程は買った時に接客ロボの持っていた画面に手順が出ていたので、ちゃんと理解するまで読み込んだ。


 ただ、弾をどこにしまえばいいのか分からなかったので、とりあえずカーゴパンツのポケットに突っ込んでおく。


 そして、言われた箱には確かに自分の銃の弾と同じ物が入っていたので、それを装填し直して、銃を元に戻す。


 「弾を入れたら、銃口は絶対に他人に向けるなよ?撃たれても文句は言えないぞ?」


 今は周りに誰もいないからいいけど、その内人混みに入る時は、大変だ。気をつけないと……。


 思わず唾を飲み込み、とりあえず雰囲気だけで、銃を真っ直ぐ構えて正面にある丸い的を狙ってみる。


 「違う。やり直しだ」


 「え?何がですか?」


 思わず問い返すと、NPCゆえか嫌な顔一つせず、説明が始まる。


 「まず姿勢だが、両手持ちか片手持ちで変わる。銃の形状から早撃ちではないと思うが、それでも遭遇戦なんかで、素早く抜いて打つことを考えるなら、片手持ちだろう。もしあくまで狙って撃つ事を前提とするなら両手持ち、二つ程候補がある。どうする?」


 「じゃ、じゃあ小さい拳銃なんで片手持ちでいいですか?」


 本当に何となくだが、この銃は片手に収まるように作られてるような気がしたって言う程度の根拠で答えたが、特にNPCの方では異論はないらしい。


 「片手持ちでも、また二つ候補が有る。簡単に説明するならば止まって撃つなら直立、歩いて撃つなら猫背で撃つといった程度の違いだ。状況に応じて両方使えるのが当たり前だが、ルーキーには荷が重かろう。どちらから習う?」


 うーーーーーん、この小さい銃で歩きながら撃つかな?逃げながら撃つ事はあるかも知れないけど……。


 「直立の、止まって撃つ方で教えてください」


 「うむ、ポイントショルダーと言う姿勢になるが、名前は覚えなくてもいい。肩幅より少し広く足を開いて、両目と銃で正三角形を作るつもりで、真っ直ぐ腕を伸ばせ。フロントサイト……先端の出っ張りと、撃鉄をまっすぐ捉えて、その延長線上に的を見るんだ。左手は腰に当てて体全体から出来るだけ力みを抜け、はじめは緊張で力が入るが、慣れれば銃の反動を吸収するのも上手くなるだろう」


 言われるがまま姿勢を正し、的を狙う。


 「ここと思ったら、一度引き金を引いてみろ」


 言われるがまま、引き金を絞るとキリキリキリと小さな音と共に、弾装が回転、引ききった瞬間……。


 ダン!!!!!


 雷に打たれたかと思った……思わず、銃を持ったまま耳を塞ぎそのまま顔も目の前の机に突っ伏した。


 何が何だか分らない……今も耳の奥でキーンと何か音が鳴っている気がする。


 軽いパニックに息が上がり、周囲を見回すと何の代わり映えもしない。


 ただ自分から少し離れて後ろに立っていたNPCが腕を組んで、仁王立ちしているのみだ。


 「撃ち終わっても、出来るだけ姿勢を保持しろ。場合によっては連射する可能性だってあるのだ。その銃はダブルアクションになっているし、ちゃんと連射が効く」


 いや、それどころじゃない。世界の終わりのような音に、頭がクラクラして、なんか視界も一段照明が暗くなった気すらする。


 「あとは練習あるのみ、習うより慣れろだ」


 「慣れ?慣れか……」


 皆はじめはこんな物なのだろうか?耳の中を何か熱い者が駆け抜けたかのような衝撃と、心臓にまで響く振動、これが銃を撃つということなのか。


 もう一度最初から言われた通り構え、撃つ。


 再びの衝撃で、またその場に突っ伏して動けなくなる。


 なん……だコレ……やっちゃったのか?今の自分の状態が異常であるのは何となく理解出来た。

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